普段シミュレーションもレイアウト設計も実戦的に取り組んでいる彼は、私とほぼ同じ年数仕事しているが、物理や半導体にはそれほど興味がないらしく、予想以上に難しいらしく、殆どできてなかった・・・
できない理由はどうやら、微分という量のありがたみを知らないためのようだ。
電圧Vが時間tと共に連続で変化する時、その変化の割合は、位置で言えば速度に対応する値で定義でき、実際的にはΔV/Δtである有限の時間差Δtの間に、平均的に同じ割合でΔV増減すると考えればよい。このΔVやΔtと、dVやdtとの違いをはっきりと理解していないため、ごっちゃにしている間違いが致命傷となり、誘導に乗って解けるはずのものも手が付かなくなっていたのだ。
dVはΔtを無限に小さくしたときのΔVの近づく値である。電圧vs時間の曲線(或いは直線)を描くと、各瞬間tごとの接線の傾きがdV/dtである。
言い換えると、Δtは例えば、ある時刻と別の時刻の間の差、t2-t1のことであり、ΔVはV(t2)-V(t1)のことである。t2-t1→0の極限で、ΔV/Δt→dV/dtの極限をもつ。
Δよりも、dを使った方が便利だと思っているが、これは、電圧Vや他の電気量が時間や関連するパラメータの簡単な関数で表せる時に、機械的に微分することで、必要な量の間の関係が見通しよく定式化できるからだ。一般的には各パラメータxiの微分dxiの重み係数(偏微分係数)つきの和になるが、通常一つだけのパラメータを変数と考えその他のdxi(i≠j)=0ととるので、普通にdf=(微分係数)×dxj。
計算機(シミュレーター)は当然、Δで計算しているのだが、微分するだけで見通しがよくなる例として、MOSのgmがある。
飽和領域で動作するときのMOSのgmはオーバードライブ電圧(Vgs-Vth)に比例し、または言い換えるとドレイン電流Idsの平方根に比例する。これは飽和領域のMOSの式を微分するだけでつかめることである。
積分方程式のdV=fdtなどという形をどうやって、f=dV/dtから求めるのか?というものでも、また悩むらしい。極限の取り方には一般的には制約があるが、通常回路で扱う極限では、あくまでも、dVとdtは独立単体で取り出してかけたり割ったりしても構わない量だと考えていい(微分の間の計算規則としてたいてい問題ない)。
あとは、合成関数の微分の公式が使えないのも、問題だ。
あるパラメータがxj=xj(v)のようにvの関数で、xjの関数であるf=f(xj)のvによる微分係数はというと? df/dv=(df/dxj)×(dxj/dv)を使って考察できる。このときも、微分dxを上の計算規則で単純に連結しているだけである。
このあたりの数学の基礎に自信の無いフレッシュマンは、
高校か大学の教科書で、一度良く考えながら、復習しておくと良いかもしれない。
改訂後は、図を増やして、
問題文をもっと噛み砕いた表現にして、殆ど誘導式にする予定だ。
でも、もっと工夫した問題にすることができないものだろうか?数学には依存しないで、試験結果の客観的判断を行う方法はあるだろうか?
複数の候補値(式、グラフ)を選択肢として与えて、それから選ばせるのがやはり妥当なのか?
