ブログ 浜松市平和委員会 2

へいわが好きでせんそうに反対する市民団体「浜松市平和委員会」は核兵器も戦争も暴力もない地球をめざします。

平和運動史 埋田昇二「冨士から母たちへ」

2022-03-15 19:22:06 | 平和運動史

平和運動史 埋田昇二「冨士から母たちへ」

  埋田昇二さんは詩人、高校教師や浜松市平和委員会事務局長を長く勤め、2020年亡くなられました。生前、平和運動関係の詩などを浜松市平和委員会で使わせていただく約束をいただきました。
 昨年8月に「平和運動史 2 埋田昇二「君の瞳には視えないか」 2021-08-19 18:55:01 | 平和運動史」を掲載しましたが、これから埋田昇二さんの平和の詩などをすこしづつ掲載していきます。

 


冨士から母たちへ  

         埋田正二


みはるかす
雲のきれめから
さしこむ赤き光
冨士のひたいそめて
仰ぎみるわれらの胸にこだまする
民族のこころ
すがしき

きこえる
風にのって
銀色たなびくうすき野に
冨士のこころ引き裂く黒い砲声にいりまじり
荒磯にうちよせる怒涛のような幾千万の平和の歌声のとどろきが

ここ
冨士山麓に居座る
沖縄米第三海兵遠征軍東冨士演習場マックネア基地

友よ
ひとと生まれて五十年
その生涯にあたいする半世紀を
異国の軍隊に占領され

山も?も島も
風と鳥と花とひとのいのちの交響する冨士に
ふるさとの大地に砲弾撃ちこまれ
軍靴に蹂躙され

この痛みを
この屈辱を
一時たりとも忘れることができようか

きこえる
あかき人間のこころの駆動
スクラム組む腕の熱い鼓動が

国頭 恩納 宜野座 伊江島で
三宅 逗子
喜界島 えびの 大樹
矢臼別 三沢 横須賀 岩国 佐世保で

いま 激動の海鳴りがきこえる

1990年の暁
日本列島のどこにも
厳寒の原野に
北風をきって舞い立つ白い鶴のような母たちがいる

大地に根をおろし
根源≪安保≫の鎖に大鉈の一撃を打ち奮う父たちがいる

たちのぼるいのちの精を
てのひらに包んで
世紀の渚の朝を駆けていく若者たちがいる

日本のどこにも
おしとどめることのできない
非核・平和の大きな渦が

 

 

 


平和運動史 2 埋田昇二「君の瞳には視えないか」 20210819

2021-08-19 18:55:01 | 平和運動史


平和運動史 2 埋田昇二「君の瞳には視えないか」 20210819


 埋田昇二さんは浜松市に在住の詩人で同時に浜松市=静岡県平和委員会の平和運動家でした。

 この詩は1972年に静岡県沼津市の今沢米軍基地での米軍上陸阻止の平和行動、9月の「波打ちぎわ作戦」を描いた詩です。

 この日を含む「今沢闘争」についてはまた語りたいと思います。

 埋田さんの詩もすこしづつ紹介していきます。

 

「君の瞳には視えないか 
              埋田昇二

君の瞳には
視えないか
今沢の
朝もやをひき裂き
ぼくらの旗を倒して
LST船の黒い舳が
日本の渚につき刺さるとき

鉄の船腹が割れて
ベトナムの泥をつけた
M48重戦車のキヤタピラが
日本の土を削りとるとき

駿河湾の水平線のかなたに
ヒロシマと同じ色の火の柱が
竜巻のごとく噴きあがるのを

腕を組む
きみの耳にも
一五〇ミリ榴弾砲の
硬い砲身のなかを潜り
出撃していく米第三海兵隊の
自動小銃の乱射に薙ぎ倒されていく
ベトナムの母と子の叫びが聞こえるか

野積みにされた弾薬箱のスタンプ文字のなかに
焔の海に呑みこまれようとしているハノイの街の
松明のごとく燃えている人間の列柱が
きみにも視えているか

日本列島の中央
海兵隊がふみ荒す
冨士の土をにぎりしめるとき

弾痕のざらざら
血溜りのなかの
ソンミ村の
熱いざらざらに触れたか

血のぬるぬるを視たか

目頭に
こみあげてくるものが
空につきあげるこぶしのなかで乾いていく
一九七二年の暁
言葉によってしか
見えなかったものが
てのひらのすじをたどるように
視えはじめたとき

星明りはためく旗のもとで
沖の潮鳴りを聴いている
きみとぼくの
心のなぎさに打ちよせる
日本の海は
はじめて
<祖国の>海となる

           ー 静岡県平和委員会十周年記念によせる ー」