TV CMでは電話オペレーターが笑顔で自動車保険料の安さを強調し、かつ顧客満足度の高さを売り物にしているチューリッヒ保険だが、はるかスイスのグループ統括本社では、会長のあまりの酷い仕打ちと低評価に抗議してCFO(最高財務責任者)が8月26日自殺する事件が起きている。名指しされた会長はその2日後、すべての役職を辞任した。この会長、Josef Ackermannは元ドイツ銀行(Deutsche Bank)のCEOで、ドイツ最大の民間銀行であり、いわばドイツ金融帝国主義の総本山であるドイツ銀行で初めて非ドイツ人として頭取に就任した、金融界では知らぬ者のいない有名人である。今回自殺したCFO、Pierre Wauthierの遺族は葬儀の席で自殺の遺書を公表するとしているとともに会長に自殺の原因があると会社側に調査を要求している。
Ackermannについては、その強引な経営姿勢から夙に批判が多かった。にもかかわらず有力企業のトップに就任できたのは、ドイツ銀行やチューリッヒ保険のような伝統のある企業では社内に官僚制がはびこり、これに危機感を持つ株主が、Ackermann のような強引な人物を起用するという事(いわば毒を以て毒を制すの図)だが、それも程度問題であり、ドイツ銀行もさすがにAckermann のやり方には不安を覚え、当初の任期満了を待たずにCEO職から実質解任したが、それを引き受けたのが出身国スイスのチューリヒ保険と言うわけだ。
会長のパワーハラスメントに耐えかねてCFOが自殺するという、このような人物をトップの据えていたというチューリッヒ保険は究極のブラック企業ではないか?そしてこのような人物にドイツ銀行は毎年900万ユーロ(12億円)程度の報酬を支払ってきた。いずれにせよ会社側はうやむやのうちにこのCFO自殺事件を風化させるのだろうが、日本においても多くの保険不払い事故を起こしたことのあるチューリッヒ保険、TV CMにあるように能天気な「いいかも!」などといずれは言っていられなくなるだろう。
http://www.zurich.com/media/newsreleases/2013/2013-0826-01.htm