体ごと振るフライパン春隣 木暮陶句郎
音の無き刻をつないで流れ星 同
湯たんぽの命と思ふ湯をそそぐ 同
宇宙みな回りて轆轤始かな 同
毛の国の起伏を滑る初日影 同
水音の透けてをりたる谷若葉 同
太陽のかけらも運び蟻光る 同
水と土ぶつけて轆轤始かな 同
体ごと振るフライパン春隣 木暮陶句郎
音の無き刻をつないで流れ星 同
湯たんぽの命と思ふ湯をそそぐ 同
宇宙みな回りて轆轤始かな 同
毛の国の起伏を滑る初日影 同
水音の透けてをりたる谷若葉 同
太陽のかけらも運び蟻光る 同
水と土ぶつけて轆轤始かな 同
薄氷の星にとけゆく水の音 松本龍子
傷口のやうに桜のあふれをり 同
仰向けに星をつかみし兜虫 同
落葉焚く龗神を鎮めけり 同
月光を背負ひて登る夜の蝉 同
枯れるもの枯れを尽くして命継ぐ 渡辺誠一郎
三月の海が薄目を開けるとき 同
打水やうしろの影を濡らしては 同
原子炉はキャベツのごとくそこにある 同
星するり体を抜けるスキーの夜 谷原恵理子
再び会ふ夏蝶すでに傷つきて 同
鞍馬山降りひとの世にかき氷 同
眉にふれ淡海にふれ春の雪 同
椿落つ大地に伝ふ波の音 同
雪の鯉音なき水に生きてをり 同
春暁や尿する音に寝たふりす 菊池洋勝
春爛漫ナースに糞を褒めらるる 同
風船にたとふ腹腔鏡手術 同
菜の花や逆さに立てるマヨネーズ 同
種のある葡萄と後で聞かされる 同
朽ち果てし舟を根方に藪椿 黛執
奥つ城に隣れる田より打ちはじむ 同
枯山の枯れの極みに水の音 同
星よりも水のきらめく聖夜かな 同
春がきて日暮が好きになりにけり 同
ぜんまいの月の中まで伸びあがる 野中亮介
風船の捕まえたがるやうに飛ぶ 同
春の月桶をあふれて天にあり 同
銀漢の尾に触れて鳴るオルゴール 同
空耳に返事などして涼新た 中西夕紀
刃となりて月へ飛ぶ沖ノ島 同
信号に止まり狐と別れけり 同
海の日を車中に入れて帰省かな 同
竹伐りの竹曳く道も竹の中 同
戦場に繋がる海や野分雲 朝吹英和
靴下の穴に始まる大枯野 同
年輪の声聞く霜の夜更けかな 同
音階の行きどまりにて鶴凍つる 同
光陰の矢に刺し抜かる晩夏かな 同
てのひらをこぼるる刻よ冬すみれ 野﨑憲子
石を積むこと息をすること涼し 月野ぽぽな
空缶に闇のはげしき修司の忌 小西瞬夏