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馬花 158 20年4組

2025-02-23 21:13:00 | 

「ふざけんなって」
「なんでよ」


ユーメとイケル

二人は21歳になっていた

ユーメの横浜のアパート

昨日は仲睦まじく過ごした

抱いて眠って起きて

AM11:00だった

ユーメが昼にいつものラーメン店に行こうと発案したが、イケルは出掛けると言った、昼は其処で

 

「そんな変なとこ行くなって」

「話、聞きに行くだけじゃない!じゃあ一緒に行こうよ」

「俺は行かねーよ!だから、お前も行くなって」

「約束しちゃったし」

「お前、男だろ」

「そんなんじゃないし!馬花じゃないの!」

「じゃあ、やろうぜ」

「昨日したでしょ。時間ないから、行くよ」

「待てって!ふざけんなよ。なんでそんな勝手なんだよ!」

「いいでしょ。ちょっと興味あるし」

「なんでだよ。なんだよそれハミルENだあ?結婚しちゃいけないんだろ」

「メンバーになったらね」

「なんでそんなおかしなとこ行くんだよ。俺さ、、」

「何よ」

「いや。」

左手首に視線をやって時刻を確認した


「ユーくん、解放される気がしない?」

「えっ何が、、結婚?」

「取り敢えず話聞いてくる。帰って来たら教えてあげるね」

「いいよ、俺は」

イケルが彼氏に唇した

抵抗を削がれた


「行って来ます」

「うん、わかったよ」

 

 

はあ、俺は真剣にアイツと、なんでだよ



左薬指に視線をやって将来を憂慮した



スカイブルー が見映える列車に揺られて

DOOR to DOORで40分だった

AM 11:50

約束の時間より少し早く着いた

待たせると悪いから丁度いいくらいかな



イケルちゃん、ようこそ



「お邪魔します」

「うん、どうぞどうぞ」

1ヶ月前に来た時と同じソファに座る

ガラステーブルを挟んで向かい合う

「アキカさん、此処は1人でやられてるんですか」

「うん、関東は僕1人だね。10月までもう1人女性がいたんだけどね。仕事の関係で今は大阪にいる」

「そうですか。全員で40人でしたっけ」

「そう大人はね。ほとんどは愛知にいるね。関東が僕1人。関西に3人、東北は宮城に1人、九州は福岡に1人。1人行方不明だね」

「行方不明?ですか」

「うん、行方不明っていうか。旅人みたいな感じかな」

「へえ、なんかいいですね」

「ふふ。イケルちゃん、お昼?」

「あっ、まだです」

「ちょっと待ってて」


アキカがキッチンに立って、あらかじめ拵えておいたであろう品をテーブルに配膳する


「ありがとうございます。手伝います」

「大丈夫。これはね」

テーブルで数種の果実ジュースとシロップに氷をシェーカーに入れて手首を振り動かす


「フロリダというカクテル。ノンアルコール」



「厳密にはアンゴスチュラ・ビターズが1dash。少し苦味があって深みが出るんだ。お酒だけど一振りだからアルコール度数は1%もないくらいだから」

「そうですか。ありがとうございます。いただきます」


昼食を摂って、しばらく他愛のない話に興じた

時刻はPM2:00になっていた


・・・・



1人でラーメンを食べた帰り道、いつも素通りする花屋が何故か目についた

同時に妙策と彼女の綻んだ口元が脳裏を過ぎる

また、いつもの如く口論してしまったから、たまには、いや、初めて


花を買った

よくわからなくて、店員に尋ねることも少し照れ臭くて、何とか名前の聞いたことのある花を


赤、紫、濃ピンク


3輪買った


不思議だった

花なんて甚だ関心はなかったのに、英字ベージュのラッピングに包まれたその花を見つめたら俺が綻んでた


これできっと今晩も仲睦まじく、抱き合える

 

 

 

ちょいと膨らんぢまって、てやんでえ背を屈めながら歩く

 

・・・・

 

 

なんで



何とかベロが挿入されることだけは一途に抵抗している

PM4:00になっていた

キスしてた?されてた?受け入れた?

