ハミルCLASS

話・映画・本・絵・DRAMA

馬花 98 MOTHER

2024-09-30 01:17:00 | HAMIRU

おじゃまします

面目躍如、誇らしげな表情でウサポが子供たちを引き入れた

娘がいる
この両腕の届く位置にいるのは、
赤子の時、
3ヶ月で手放してしまった
10年の月日が経っていた



あのヒトリボッチの男に娘を託した
私が執りなした決定なのに
なのに
アイツを恨んでしまった

私はいつも、うまくいかない


ミコルENからは
ミコルの他に
4天王からイシス
20団員の1人プルマ
そして
ミコルの左腕ロオド



右腕にはHANAがいるが
ツッパリスタイルで子供たちが怖がるといけないので遠慮してもらった
コワモテの見かけによらずスーパーが好きで、新鮮な野菜や鮮魚を見たりすることが趣味だった
しかし、いつもじゃがりこを買ってくる



「い、いはっしゃい」
声が震えた
いつも毅然とした態度のミコルが動揺した

四天王の中でも、あらゆる面において能力最上位のイシスがフォローする
「どうぞこちらへ」

3人の子供たちはリビングへ招かれた
「うわぁ」
お淑やかを決め込んでいたアユラが、本当の声を発した
そこは、ヨーロッパ調の家具、とりわけ北欧ブランドで揃えられたような煌びやかな世界だった
「うわぁ」
アユラのあとにユーリが続いた、声はユーリが視線した大きなスタンド鏡に反響して部屋を包むようだった
ルチカは注意深く部屋の中を見回した

(よく来たわね)
うまく声が出ない
ミコルは明らかな己の変調に焦りを感じた

「どうぞこちらへ」
イシスが場を取り持って、3人掛けのダークブラウンのソファへと誘う
大所帯のミコルENにはレトロ感を醸し出す木目のテーブルを中心に3人掛けのソファが4つ置かれている

子供たちがソファを背にして、左からユーリ、アユラ、ルチカの順番に座る
対面のソファに左からミコル、イシス、プルマが座った

ミコルの前にはルチカ
アユラの前にイシス
ユーリの前にはプルマ

ミコルは避けた
あの娘の正面に腰を据えてしまっては、私の尻は大量のボンドを罰ゲームで仕掛けられたようにベッタリとソファと一体になって、全ての行動を奪ってしまうだろう

ミコルが平常心を失っている様を自然と察知して
左腕のロオドがウサポの耳と耳の間を撫でた
「よくやりましたね」
「シッシ^_^」
早くミコルに褒めてもらいたい

プロタゴ軍団 20名
四天王 4名
ロオドとHANA
ミコル
もう一人ヨーロッパに修行中の人間が1人いる
計28名
世界の片隅の存在の者たちは皆がフォロー仕合い


生きている


・・・・

心情察知能力
プルマが震えている
心、とりわけその場にいる最も上位の者の心の状況が連動して出てしまう
プラマはそんな能力があって、この場ではミコルの心が伝わる
ミコルは緊張を必死で隠し取り繕うが、プルマが震えてしまう
ミコルENの民はプルマの様子を確認して、ミコルを知る



喜びも隠せない

・・・・

「ウサポの友達でしたね」
イシス
「うん、私のクラスに転校してきて。ね、ウサポ!」
「うん、アユラちゃん!」
上機嫌に跳ねた
「そちらのお嬢さんは」
「こっちはユーリで4年生、こっちがルチカ5年生」
真ん中に座っている2人が言葉を交差する
「そうですか。ウサポから聞いておりますが、皆さんハミルENのお子さんということで」
「そうそう、私たちはみんな生まれた時から一緒だから」
アユラが落ち着いてきて、少しばかりの余裕が生まれた。質問を返す
「みんなは?」
「うん、そうですね。私たちはみんなバラバラでしてね。そちらのミコルさんが我々を救ってくださってね」
「ふーん、そうなんだ」
ミコルがまだ落ち着かぬ面持ちで、左の口角を引き攣り上げた


