花日和 Hana-biyori

ルポ内部告発 なぜ組織は間違うのか

「ルポ内部告発 なぜ組織は間違うのか」
奥山俊宏・村山治・横山蔵利/朝日新聞出版2008年9月30日発行



2000年に内部告発によって発覚した三菱自動車の欠陥車隠し、2007年にミートホープや船場吉兆など次々と発覚した食の偽装など、真相を細かくレポートした新書。連日ニュースをにぎわせていたのを思い出して、あの発覚までにはこんなドラマみたいな出来事があったのねとけっこうドキドキしてしまった。

正しいことをして公共の利益を守るか、自分の生活ために見逃すか、非常に難しい選択だ。しかし、終身雇用がくずれ非正規雇用の多い現在、内部告発は増加の傾向だという。「公益通報者保護法」が2006年4月から施行されたこと、内部告発は公共の利益のためという風潮も手伝っている。

そりゃそうだ。三菱自動車なんか隠し続けなければ死ななくて済んだ人がたくさんいるわけだ。「不特定多数に対する殺人」と言われたのもうなずける。

本書の中で、内部告発を尊重して直ちに改善し、通報者探しをした者には厳しい罰則を課した企業は、却って信用度を上げ経営は順調のようだ。

従業員のせいにしてまったく懲りなかった船場吉兆やミートホープの末路は悲惨だった。だけじゃなく、ミートホープの通報者はかつての仕事仲間から職を奪うことになり、決して通報したからいいことをしたなどと思えないところがやりきれない。

最初から不正などしなければいいのだけれど、利益を出すこと、会社を維持することを考えたら頭がおかしくなる経営者もいるんだろう。

【覚書】
「内部告発者」と密告者の違い

「内部告発者」は、自分の個人的利益を犠牲にして、いろいろな報復を受けるかもしれないけれども、あえてそのリスクを引き受けて公衆の利益のために行動する。

「密告者」は、自分個人の利益を目的として体制や当局のために動く。独裁的な全体体勢主義国家では、内部告発者は弾圧されて密告者がはびこる。
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