あれから此処の話になって、結婚はどうとか区別がどうとか自由がどうとか解放

なんで。

突き放して抵抗すればいいのに、脳の伝達が肉体へうまく届かない。神経が迷路にみたいに広がって腕か足か首か愛なのか何処を動かせばいいのか、迷子になっている

ベロを強奪せんとする力みと解放の緩急を操り、漢の舌が私の唇を突破歯肉に喰い差しながら、許容を確かめる

背を抱えた手指が妖魔の揺動を繰り返して、私の前面に這い出る

 





「ゴメンナサイ!」
胸の突起をやられて、スイッチがONになったのかOFFになったのか分からなかった

ただ、

昨晩、丹念に優しく弄ってくれたユーメの顔が浮かんだからだ、左の乳首を舐めながら左手で右の起立をずっと戯ってくれた、私の小振りのBUSTに無理矢理挟もうとして諦して私の口唇に差し出した、少し自責の念を感じながら裏をペロペロと舌、ユーメは腰の角度を起こして口腔へ直角に頬張りを強請る、口で行戯しながら彼の突出す左右の腸骨をハンドルを持つみたいに握った、そのまま骨を押し上げて次の行程へ進みたい私を示した、はいったまたひだりからはじめてくれたなめてたくさんいぢってくれたしあたしもゆーめのびーちくをなめたいつもいやがるのをわかってていぢわるしたくすぐったいっていったからわたしはわらった

 

やめてくださいがでなくてごめんなさいといってそこをでた

 

ゆめごめんなさい・・・・・・・・・・・・

 

・・・・

 

生花瑠のやつ驚くぞ




赤 君を愛す

ピンク 希望

 

・・・・


留まったのね



洗えばいいじゃない


汚れなきゃ

洗えないでしょ


ねえ、

 

 

 

あんちゃん

 


 

気が付かなかった汚れまで

気付かせてくれるかもしれない

 

 


たくさん汚れて沢山洗った方が

キレイになるかもしれない


 

滅茶落君が現れるかもしれない




ケガレから宝が生まれるかも

しれない



私だって



好きです

 

 



 






 


馬花 137 掻き初め 20年3組

2025-01-08 22:34:00 | 

新年明けて

横浜関内のユーメのアパート



「ユー君、明けましておめでとう」

「イケルおめでとう。ちょっと待ってろ」

「うん?なに?」








「どうぞ。今年はお茶を始めることにしたんだ」

「へえ、いいじゃない。私もやってみようかな」

「一緒にやるか?」

「でも、私はとりあえず花をやらないと」

「花?」

「うん」

「そうなの?いつから」

「まだ決めてない」

「なんだそれ」




「ねえ、ユー君」

「うん」

「あのね、ハミルENって知ってる?」

「ハミルEN?なんだそれ」

「この間ね、ネイリストのアキカさんと知り合ってね」

「男か?」

「うん、そうなんだけど」

「チッ、どこで知り合ったんだよ」

「事務所の人だよ」

「チッ」

「でね、その人はハミルENの人なの」

「なんだよそれ。気味悪いな」

「聞いて。なんか名古屋が本拠地らしいんだけどね。関東は横浜が拠点で磯子の方らしいんだけど」

「磯子?そう遠くないな」

「うん」

ウズウズし始めたユーメと遠い目をしているイケル


「で、それがなに?」

「血の繋がりじゃなくて、お金で家族を築く」

「はあー、何言ってんのお前」

「経済を等分するんだって」

「ちょっと待てよ。訳わかんねえよ」

「全員の稼ぎを合わせて均等に配分するんだって。格差を消滅させる」

「何言ってんだよ。資本主義なんだぞ。よくわかんねえけど」

「だから。無限に・・かぞ・まあ、いいや。しよっか」

「はやく」



う、うん

はあ、気持ちいい

ねえユー君もっと

はあはあ、いきそ

そのままでいいから、今度会ってみない

はあはあ、いく

行ってくれるの?