普段、シミュレーターや仕事をくれる上司や社長にばかり考えてもらってばかりいると、スキルは付いても、自ら設計の仕事を提案・創造することができるようになれそうにない・・・と、私自身思う。
「シミュレーターに考えてもらう=回路の動作をシミュレーションして初めてどうなるか知る」
これでは、音楽のバンドを例に取ると、CDを聴いて、楽器の演奏をコピーすることをずっと繰り返しているのと同じ状態である。
誰もが、コピーからスタートするし、私も大学1年生のときに始めてドラムセットをサークル棟で触った頃は、ひたすらどうコピーするかが楽しみの中心だった。しかし、いい演奏を観たり聴いたりすればするほど、ドラムの場合は、ルーディメントといった基礎技術を学習経験しないと、これは適当な演奏になってしまうな・・・と感じるようになり、ひとりパラディドルなどの練習をインディペンデントにできるようにトレーニングをほぼ毎日部室が空いている限りやるようになったものだ。やってみて初めて、プロの演奏がいかにその部分がしっかりしているかがわかってもくる。
こういったトレーニングが、分析的・解析的アプローチに思え、もっと総合的にアプローチする方が優秀だし、自分はそっちに向いているという、実戦的経験だけをどんどん積んでいき続けることができる天才の方は別かもしれないが、
私は、経験を補いさらに経験の密度を高めるには、この分析的トレーニングが非常に役に立つと思うので、ずっと続けている。CMOSの設計についても、全く同様で、基本的態度は変わらないと思う。
楽器は買っただけで、見よう見まね聴きよう聴きまねで、時間をかけて覚えることもできるでしょう。ただし、現在の奏者は先輩の築いてきた基礎技術を知り、ある程度意図的に訓練することで、最短時間で独創レベルに達している人が殆どでしょう。我流だけでは、独創性のみで普遍性の部分がなく自己満足に陥る危険もあります。回路設計も、訓練や基礎知識の不足したまま、回路シミュレーターで毎日いろんな回路を作ってまね、独自に改良を加えてみればわかるでしょう。無駄が多く、正しい使い方にすら達せず、たまたまある条件では良い特性になるものが生まれたりしても、製品としては全くおぼつかないことばかりとなることが想像されます。私の場合、1年ほどしてすぐにこの壁にぶつかったため、正確で効率的な回路設計、その次に独創的なトライアルへと進むしかないと思いました。ただでさえ、大量な特許とIPが既に存在する中で、アナログ回路設計者として存在する意味は、我流の物まねのシミュレーターに依存した拡張では非常に薄いのではないでしょうか?
右脳で感じることは大切だが、左脳でしっかり自分を監視する能力が、優れた技術や芸術には基本的骨格となっていると、強く感じています。
確かに直観は非常に大事だけど・・・
言語的な左脳も鍛えた方が特だと思います。
もっと早くドラムを始めることができたら・・・とか、はじめからCMOS回路設計を専門に学部学科を選べていたら・・・とか感じる時もありますが、
21,22歳以降に初めてプロになっている方は結構いますし、過去は変えられません。
一つの技術を身に着けるときの生活感覚を掴んだ人は、新しい技術を身に着けるときの感覚や知恵を身に着けていくものです!
諦めずにやってみましょう、意外と楽しいのなら、続けて良いのでは?
自分自身そう思って続けていることだけですね。
あのイチローですら、「使命感からやっているという想いは無いですね!」といっていた・・・
そりゃあ使命感から仕事できる状態は更に充実しているのかもしれませんが?この点は残念ながら、いまだ私にはわかりません。
だから、いいんじゃないでしょうか?
自分が楽しめる限りやっていて。
できない理由はどうやら、微分という量のありがたみを知らないためのようだ。
電圧Vが時間tと共に連続で変化する時、その変化の割合は、位置で言えば速度に対応する値で定義でき、実際的にはΔV/Δtである有限の時間差Δtの間に、平均的に同じ割合でΔV増減すると考えればよい。このΔVやΔtと、dVやdtとの違いをはっきりと理解していないため、ごっちゃにしている間違いが致命傷となり、誘導に乗って解けるはずのものも手が付かなくなっていたのだ。
dVはΔtを無限に小さくしたときのΔVの近づく値である。電圧vs時間の曲線(或いは直線)を描くと、各瞬間tごとの接線の傾きがdV/dtである。
言い換えると、Δtは例えば、ある時刻と別の時刻の間の差、t2-t1のことであり、ΔVはV(t2)-V(t1)のことである。t2-t1→0の極限で、ΔV/Δt→dV/dtの極限をもつ。
Δよりも、dを使った方が便利だと思っているが、これは、電圧Vや他の電気量が時間や関連するパラメータの簡単な関数で表せる時に、機械的に微分することで、必要な量の間の関係が見通しよく定式化できるからだ。一般的には各パラメータxiの微分dxiの重み係数(偏微分係数)つきの和になるが、通常一つだけのパラメータを変数と考えその他のdxi(i≠j)=0ととるので、普通にdf=(微分係数)×dxj。
計算機(シミュレーター)は当然、Δで計算しているのだが、微分するだけで見通しがよくなる例として、MOSのgmがある。
飽和領域で動作するときのMOSのgmはオーバードライブ電圧(Vgs-Vth)に比例し、または言い換えるとドレイン電流Idsの平方根に比例する。これは飽和領域のMOSの式を微分するだけでつかめることである。
積分方程式のdV=fdtなどという形をどうやって、f=dV/dtから求めるのか?というものでも、また悩むらしい。極限の取り方には一般的には制約があるが、通常回路で扱う極限では、あくまでも、dVとdtは独立単体で取り出してかけたり割ったりしても構わない量だと考えていい(微分の間の計算規則としてたいてい問題ない)。
あとは、合成関数の微分の公式が使えないのも、問題だ。
あるパラメータがxj=xj(v)のようにvの関数で、xjの関数であるf=f(xj)のvによる微分係数はというと? df/dv=(df/dxj)×(dxj/dv)を使って考察できる。このときも、微分dxを上の計算規則で単純に連結しているだけである。
このあたりの数学の基礎に自信の無いフレッシュマンは、
高校か大学の教科書で、一度良く考えながら、復習しておくと良いかもしれない。
改訂後は、図を増やして、
問題文をもっと噛み砕いた表現にして、殆ど誘導式にする予定だ。
でも、もっと工夫した問題にすることができないものだろうか?数学には依存しないで、試験結果の客観的判断を行う方法はあるだろうか?
