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心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

約束の行方・・・vol.12

2013-02-05 16:52:19 | 約束の行方


“どうして??” 
私は驚きを隠せずに立ち止まったまま動けなかった


森下 総一郎 その人は
車の事などほとんどわからない私でさえわかる
有名な車から顔をのぞかせ
ニコニコしている。
しかし、一度会ったくらいで
ここに来られても私も困ってしまう
まわりの子たちは明らかに興味津々で 
“あの子だれ?のむらさん?
すごい車だわ
いやん、素敵な人”

なんてひそひそ話も聞こえている
それにしても、なんて目立つ人なんだろう 
“はっきり言っていい男 
でも私が迎えに来てもらうような相手ではない”

私は自分に掛けられた言葉も忘れて
客観的な目でその人を見つめ
近寄ろうかどうしようか迷っていた。 
動かない私にちょっと困った顔になりながら

“ごめんごめん急に来て”
と言いながら
ドアを開けこちらへ向かって歩いてきた。





その様子をどこで見ていたのか
同じクラスのいかにもお嬢さまを気取っている

白川 麗子が声をかけてきた

「あら、野村さん 貴女もお迎えが来るのね 
ねぇ、素敵な方じゃない?
ぜひわたくしに紹介してくださらない?」


ああ、嫌や嫌や
この手の女 こういうタイプの子
私、苦手やわ
それにしても、いつの間に近寄って来たん?
今までほとんど話したこともないくせに
馴れ馴れしく寄って来て
この子自分は誰からも好かれている 
どの男も自分に興味を持つに違いないって
思ってる
そんな風に心で思っていた矢先

総一郎は脇目も振らず
私の背中にそっと手を置き
車へとエスコートすると
何も言わずに車を発進させた


満面の笑みで総一郎を見つめ
次に私からの言葉を待っていた白川さん
ほほ笑み顔が
まるで般若のような恐ろしい顔へと
変わった
あの白川さんの
世にも恐ろしい顔と
あっけにとられた顔は
今思い出しても笑いが止まらないほど
爽快だった






少しニヤついてはいたが
私はどうにもこの状態が理解できず
黙りこんでいた
「絵里子ちゃん、どうして黙ってるの? 
もしかして怒ってる?」

沈黙に耐えきれず総一郎が口を開いた

私は率直に思っていることを聞く事にした
「いいえ、怒ってはいませんけど 
今日あなたがなぜうちの学校に
いらっしゃったのか?
なんのために
こうして私を乗せて走っているのかが
わかりません 
理由を聞かせてください。
そもそも私とあなたは、
迎えに来ていただくような間柄でもありません
第一、私の予定もお構いなしに
どこへ行こうとしているのですか?」


“そりゃそうだな” 
と一人頷くと総一郎は話しだした。
「僕はね、この間のパーティの時 
早いうちから君のことを
見つけて見ていたんだよ
お父さまとお母さまと一緒だと
思っていたが
叔父さま達だったんだね
まぁそれはいいとして
とにかくあの場所で
とってもかわいいお嬢さんを見つけて
僕は正直とても嬉しかったんだ
退屈していたからね


なんて言うのかな
“お嬢様気取りでない”とでも言おうか
いつも自分が一番で
なんでも受け入れられる
って思っている子が多いだろう?
そう
さっきのあの子のように 
僕はあの手のヒラヒラした感じの子が苦手でね
でも君は、人の話をちゃんと聞いて
自分の意見もはっきり言える
そんな風な印象があってね 
最初は、僕が勝手に感じただけだったけど 
少し話してすぐにそれがわかったよ
“この子はとても素敵な女性だ”ってね
でも、あの場所に少し疲れていたのか 
元気がなかっただろう?
本当はもっと話がしたかったけれど
気がつけば自分の事ばかり話していて
きっと君はうんざりしていたんじゃないかって
思ったよ
そのお詫びと
もう一度会って話したいという気持ちがあって
食事でもどうかと思ってね
デートのお誘いだったんだが強引すぎたね
ごめん


今日は、たまたま
仕事の都合で横浜へ来たので 
もしかしたら、会えるかもしれないと思って
学校前へ行ってみたわけさ
悪かったね
君の都合も考えず自分の都合と思いつきで
人のことをとやかく言えないね僕は
自分の都合でこんなこと」
そう言って少しさみしそうに笑った


この人素直に謝れる人なんだ
そんな風に言われて私は
“この人のことを少し誤解してた” と思った




“えっと”と言いながら
先ほどのことをまた思い出して 
私はプーッと吹き出してしまった

総一郎も、急に笑い出した私につられて
ニコニコしている
「あ、ごめんなさい 
えっとさっきのあの場面
あの子の顔を思い出したら
笑いがこみあげて来てしまいました。
でも、痛快でした! 
あ~すっきりした!!
いつも何人かで集まって
自分自慢のオンパレードを
やっている子達の中の一人なんです
私はそう言うの苦手で
というのか沢山でつるむのが嫌いで
一人が安心するというのか
本当の友達は
一人か二人いれば充分だって思っています。

で、この間のことですけど
本当のことを言うと
あなたのおしゃべり面倒くさいなぁ
と思いながら聞いていました。
ごめんなさい
あの時久しぶりの着物に
そろそろ疲れて来てて帰りたいなぁ
と思いながらも
叔父や叔母がどこにいるのか見つからず
とにかく座りたくて
あの場所を見つけてほっとした矢先に
あなたに声を掛けられて
仕方なく大人しく聞いていたんです。
あはっ

決してあなたが思ってくださったような
素敵な子じゃありませんよ
私は」
私の話を時に笑いながら、
時に前をじっと見据えて
何か考えながら聞いていた総一郎は
「いや、やっぱり
僕の思った通りの人だよ君は
あ、そうそう
今日の君の予定聞いてなかったよね? 
何かこの後
予定があった?
何せ僕は、自分勝手に
君を連れ出したんだからね・・・」
と言ってそれほど悪気もなさそうに笑っている


育ちの良さがそうさせるのだろうか
冷静に考えても
嫌味な感じは受けない


私は、少しだけ
怒った振りをしてみせたけど 
はっきり言って特別な予定などなかった。 

しいて言えば
あのカフェに寄って
啓太がいれば
そのままいつものように
部屋へ行き
いつものように
求め合い
離れられなくなっていたかもしれない

偉そうに、私の予定も考えず
などと言ってしまった手前
なんと言おうかためらっていると

「そういえば 絵里子ちゃん 
君、今彼氏いるの?」 

いきなりだった