「救うって」
言葉が刺す
「えっ」
ミコルは虚を突かれた
「えぇ救うっていうのは、我々は寂しい存在だったんですよ。それを1つにしてくれたんですよ。1人ずつが集まれば集合体になって寂しさは解消されるのは当然なんですけど。言うのは簡単で。実際にそれを実行する人間が必要なんです。我々には、なんて言いますかね、指導力とか推進力とか言いますかな、持ち合わせてないから可能ではないんです。
可能かつ事を為せる人物と出会えるかと言う」
イシスが落ちかけた我々を掬い上げた女の解釈を講じた
「優しさだろ」

えっ

「根底にあるのは優しさだ。リーダーシップとか主導力なんか言うのは二の次の筈だ。企業とか組織ならそういう資質が問われるだろうけど、此処が築こうとしているのは家族だから、優しさであり、MOTHERの器で皆が乗れる受け皿になること」

この子

ミコルは正面座る、少年を見つめた

少しこの子は危険かも知れない

・・・・

1年と半年が経った
令和6年に暦が移り
街は少しばかり樹木の葉が色を変えて
枯れ葉の趣きと長袖の腕まくりが散見される
季節は移り変わり

ルチカ!
アユラが追いかける

6年生になったルチカが
振り返る

あゝ、アユラか


もうすぐ中学生だ

・・・・

「親なんていらないし
 私を捨てた。
 ハミルENのみんながいるし
 私は幸せ
 妹のユリリが私の唯一の
 家族だし」


あの日
  流れ流れ着いた
   会話でユーリは話した


        ミコルは微笑を浮かべ、訊いた


    プルマの涙が止まることはなかった


        ・・・・・

 


        ひさかたに


        再会したり


        このははは


        葉は枯れようとも


        涙は枯れぬ

 

 





 

 

 

 

 


馬花 97 おかえり

2024-09-25 23:40:00 | HAMIRU

子供が歩く

ウサポを先頭にルチカ、アユラ、ユーリが横一線に歩いて行く

H小学校を出て子供の足で20分ほど、乾の方角にミコルENはある
逆に巽の方向へ、同じく20分ほどの場にハミルENはあった

IMG_0721

車道と歩道が区別されていない名もなき道を4人は歩く
ユーリは傍らに生えている猫じゃらしを左手で遊びながら歩いた

ウサポは軽快に飛ばした
ミコルENにユーリを連れて行くという、女主ミコルの期待に応えることができる
ミコルENのプロタゴ軍団たちは世界で行き場を失った者たちで、救い上げてくれたミコルは

FullSizeRender

絶対的母だった

学校は15時に終わったから、30分後にはミコルENに到着する
ウサポはミコルに'よくやったね'と撫でられる至福を想像して軽やかに飛んだ

「ウサポはやっ!」
アユラが吠える
「みんな早くピョン!あと5分くらいだよ」
人は100mを10秒で走れば、時速36kmだ
ウサギは時速70〜80kmで走る種もいるという

・・・・

ミコルENに遊びに行くことを決めたハミルENの子供たち
ウサポに誘われた3年生アユラと4年生ユーリに5年生のルチカを加えて、招待の翌日金曜日に早速ミコルENに向かう

大人たちがなぜかミコルENに行くことを止めようとした
寧ろ子供たちの好奇心に火を灯した

ただ少し、ルチカとアユラは未知の世界への通りを楽しんだが、ユーリはなにか重たい気持ちがしていた

FullSizeRender

「着いたピョン!」
「でっか!すごいマンション!」
アユラは興奮を隠しきれない
庶民派、低空を居城としているハミルENの面々には入城したことのないようなマンションだった
「やっぱ、やだな」
ユーリが呟く
「えっなに。ユーリ」
アユラが反応した
「だってこんな大きいマンション入ったことないし、怖いよ」
「そんなことないよ、行ってみようよユーリ。ウサポもいるんだし」
「うーん」
「ユーリ、とりあえず入ってみようか。嫌だったらすぐ帰ればいいさ。その時は僕も一緒に帰るから」
「う、うん、それじゃ」
年長者ルチカが場を説得した