ち、ちがう、そっちのじゃない

あっ

はあはあ




あーいく

はあはあ

私、いく

ダメだ、いくな、生花瑠

うん、わかったよ、夢くん




アキカさん








馬花 109 瑠璃 20年2組

2024-10-29 03:14:00 | 
「うう、ああ」
「ユー君、ちょっと待って、そのまま!」
「ん」

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いつものユーメの部屋のベッド

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「やっぱり、すごい!」
「お前ハカルの好きだな、時間計ったり、長さ測ったり」
「15.7cm。すごいすごい!調べたら日本人の平均は13cmくらいって書いてあったよ」
「そうなのか」
「やっぱりユー君のは大きいと思ってたんだ」
「まあな」
「自覚あるの?」
「当たり前だろ。20年男やってんだぞ」
「そうなんだ。デカッ」
「それより、ちょっと、続き」
「うん」

180秒

「はあ、宝の持ち腐れだな」
「お前そういうこと言うなって」
「天は二物を与えないか」
「意味合ってるか」
「いい一物持ってるのに」
「おまえ」
「ユー君なんかね、調べたらね。男の人って年とると遅くなるんだって」
「まあ、そうだろうな」
「知ってるの」
「いや、普通人間の身体ってそんなもんだろ。年齢が上がれば反応とかも落ちるだろ」
「楽しみだね、ユー君」
「ん」
「30代とか40代とかになったら、ユー君すごいかも」
「まあ、な」

萎んだユーメを触れるイケル

「でも15.7cmとは。恐ろしや」
「ふん」
「なに喜んでんの」
「別に喜んでねぇよ」
「嬉しそう」
「えっ、それは」
「嬉しいの?」
「そりゃ、でかい方がいいだろ」
「そうだよね。ユー君、これ、日本代表になれるよ!」
「馬花!恥ずかしいだろ」
「恥ずかしいの?」
「お前、僕はチンコ日本代表ですっていうのかよ」

アハハ

「ユー君、私ね」
「うん」
「初めて、モデルのオーディション受かったの」
「うそ!スゲェじゃん!」
「うん、ずっと落ちてたのに」
「良かったな」
「嬉しい?彼女がモデルっていったら」
「あゝ、うん、まあ、そうだな」
「髪ね、縮毛矯正やめたでしょ」
「うん」
「傷むし、定期的にやらないといけないから面倒くさいし。私の場合根本からやらないと、根本が跳ねてるから。だから伸びたらすぐだし。もう爆発頭のままでいいやって開き直ったんだけど。そしたら、初戦で撃墜できた」
「それ、たぶんさ、やっぱり目立ったんだよ。目立つし、バースト頭で出てくる女ってあまりいないから。オーディションする方だって、刺激が欲しいんじゃないのか」

イケルが右手で髪に触れる

「チン毛頭の勝利だな!」

ビュン!
右手が空を斜めに切り裂いた

スタッ、トントン

「ん?」

女は下のみ下着のままキッチンに向かい、シルバーに光る金属を取り出した

「それは私が小学生の頃にある男子から揶揄われて、悔し涙した言葉!決して口に出してはいけない。全然違う!私は根本が縮れているだけ」

呆然と立ち尽くす、パンツのみの男

「殺す」

ヤバいマジか

金属を両手に襲いかかる女
左に躱し、後ろに回り込む男
そのまま右手で腕を掴み、左手で抱きしめた

「落ち着け!イケル!悪かった!」
「殺してやる」
「フォークじゃ殺せないだろ・・」

そのまま強く抱きしめたまま、優愛が生花瑠に語りかける

「なあ、イケル、引き分けにしよう。この前おまえは俺に早漏野郎って言った。俺は傷ついた。俺は今、生花瑠にチン毛頭って言ってお前を傷つけた。すまない。お互い傷ついたし、傷つけた。なあ、引き分けにしよう」
「う、う」

