15病院受け入れ断る=救急搬送、61歳女性死亡-東京
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080219-00000045-jij-soci
もはや救急医療崩壊という状態であるが、誰がこのような事態を招いたのだろうか。
一つの原因は医師の不足であり、その背景には、厚生労働省が医師数のコントロールを誤ったことが挙げられている。これはこれで、改善していかなくてはならないが、医師不足は既に社会的な認識になりつつあり、改善への合意形成は可能であろう。
しかし、見逃されがちなもう一つの問題は、実は深刻である。
それは「救急医療で、何でも医師のせいにすれば良いと思っている愚か者が存在する」ということだ。そういう馬鹿は患者にもいるし、マスコミにも沢山いる。そしてそういう人間どもは、思い込みの「正義」を振りかざしては訴訟を起こし、病院の正常な業務を妨害するのである。
近年、各地で産婦人科医が訴えられる事例が相次いだ。また、先日も「綿飴を食べ歩きしていて転んで、割り箸が脳に刺さった」子供の親が不毛なイチャモンを続けている(とりあえず敗訴)ことが報道されている。
もちろん、医師は患者の救命のために最大限の努力を行うべきなのは事実だ。しかし、助からないものに努力をするのは、ただでさえ足りないリソースの無駄遣いでしかない。
また「救急の医師がそっけない」ことを「必死に努力していない」と患者は思いこみだが、医師も日常の業務でやっているのであり、淡々と事が進むのは当り前だと理解するべきであろう。病院内に患者を救うための怒号が飛び交い、医師が走り回る、というのは、ドラマの中の誇張された世界の見すぎである。
かく言う自分も、親を急な病気(いわゆる突然死)で失っている。
病院に着いた時、親は心肺停止状態で、医師はすでにサジを投げていた。そして「さぁ、肉親の方、とっとと死んだと認めて下さい」というような態度を感じたのも事実だ。それに対して「いや、そんなに簡単に諦めないでさ。他に、なんか生き返らせる方法はないのかよ。お前ら医者だろ」と思ったことも、正直に認めなくてはならない。
肉親の治療に対してそういう感情を持つことは、自分はむしろ自然なことだと思う。その感情を恥じるつもりもないし、恥じる必要も感じない。
しかし、その「自然な感情」と、治療の客観的な正誤とは、また別次元の話であることは、冷静に理解するべきであろう。まして医師に、自分と同じような動揺を感じて欲しいと思うのはお門違いだ。
医師は、あくまで「医師という職業の人間」であって、「神」ではない。全ての命を無条件に救えるわけではないのだ。単に自分の職業の範囲で出来ることをするだけの人間なのだ。
にも関わらず、結果が気に食わないと医師を訴える。医師が一生懸命でなかったのが悪かったと医師を訴える。それは、医師に対して過剰な期待を抱きすぎなのであり、クレーマーやモンスターペアレントと同じ人種のすることだ。
そして、そういう人間が存在すると、医師側もリスク回避を考えなくてはいけなくなるのだ。患者側が「受け入れてくれて頑張ってくれたんだから死んでも諦めよう」と思う患者ばかりであれば、病院は気軽に救急患者を受け入れるであろう。しかし、その中に一定数「受け入れたからには、助からなかったら病院の怠慢に違いないから訴えてやる」という人間が混じると、病院も受け入れる前に「助けられるかどうか」を吟味しなくてはいけなくなる。そして、確実に助けられる人しか受け入れたくない、と思うのは止むを得ないだろう。
つまり、最近の救急医療崩壊の原因の一つは、安易に医師を訴えるような連中なのだ。もちろん、医師を訴えること全てを否定はしない。中には本当に医師のミスや怠慢もあるだろう。
そういう事例は別にして、安易に「命は救える」と思い、安易に医師を訴える人間こそが、救急医療を壊し、そして
他の救急患者を殺している犯人なのである。
マスコミの中には、こういう連中を「正義の士」のように持ち上げるものもある。割り箸の件の親は、自分達の過失(割り箸をくわえたまま、子供を歩き回らせる)を棚に上げて、本まで出して医師への誹謗中傷を行っているようだ。
私は、こういう人たち(マスコミ・モンスターペイシェント)を支持する気に、まったくならない。
なぜなら、自分が救急医療を受ける立場になったとき、助かりたいからである。
今日もまた、どこかの救急患者が、こういう人たちによって殺されている。
私には、人殺しを支持する趣味はないのだ。
■秀逸
・
この事例を追っている。根本は産婦人科医逮捕・・(しゅーの部屋)
・
医療崩壊(うろうろドクター)
■追記
ブログを巡っていたら、コメント欄に興味深い情報があった。
http://blogs.yahoo.co.jp/gmy2266/2629848.html
以下、引用する。
●なんで急患の受け入れを断るの?
・(人員・設備が足りない…などの)物理的問題で、(受け入れると犯罪になってしまうケースがある…などの)法的問題で「受け入れ不能」だからなんです。
●なんで「専門外だから」が断る理由になるの?
・「専門外の患者を受け入れるのは犯罪」という司法の判例(奈良心タンポナーデ事件)があるからなんです。
●ベッドが無いなら、廊下で治療すればいいんじゃないの?
・「設備不十分な状態で患者を受け入れるのは犯罪」という司法の判例(加古川心筋梗塞事件)があるんです。
・そもそも、「ベッド」「ベッド」って言われてますけど、病院でいうところの「ベッド」は、心電図とか、酸素マスクとか、呼び出し用ボタンとか、それを管理する人員とか、それら全て「込み」ですからね。もはや「ベッド」というより「設備」と言ったほうが適当かも。
●応急処置してから、他の病院に移すのは駄目なの?
・「応急処置の後、他病院に転送するのは犯罪」という司法の判例(上に同じく、加古川心筋梗塞事件)があるんです。
こうやって、救急医療は壊されていくのだ。