ウォール・ローゼを奪還した後、エレン、ハンジ、リヴァイ、ミカサはのエレンの家の地下室へ向かう。グリシャ・イェーガーの手記が発見され、人類と巨人の謎が明かされる。
手記の最初には3人家族が描かれた紙があった。裏に、これは絵ではなく写真であること、「私は人類が優雅に暮らす壁の外から来た。人類は滅んでなどいない」というグリシャの告白が記されていた。手記は彼が幼い頃の暗い記憶から始まる。
グリシャは家族とともにエルディア人の収容区で暮らしており、マーレ人から圧政を強いられていた。ある日好奇心から妹と収容区域外へ出てしまうが当局に見つかり、妹は別の場所でマーレ治安当局の男に惨殺される。
これをきっかけにグリシャの父(エレンの祖父)はエルディア人の歴史を息子グリシャに叩き込む。
***(ここから祖父の語り)
1820年前、エルディア人の祖先「ユミル・フリッツ」は、「大地の悪魔」と契約し巨人の力を手に入れた。ユミルは死後も「九つの巨人」に魂を分け、エルディア帝国を築いた。エルディアは古代の大国マーレを亡ぼしこの大国の支配者となる。
巨人の力を持った「ユミルの民」は他の民族を下等人種と決めつけ弾圧を始めた。土地や財産を奪い、いくつもの民族が死に絶える一方、エルディア人はユミルの民を増やすため民族浄化を1700年続けた。
だが、かつての大国マーレは増長を極めたエルディアに内部工作を挑み、内戦でエルディアを弱体化させ、「九つの巨人」のうち7つを手駒にして80年前の「巨人大戦」に勝利した。
フリッツ王は残された国土「パラディ島」に三重の壁を築き国民と共にそこへ逃げ込んだ。
だが、非マーレ派のエルディア人残党は王家に見捨てられこの大陸に取り残された。
「寛大なマーレはエルディア人の残党を殺さず、生きる土地を与えて下さった。 (優生思想に走り民族浄化をやった、悪魔の血なのに)」
***
そう語る父に嫌悪感を覚えたグリシャ少年は反論するが、父は「楽園送りになりたいのか」と息子を咎め、「我々が直接の加害者じゃなくても、被害を受けた側の長い歴史にとってみれば関係ないことだ」ときつく諭した。
‘’世界は理不尽で狂っている”と感じながら成長したグリシャは、18歳のとき「エルディア復権派」に勧誘され、マーレ当局に潜伏する内通者“フクロウ”の存在を知る。
エルディア復権派の中でグリシャは、「始祖ユミルは大陸を豊かに発展させた」という古文書を読み、(実際にはほとんど読めないが信じている)「ユミルの民」としての誇りを抱く。
また、大陸にとどまった王家の末裔である女性、ダイナ・フリッツによれば、「始祖の巨人」は145代目フリッツ王が壁の中に持ち去ったという。王は“始祖の巨人の力で争いの均衡を保つ”という役割を放棄し、「辺境の島に都を移した」とダイナは批判した。
グリシャたちは、フリッツ王は強大な力を持ちながら争いに背を向け島に逃げたという認識を持つ。
グリシャが「始祖の巨人を奪還し真の王家にお返しする」ことを復権派仲間に呼びかけると、ダイナは感激し、グリシャと結婚。ジークが誕生する。
一方、マーレ政府もパラディ島の資源を狙っており、巨人の力を利用して攻め滅ぼそうとしていた。ある日マーレ政府は「フリッツ王が宣戦布告した」として、ユミルの民(エルディア人)からマーレ戦士を集う。それは、‘’七つの巨人を継承する器”となる人材で、「選ばれると名誉マーレ人になれる」と呼びかけられた。
奇しくもマーレとエルディア人復権派との目的が一致。フリッツ王から始祖の巨人を奪還する計画がそれぞれに動き出す。
グリシャは幼い息子ジークを「マーレの戦士」として送り込むが、7歳のときジークが父らを密告。エルディア復権派は全員「楽園」送りにされる。楽園とは、パラディ島を永遠にさ迷う知性のない人喰い巨人になることだった。
***
ここで面白いのは、立場による歴史解釈の違いだ。グリシャの父は、息子に大人しくしろと諭すために、「エルディア人は優生思想に走り多民族を虐げた悪魔の民」と語らねばならなかった。
一方グリシャは、妹を殺された責任を感じつつ、マーレに虐げられる理不尽の中で生きている。罪の意識や自分の尊厳を取り戻すためにも、たいして解読できていない古文書で「始祖ユミルの功績」を完全に信じてしまう。本当の歴史は謎のままだ。
グリシャが父にされたように、自分の歴史解釈を我が子に押し付けた結果が、破滅的な裏切りだ。妹が殺された後のグリシャと、ジークが父母を告発した時の目は同じ、死んだ魚の目だった。壮絶な皮肉がみごと。
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