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あーん

ユーメの左手はイケルの左乳首を転がしたわ
快感が憤怒を食い千切って、イケルはフォークを床に降ろしました
フォークがカタンって音を立ててね、始まりの合図を鳴らしたの
そのままディープな唇の格闘が始まったし、こんな時だから彼のホルモンは限界突破して15.8cmの自己新を記録したみたい
彼女はそれをちっさなお口をおっきく広げて御手手を下から添えて頬張ってあげたの

夢愛は生花瑠の割れ目をたっくさん、いつまでもペロペロするものだから
イケルの頬は紅潮を彼方に置去りにして、瑠璃色のような清涼に移り変わったわ

それでもやめない
男の償いなんてこんなものかしら

・・・・

ユーメ大人になればどう愛すの
イケル大人になればどう活花る

花、宝石、ディナー、お酒、手紙

どう償うの

・・・・

年輪のSTORYをね

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   夢愛         生花瑠



馬花 104 螺旋の先 20年1組

2024-10-16 17:11:00 | 

「イケル、お願い」
「うん」

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「あ」
「えっ、もう」
「ごめんごめん」
「うん」


「イケルさ」
「うん」
「お前浮気してるだろ」
「はっ何言ってるの」
「お前上手くなってる」
「はあー」
「どこの男に仕込まれた」
「はいはい」
「答えろ!」
「何、馬花なこと言ってるのよ!」
「お前のあの転がしは今までなかった。どこかの男に仕込まれたんだろ!」
「ふざけないでよ!そんなわけないでしょ」
「気持ちよすぎだ」
「いいじゃない」
「心配になるだろ、前回ない技繰り出されたら」
「技って」


妙な空気と女の溜め息と男の匂いが室内に広がる


「お前、本当に・」
「うるさいな、チョッパヤ男!」
「・・・ちょ、ちょ、ちょっぱ」
「当たり前でしょ、なんで本当の前にいっちゃうのよ!」
「いや、だからお前の奥義が」
「奥義じゃないわよ。ただペロペロしただけでしょ」
「いや、お前が成長したんだ。俺の知らないところで!勝手に」
「なんで、そんなに早いのよ!」
「だって俺、今日のために7日も我慢して・・」
「だからじゃないの。敏感になって」
「でもお前の舐めずりは、今までなかったのに」


沈黙と深い眉間の2人


「なんで我慢してくれないの」
「我慢してるよ」
「それで、あれなの」
「そうだよ」
「この前なんて2分だったし」


少し頭に血が昇る、男


「そういうこと言うなよ」
「今日なんてまだ」
「もう一回」
「うん、でも早すぎるし」
「次は大丈夫だから」


戯れもなしに目的のみを達成する、2人


「なんで4分なのよ」
「計るなよ!ふざけんなよ」
「前の人はもっと」
「そういうこと言うなよ!」
「だって」
「そういうこと言うなよ!じゃあ、そいつのとこ行けばいいじゃないか!」
「ユー君のほうが好きだし」
「じゃあ」
「でも、」
「言うなよ!」
「・・・・」


しばしの隙を置いて
ユーメが切り出す


「そいつは長かったのか・・」
「20分とか30分とか、」
「あーむかつく!マジ、コイツむかつく」
「ごめん。でも私もほんとに結構悩んで」
「クソ、お前ホントに浮気してるんじゃないのか」
「なんでそうなるのよ!」
「ふざけんなよ!早いだなんだの!前の男はどうとかマジで失礼だかんな!」
「だって、もう少し」
「俺だってできるだけ、頑張って」
「下手くそだけどね」
「ふざけんな!クソっ!まじ許さねーぞ!お前!」
「下手だし、早いし!」


テーブルを蹴飛ばす、ユーメ


「クソっ!くそっ!」


ユーメは近くにあった本を手に、イケルに投げつける


「痛い!物とか投げないでよ」
「ウルセェ!お前だって言っていいことと悪いことがあるんだよ!」


イケルも怒りが込み上げてくる
二人は怒りの螺旋階段を上る昇る
昇り切った段は崩れ落ちた
互いに、怒りの螺旋階段を昇るしかなくなって


怒りが達した時にしか出せない言葉


「早漏野郎!」


ガタン!ドカッ!


