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現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。

俳句誌「豆の木」No.26

2022-09-10 | 俳句

いつかつかう箱うつくしく春の家  こしのゆみこ

光る字を押すと湯の沸く雪夜かな  田島建一

心音をふたつ並べて月を待つ  月野ぽぽな

砲台にあぢさゐのありありとある  宮本佳世乃

茅の輪くぐる脱獄のよう  室田洋子

後輪のもたもたとして曼珠沙華  大石雄鬼

見返しを銀河と思ふ漢詩集  岡田由季

こいのぼり方向音痴でも愉快  小野裕三

 


岡田耕治・句集『使命』現代俳句協会

2022-03-20 | 俳句

てのひらを一度上向け春耕す  岡田耕治

散る花の中を昇れる花のあり  同

天道虫声を立てずに笑いけり  同

よく空を飛べる形に羊歯飾る  同

落蝉やもう一度飛ぶ形して  同

どこまでも正解のない秋の空  同

てのひらを落ち着かせたる冬林檎  同

もう少し電車にいたい秋の暮  同

 


永田満徳・句集『肥後の城』文學の森

2022-03-20 | 俳句

風を呼び風に従ひ凧上がる  永田満徳

薄氷の縁よりひかり溶けてゆく  同

大波に攫はるるごと昼寝かな  同

黙すまで聞き役となる涼しさよ  同

鶴の声天の一角占めにけり  同

天草のとろり暮れぬ濁り酒  同

年迎ふ裏表なき阿蘇の山  同

落葉踏む音に消えゆく我が身かな  同

過去のごと山重なりて夕霞  同

夏蒲団地震の伝はる背骨かな  同

争ひの双方黙る扇風機  同

白鷺のおのれの影に歩み入る  同

追はざれば振り返る猫漱石忌  同

春の雪いづれの過去のひとひらか  同

巌一つ寒満月を繫ぎ止む  同

不知火や太古の舟の見えてきし  同


佐藤文香・句集『菊は雪』左右社

2021-07-16 | 俳句

桃の葉の裏へ這ひ入る星あかり  佐藤文香

夕野分こころ拾つてゆきにけり  同

岸までを夜空の満たす朧かな  同

ひとつある夕日を冷やす地平かな  同

かしはばあぢさゐ祈りは喉をのぼりくる  同

冬のみづひき惑星の夜と夜を結ぶ  同

ゆめにゆめかさねうちけし菊は雪  同


「鷗座」2021.7

2021-07-04 | 俳句

千円の野口英世と梅雨じめり  松田ひろむ

夜の街夜の男の夏の風邪  同

COVID禍文月の妻を抱きあげて  同

 

新名句入門「新型コロナウイルス感染症と俳句11 」より

ウイルスにたっぷり効かす山葵漬  松田ひろむ

ウイルスに入口出口五月闇  同

みなみ風海坂藩にウイルスは  同

コロナウイルス肥後守などよく研いで  同

ウイルス禍茅の輪を何度くぐっても  同

拙句 「ウイルスと共に翌なき春を生く  五島高資」もお取り上げ頂き心よりお礼申し上げます。