複数の候補値(式、グラフ)を選択肢として与えて、それから選ばせるのがやはり妥当なのか?
普段、シミュレーターや仕事をくれる上司や社長にばかり考えてもらってばかりいると、スキルは付いても、自ら設計の仕事を提案・創造することができるようになれそうにない・・・と、私自身思う。
「シミュレーターに考えてもらう=回路の動作をシミュレーションして初めてどうなるか知る」
これでは、音楽のバンドを例に取ると、CDを聴いて、楽器の演奏をコピーすることをずっと繰り返しているのと同じ状態である。
誰もが、コピーからスタートするし、私も大学1年生のときに始めてドラムセットをサークル棟で触った頃は、ひたすらどうコピーするかが楽しみの中心だった。しかし、いい演奏を観たり聴いたりすればするほど、ドラムの場合は、ルーディメントといった基礎技術を学習経験しないと、これは適当な演奏になってしまうな・・・と感じるようになり、ひとりパラディドルなどの練習をインディペンデントにできるようにトレーニングをほぼ毎日部室が空いている限りやるようになったものだ。やってみて初めて、プロの演奏がいかにその部分がしっかりしているかがわかってもくる。
こういったトレーニングが、分析的・解析的アプローチに思え、もっと総合的にアプローチする方が優秀だし、自分はそっちに向いているという、実戦的経験だけをどんどん積んでいき続けることができる天才の方は別かもしれないが、
私は、経験を補いさらに経験の密度を高めるには、この分析的トレーニングが非常に役に立つと思うので、ずっと続けている。CMOSの設計についても、全く同様で、基本的態度は変わらないと思う。
楽器は買っただけで、見よう見まね聴きよう聴きまねで、時間をかけて覚えることもできるでしょう。ただし、現在の奏者は先輩の築いてきた基礎技術を知り、ある程度意図的に訓練することで、最短時間で独創レベルに達している人が殆どでしょう。我流だけでは、独創性のみで普遍性の部分がなく自己満足に陥る危険もあります。回路設計も、訓練や基礎知識の不足したまま、回路シミュレーターで毎日いろんな回路を作ってまね、独自に改良を加えてみればわかるでしょう。無駄が多く、正しい使い方にすら達せず、たまたまある条件では良い特性になるものが生まれたりしても、製品としては全くおぼつかないことばかりとなることが想像されます。私の場合、1年ほどしてすぐにこの壁にぶつかったため、正確で効率的な回路設計、その次に独創的なトライアルへと進むしかないと思いました。ただでさえ、大量な特許とIPが既に存在する中で、アナログ回路設計者として存在する意味は、我流の物まねのシミュレーターに依存した拡張では非常に薄いのではないでしょうか?
右脳で感じることは大切だが、左脳でしっかり自分を監視する能力が、優れた技術や芸術には基本的骨格となっていると、強く感じています。
確かに直観は非常に大事だけど・・・
言語的な左脳も鍛えた方が特だと思います。
もっと早くドラムを始めることができたら・・・とか、はじめからCMOS回路設計を専門に学部学科を選べていたら・・・とか感じる時もありますが、
21,22歳以降に初めてプロになっている方は結構いますし、過去は変えられません。
一つの技術を身に着けるときの生活感覚を掴んだ人は、新しい技術を身に着けるときの感覚や知恵を身に着けていくものです!
諦めずにやってみましょう、意外と楽しいのなら、続けて良いのでは?
自分自身そう思って続けていることだけですね。
あのイチローですら、「使命感からやっているという想いは無いですね!」といっていた・・・
そりゃあ使命感から仕事できる状態は更に充実しているのかもしれませんが?この点は残念ながら、いまだ私にはわかりません。
だから、いいんじゃないでしょうか?
自分が楽しめる限りやっていて。