ウサポを先頭にルチカ、アユラ、ユーリが横一線に歩いて行く
H小学校を出て子供の足で20分ほど、乾の方角にミコルENはある
逆に巽の方向へ、同じく20分ほどの場にハミルENはあった
車道と歩道が区別されていない名もなき道を4人は歩く
ユーリは傍らに生えている猫じゃらしを左手で遊びながら歩いた
ウサポは軽快に飛ばした
ミコルENにユーリを連れて行くという、女主ミコルの期待に応えることができる
ミコルENのプロタゴ軍団たちは世界で行き場を失った者たちで、救い上げてくれたミコルは
絶対的母だった
学校は15時に終わったから、30分後にはミコルENに到着する
ウサポはミコルに'よくやったね'と撫でられる至福を想像して軽やかに飛んだ
「ウサポはやっ!」
アユラが吠える
「みんな早くピョン!あと5分くらいだよ」
人は100mを10秒で走れば、時速36kmだ
ウサギは時速70〜80kmで走る種もいるという
・・・・
ミコルENに遊びに行くことを決めたハミルENの子供たち
ウサポに誘われた3年生アユラと4年生ユーリに5年生のルチカを加えて、招待の翌日金曜日に早速ミコルENに向かう
大人たちがなぜかミコルENに行くことを止めようとした
寧ろ子供たちの好奇心に火を灯した
ただ少し、ルチカとアユラは未知の世界への通りを楽しんだが、ユーリはなにか重たい気持ちがしていた
「着いたピョン!」
「でっか!すごいマンション!」
アユラは興奮を隠しきれない
庶民派、低空を居城としているハミルENの面々には入城したことのないようなマンションだった
「やっぱ、やだな」
ユーリが呟く
「えっなに。ユーリ」
アユラが反応した
「だってこんな大きいマンション入ったことないし、怖いよ」
「そんなことないよ、行ってみようよユーリ。ウサポもいるんだし」
「うーん」
「ユーリ、とりあえず入ってみようか。嫌だったらすぐ帰ればいいさ。その時は僕も一緒に帰るから」
「う、うん、それじゃ」
年長者ルチカが場を説得した
常にルチカの言葉には強さと畏怖があって、その言葉には反駁できない
リーダーの資質はこの頃から示されていた
「行くピョン!」
褒めてもらいたい
ウサポが暗号を入力してガラスが開いた。4人はエレベーターに乗り込み、ウサポは最上階の18Fを押す。
流石のアユラも黙った。最上階の優雅に相応しい態度をとらないと、と子供ながらに弁えた
・・・・
「ただいまピョン!」
ウソポが玄関を開け、光が広がる
ミコルがいる
あの時、恋人に娘を譲ってしまった後悔の念を今、成仏させたい
今目の前に現れた
娘の背丈を確認してまだ間に合う、と
少女を私の腹で抱きしめ、おかえり、と
君の住処はココだと言いたい
「お邪魔します」