常にルチカの言葉には強さと畏怖があって、その言葉には反駁できない
リーダーの資質はこの頃から示されていた

「行くピョン!」
褒めてもらいたい

ウサポが暗号を入力してガラスが開いた。4人はエレベーターに乗り込み、ウサポは最上階の18Fを押す。
流石のアユラも黙った。最上階の優雅に相応しい態度をとらないと、と子供ながらに弁えた


・・・・

「ただいまピョン!」
ウソポが玄関を開け、光が広がる

ミコルがいる
あの時、恋人に娘を譲ってしまった後悔の念を今、成仏させたい

今目の前に現れた
娘の背丈を確認してまだ間に合う、と
少女を私ので抱きしめ、おかえり、と

君の住処はココだと言いたい

「お邪魔します」




馬花 96 校長先生

2024-09-21 00:04:00 | HAMIRU
「ユーリどうする」
「うん、微妙じゃね?」
「うん、行ってみてもいいけどね」
「ミコルENだって。変な名前ー」 


2023/1

アユラとユーリが白い息を交差させていた
ウサポに家に来ないかと誘われた帰り道

つまりミコルENに来ないかと、
ウサポは任務を着々と遂行して
ユーリをミコルへ引き合わせれば
成功だ

FullSizeRender

4年生のユーリと3年生のアユラには
警戒心はなく、
ダルいかも?
程度の感覚だった

アユラは困った時には、いつも

「ねぇ、ルチカに聞いてみようよ!」

FullSizeRender

「うん、いいよ僕も行くよ」
「ホント!良かったねユーリ」
「う、うん。じゃあ」
「ユリリは連れて行くか?」
ユーリの妹ユリリ1年生
「ユリリは行けないよ」
「なんで?」
「あおぞらクラスだから・・・」

「そうか、じゃあ3人で行こう」
ユーリはいまいち気が乗らない面持ちだったが、アユラは横断歩道を渡る子供の如く
「よし!」
右手を空に突きさした

FullSizeRender

「ルチカ、おかえり」
「母さん、ただいま」
母子。父親は今はいない
「今度友達の家に行ってくる。
アユラとユーリが一緒」
「あら、そうなの。めずらしいわね」
「うん」
「いつなの?」
「来週あたりかな」
「なんていうお友達?」
「ウサポとか言ったかな。アユラのクラスに転校してきたんだ。ミコルENとかいう家から来てるってさ」
「ミコルEN」
「うん、変な名前だろ」
「ダメよ、絶対駄目!行っちゃダメ!」
「えっ、母さん・・どうして」

FullSizeRender

「ルチカ!」
近所住まいのアユラがルチカの元を訪れた

「アユラ」
「ダディがウサポのミコルENに行っちゃいけないって」
アユラの父アネハもまた、友人の家つまりミコルENへの訪問を、子供達の交流を妨害していた

「アユラ、うちもだ。母さんが」
「どうして!」
「何かあるな」
「そうだよね。おかしいよ!」
「ユーリは?」
「わからない。どうしよう」

「行こう。」

「大丈夫?」
「明日だ」
「明日?」
「大人達に探られる前に動いた方がいい」
「わかった。ダディには言わない方がいいよね」
「あゝ、言ったら止められる。大丈夫だよ放課後の1時間か2時間。夕方には帰れるし。学校でバスケしてたら夢中になったとか言っておけばいいさ」
「うんうん、な、なんかドキドキしてきた!」

・・・・

FullSizeRender

「おねいちゃん、コチョコチヨ」
「だは!ユリリやめて」
「おねいちゃん🎵」
「ユリリ、あおぞらクラス楽しい?」
「うん、めちゃくちゃ楽しいよ」
「そう」
「うん」
「実験してるの?」
「うんうん、実験実験」


「ポニテ先生」

「あっリリー校長」
「あおぞらクラスのユリリはどうですかね」
「途轍もない能力です。1年生ですが、高校生レベルの問題も解けます」
「そうですか。期待してますよ」
「ええ、でもこれ以上成長したら私に手綱がとれるか」
「大丈夫ですよ。ポニテ先生」
「頑張ります」
「なにしろ我が校、開校以来2人目の
 あおぞらクラス生ですからね」
「はい、超天才クラス・・」
「パオーン!」