吹矢を始めると指導員に手ほどきを受けます。何時かは自らが公認指導員になり後輩への指導を考えるようになります。指導員の試験を受験するには、あらためて公式ガイドブックを見直し、基本動作に立ち返り、吹矢に対して自らを律する絶好の機会と考えます。その日本スポーツ吹矢協会公認指導員の受験体験記をまとめました。ご参考になれば幸甚です。試験は、基本動作、模擬指導試験、筆記試験について行われました。
基本動作試験
当日は受験者54名が6レ―ンに別れ、レーンごとにに試験官一人が担当し採点審査を行った。基本動作試験は、3本の吹矢を吹く動作を採点審査された。
基本動作試験は、3本の矢が的に当たる点数ではなく、受験者が基本動作にどれだけ忠実であるかの点について採点審査された。ここで、感じたことは基本動作をゆっくり、意識してオーバーになる程度に強調して行う方が審査官に好印象を与えるように感じた。3本の矢を吹くため、競技会のように5本の矢を3分間吹く時間制約はないようでした。
例えば、矢を装填し高く持ち上げる際、持ち上げる腕の高さが年齢と共に下がってくる。高さを維持するには、持ち上げた両腕を背伸びするような形で両耳につくような姿勢を作ることによって形ができ腕が低くなることを防げると言っていた。これもオーバーめにすればその姿勢ができる。
スポーツ吹矢の真髄である腹式呼吸を強調する点、息を吐き出す時間が皆さん短いと指摘されていた。少なくても8秒以上、13秒程度の動作が良い感じであると言っていた。基本動作では、この点を強調して行うことが綺麗な連動した姿勢に見えるといっていた。また上げるときと下げるときのメリハリをつけるために、上げる時は1~3秒程度と早めにすることで下ろす際の長めの動作が強調され一連の動作が美しく見えるとも述べていた。皆さんの一連の動作は、動作がコンパクトで速すぎるように感じる。メリハリを付け全体を大きく動作することが「一連の流れを重視した形」を演じることができる。
スポーツ吹き矢で腕が曲がるのは、筒を構えたときだけ、右利きの人は左の腕が120度程度に曲がる。この動作以外は、両腕は伸びていることになる。改めて再認識させられた。
筒の『しゃくり』について、いろいろ討論されいけんもあるが、しゃくり動作がいけないのは矢を装填した状態で、毎回矢が筒内で動いてしまい固定されない点を是正するために重要になる。筒を傾けると矢が落ちてしまう程度に矢の太さを調整しているので、しゃくりをやると筒内で矢が動いてしまい、毎回同じ条件を再現できないため好ましくないとの理由であった。
また、マウスピースを加工している人がいるが好ましくない。購入時点そのままを使うのが好ましい。また、マウスピースを咥える際、3cm程度とか、深く加えるとか、マウスピースに輪ゴムを巻いてここまで咥えないといけないと指導を行う人がいるが、マウスピースと唇の絞め具合であり、吹きにくくならない程度に考えればよいと指摘していた。
終了の動作で、『残心』の動作をもう少し強調してはいかがとの指摘を受けていた。残心が短く円滑な終了動作になっていない方が多い。残心とは、吹矢を吹き終了動作に入る時点で、的に向いて心を残す時間のことで、この時間が短いとの指摘である。筒を身体の前に戻すまで顔は的に向いていることが、綺麗な終了動作で、一概にこの時間が早すぎて性急な感じがすると指摘していた。
模擬指導試験
試験官を新人とした模擬指導試験は、試験官が故意に基本動作を間違って行い、それを指摘し指導していく。試験官が故意に基本動作を間違え、それを指摘すればよいのであるが、この場合でも実践の場合の指導方法が問われる。自らがお手本となる基本動作を再現するような方法で指導することが好ましい。指導法をチエックされているのであるから、楽しく、優しく指導されていることが相手に分かることが必要である。また、公式ガイドブックにも記載されているように、身体には触れてはいけない。
指導の際、スポーツ吹矢の基本動作とはこうあるべきと述べてから個々について指摘するようにした法が良いように感じた。指導が独断上になることは避けた方が良い。
筆記試験
ペーパーテストは教本を見ても良い、隣の方と相談してもいいと言う試験であるから大いにお隣同士を意識して回答すれば良い。問題は50問出題、○×式であるが引っ掛け問題もある。最後はお隣同士で採点するのですぐ結果が出る。満点取る方もいる。問題を作る側に立って、引っ掛け問題を作り、当惑させたい感じがした。
T試験官講評
T試験官は平成26年1月に他界されました。改めてご冥福をお祈りし合掌しましょう。
1年前から3段取得者で入会2年経過したものを有資格者とし、公認指導員試験により緊張の元に資格を与えるようにした。入会してくる方に始めて指導する指導員の影響は多大なもので、指導員はいろいろ慣れてしまい、往々にして自己流の動作を指導している場合が多い。入会者はこの指導員との出会いが後々の吹矢の技や考え方を支配してしまうので、慎重にも慎重を重ね基本動作に忠実な吹矢を伝授していく必要がある。ここに公認指導員資格を与えるのに試験と言うハードルを設け、改めて基本動作を再確認すると言う点でチエックするようにした。
一連のスポーツ吹き矢は、息を吸ってから矢を的に放ち、残心を保ちつつ動作が終了するまでを大きな円とすると、そこには一連の動作の連続性が必要であり、次の動作と関連性が無くてはならない。これによって美しいスポーツ吹矢の型が作られてくることが基本にある。当然、その円を描く際にメリハリが重要になってくる。スポーツ吹矢は、腹式呼吸を取り入れる動作で、息を吸って吐き出すのであるが、ここにメリハリをつける。息を吸うのは1~3秒であるが、腹式呼吸で息を吐き出すのは初心者で少なくても8秒、高段者は12~13秒の時間をかけることがメリハリの点で美しい。この集中力を一矢に乗り移させる一連の動作であるといえる。ここで筒をしゃくり上げる方がいるが、吹矢の場合、しゃくり上げは筒内の矢が移動してしまい、毎回同じ状態(筒内の位置)にならないので、あくまでも水平状態を保つべきである。
的に筒を合わせる際、目と口が離れており、目で捉えた的を口で吹くときの動作となるので、照準を合わせる動作でなく、両眼で的を捉える形となる。筒、吹く息とシンクロさせる動作で、的を狙う位置はけして7点の黒点ではない。
吹き終わった際の残心が足らない人が見受けられる。終了段階は吹き終わり、顔は的を向いており、腕はゆっくりと身体の正面の目の高さに戻ってくる中で、顔はその後(2~3秒)に正面を向く動作が必要である。これが残心である。
是非、スポーツ吹き矢を通じては楽しい、健康的維持を実現するために基本動作を身につけられ、一人でも会員が増えていくことを念じている。
当日、受験者54名中、7名程度が女性。受験者は緊張の中にも仲間意識が強く、いろいろな支部の方とのコミュニケーションが取れた感じを受けた。日立支部をPRする点からもユニホームを着用していった(以上、日本スポーツ吹矢協会本部で編集子記)。