ユーメはイケルの髪を掴んで
押し倒した
「キャ」
恐怖で、叫び声が詰まるイケル


「ざけんな、ふざけんな!」
女の身体を揺らす男
頭部の彼方で、殴るな殴るな、必死の声が呻く
怒りと理性が激しく格闘する
(言うなよ、言うな)
もう一言、性的侮蔑の言葉が出たら
確実に怒りが超えていく


泣キベソのイケル


「わ、私、もう!飛び降りる!」


身体の揺さぶりと拳の恐怖から混乱に落ちたイケルはユーメの拳を力の限りで振り切り、
1DKの部屋のベッドに乗り、窓を開けて身体をサッシ越しに浮かす
しばし呆然と見つめるユーメ


ヤバいマジだ


「待て!」



怒りの螺旋階段の昇る足が屋上に辿りいて、なお、怒り続ければ
屋上の先は・・・


・・・・


女の背中に必死に抱きつく男
「早まるな、わるかった、悪かったよ」
「もう死ぬ」
「3階じゃ死ねないだろ・・」


そのままベッドに引き戻す


そのままに、
した這いずり


「ユーくん、もっと、、もっと、して」
「うん」

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またおっぱじめちまった
二十才のサガだし、


怒りの屋上の先はベッドだったか
性的激情をSEXとかいう快楽劇で沈めた


25や69をグルグル、グルグル、螺旋しやがって
40分も前戯だけに費やしやがった
ユーメは訳も分からず涙が流れちまって、イケルの果実に愛垂らし続けたさ
流れ落ちる涙と唾液と愛液が重なりあって、愛のカクテルができたさなんて野暮ったいこというんじゃねぇぞ、
イケルも泣いたさ
二人して涙流しながら泣淫しましたよ
見ろよ
女は感じるどころか、ワンワン犬みてえに泣いちまってよ!
男は犬みてぇに泣きながらペロペロしやがってよ!
顔くしゃくしゃにしちゃって、まあ


男は自分の快楽は後回しで必死に時間かけて愛撫したってさ!
女はひでぇこと言っちまったってよ。ゴメンナサイなんて言いながらしっかり受け止めてさ!なかなか聴けねえ極上の泣き喘ぎなんかで応じて頂けりゃ39ってなもんじゃねぇか!


どうだい、どうだい、どうだい!!!


できんじゃねえかよ!
相手のこと想いやりやがってよ!!
一悶着あればできんだな
人間なんて素じゃ意地っ張りの見栄っ張りの探りっ張りじゃんよ!


剥き出しさらりされよ!
綺麗に化粧した可憐なお顔の華麗に施したその紅でナニ染めてる心はすっぴんだべ


むきだしひらりえちたまれよ!

 

 


わ ~messages~ ② イケル

2024-10-03 08:03:00 | 

宮前区の自宅
バスに乗った
運転手が終点の溝の口をアナウンスして
停車したバスから降りた

ユーメの住まいに向かう
田園都市線ではなくて南武線の武蔵溝ノ口に向かう

私の実家は少し不便で溝の口駅と宮前平駅または向ヶ丘遊園駅に行くことが可能だけど、どの駅も歩くと30〜40分くらいかかる
一番勝手が良いのは溝の口だから、利用頻度は最も高い
小田急線の方が都合が良い時は、向ヶ丘遊園か登戸を利用する

溝の口に来ると、ハタチになった私は立ち飲み屋街の情緒に惹かれる
しかし一人で行く勇気はないし、今度ユーメが来てくれた時に一緒に行ってみたいと思う

私は実家住まいだから、2人が会うのは専ら一人暮らしのユーメの家だ
関内だから、みなとみらいや中華街も歩いて行けるくらいだし、山下公園で氷川丸を横目に長閑に散歩したりする

