いつかつかう箱うつくしく春の家 こしのゆみこ
光る字を押すと湯の沸く雪夜かな 田島建一
心音をふたつ並べて月を待つ 月野ぽぽな
砲台にあぢさゐのありありとある 宮本佳世乃
茅の輪くぐる脱獄のよう 室田洋子
後輪のもたもたとして曼珠沙華 大石雄鬼
見返しを銀河と思ふ漢詩集 岡田由季
こいのぼり方向音痴でも愉快 小野裕三
いつかつかう箱うつくしく春の家 こしのゆみこ
光る字を押すと湯の沸く雪夜かな 田島建一
心音をふたつ並べて月を待つ 月野ぽぽな
砲台にあぢさゐのありありとある 宮本佳世乃
茅の輪くぐる脱獄のよう 室田洋子
後輪のもたもたとして曼珠沙華 大石雄鬼
見返しを銀河と思ふ漢詩集 岡田由季
こいのぼり方向音痴でも愉快 小野裕三
てのひらを一度上向け春耕す 岡田耕治
散る花の中を昇れる花のあり 同
天道虫声を立てずに笑いけり 同
よく空を飛べる形に羊歯飾る 同
落蝉やもう一度飛ぶ形して 同
どこまでも正解のない秋の空 同
てのひらを落ち着かせたる冬林檎 同
もう少し電車にいたい秋の暮 同
風を呼び風に従ひ凧上がる 永田満徳
薄氷の縁よりひかり溶けてゆく 同
大波に攫はるるごと昼寝かな 同
黙すまで聞き役となる涼しさよ 同
鶴の声天の一角占めにけり 同
天草のとろり暮れぬ濁り酒 同
年迎ふ裏表なき阿蘇の山 同
落葉踏む音に消えゆく我が身かな 同
過去のごと山重なりて夕霞 同
夏蒲団地震の伝はる背骨かな 同
争ひの双方黙る扇風機 同
白鷺のおのれの影に歩み入る 同
追はざれば振り返る猫漱石忌 同
春の雪いづれの過去のひとひらか 同
巌一つ寒満月を繫ぎ止む 同
不知火や太古の舟の見えてきし 同
桃の葉の裏へ這ひ入る星あかり 佐藤文香
夕野分こころ拾つてゆきにけり 同
岸までを夜空の満たす朧かな 同
ひとつある夕日を冷やす地平かな 同
かしはばあぢさゐ祈りは喉をのぼりくる 同
冬のみづひき惑星の夜と夜を結ぶ 同
ゆめにゆめかさねうちけし菊は雪 同
千円の野口英世と梅雨じめり 松田ひろむ
夜の街夜の男の夏の風邪 同
COVID禍文月の妻を抱きあげて 同
新名句入門「新型コロナウイルス感染症と俳句11 」より
ウイルスにたっぷり効かす山葵漬 松田ひろむ
ウイルスに入口出口五月闇 同
みなみ風海坂藩にウイルスは 同
コロナウイルス肥後守などよく研いで 同
ウイルス禍茅の輪を何度くぐっても 同
拙句 「ウイルスと共に翌なき春を生く 五島高資」もお取り上げ頂き心よりお礼申し上げます。