ユーメは私と同じ年のハタチの男だから実家の女の家には、宿泊もできるわけなく、寄り付こうとはしない
交際が始まって9ヶ月程になるけど、1度しか東急寄りの川崎市には来ていない

・・・・

武蔵溝ノ口から南武線に乗って京急寄りの川崎市に向かう
川崎駅に到着すると乗換で京浜東北線に向かう
ホームに上がるとshilverにbaby blueの模様を施した車体が具合良く止まっていて、そのまま乗り込んだ
土曜日の15時を回った頃で車内はまばらで席に着くことができた

水色のLINEの電車の長尺のシートの端に座りながら、メッセージアプリを開いた

1通のメッセージが目に留まった
(和食と洋食どっちがいい?)

・・・・

ユーメと付き合う前に、3ヶ月程交際していた男性がいた
彼は36歳で私は19だったからダブルほどに齢は離れていた
彼は商社系の企業に勤めていてエリートの雰囲気を醸し出していた
私のアルバイトの同僚の紹介で知り合った人だった
何度かデートに行き、今このラインが運ぶ方角みなとみらいに行ったりもした
悪い人には感じなかったし、世間的に評価されているタイプの人間だと思った
付き合おう、と決めつけられた未来のような告白をされたが断らなかった

交際が始まると、彼はあるルールを提示した
食事をした時。彼との交際では全てが外食で割と高級なお店に連れて行ってくれた

彼は言った
「俺は女を甘やかさない男だ」

彼は食事代を全額奢るのではなくて、1割を私に支払わせた
彼が会計を済ませるが、そのあと私は彼に1割を支払う
1,000円や2,000円を彼に手渡した

このルール
最初はいいかもしれないと思った
それほど大きな負担にはならないし、毎回奢られるとこちらも気が引ける
一応支払いに加わったという既成事実が、こちら側にも過度の感謝を伝えるという仰々しさを省略させる

彼はある程度の年齢だったから、1割支払わせるというのは、私に気を遣わせすぎないための配慮だったのかもしれないし、
ただでさえ年齢に差があったからこそ、それによる上下関係を少しでも緩和させるための処置だったのかもしれない

二人のルールだった

6回目の食事で私はこのルールが面倒になった
と言うよりも、36歳の商社マンの話しはところどころに自慢が食い込んできて、俺はあの施設の建設に携わったとか、有名企業の社長とゴルフに行ったとか、19の私には煩わしさを感じるようになっていた

それに比例して1割ルールも億劫になった
最初は彼の心配りか交際を長く続けるための秘訣なのかな、と思ったが
1,000円を手渡す時には、

ちいさい男だな、と思ってしまった

「俺ならサファイアが特別価格で手に入る、どうする?1割だけどな」
宝飾品まで1割ルールにするのか
幾らくらいするんだろう
きっとこの男のことだから、見栄を切ってそう安価の宝石などは買わないだろう

10万で1万、20万なら2万、30万なら

19歳の私には結構な痛手だ

「結構です」
この頃には、私の態度も良くないニュアンスの仰々しさを帯びていた

・・・・

会計が11,000円だった
7回目の食事だった

「1,100円な」

野口英世の表情が物憂げに見えた、
100円を取り出す時には、
私の表情も物憂げだったに違いない

コインを彼の手のひらに落としたと同時に
別れを決めた

100円が私の手切金となった

・・・・

そのあとを誘われたが、今日は帰ります、と言い
田園都市線に乗り込んだ

車内である言葉が私に降りてきて
私はメッセージアプリの彼の登録名を

"100円の男"に変更した

・・・・

100円の男の最後のメッセージは
(和食と洋食どっちがいい?)

19の小娘から振られる36の男の心情を
私なりに配慮して

私は勝手に男の前から消えた

それから
2ヶ月ほどして
ユーメと出会った
気楽でいい
割り勘にしたり、その時に応じて
ルールなどない

今日もユーメに抱かれたなら
一緒に
あのラーメン店でコッテリを食べよう


今夜は私の奢りだぜ

 

 

 

to be continued
③100円の男