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現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。

高山れおな・句集『百題稽古』現代短歌社

2025-05-02 | 俳句
千年の影引く影や姫小松  高山れおな
さわらびや何を握りて永き日を  同
玉苗のふるへたふとし水は空  同
地球より溢れ荒川雪の夜を  同
昭和百年源氏千年初鏡  同
我が狐火も霜夜は遊べ狐火と  同
息白き別れは星の匂ひかな  同
時の日の湖光りつつ眠る 同
挽歌降るべし雲雀ほど高きより 同
 

林誠司・句集『海光』(俳句アトラス)

2025-02-24 | 俳句
鎌倉の人の涼しき胡坐かな 林誠司
母の日や遠くまあるく土星の輪 同
江の島へ向かつて水を打ちにけり 同
人は座し水はいそげり春の山 同
わたつみへ雲かぶせたり富士の秋 同
 

福本啓介・句集『保健室登校』文學の森

2025-02-16 | 俳句

吃音のあとの静寂に小鳥来る  福本啓介

月朧抱きしめられてゐたりけり  同

昼月と共に過ごせり保健室  同

小春日の昨日に我を置いて来し  同

さくら咲き記憶喪失終はりけり  同 

 


「小熊座」2025年2月号

2025-02-08 | 俳句

また回り出す年越の換気扇  高野ムツオ

無辺へと千手を垂らし菊枯れる  同

不立文字風に渦巻く落葉こそ  同

天の狼咆哮雪が降り出せり  同

冬の蝿昨日の朝日今日も浴び  同

終末に備え固まる黒海鼠  渡辺誠一郎

数え日や終わらぬ旅の旅衣  同

産声を忘れ宣戦布告かな  同


「対岸」2025年2月号

2025-02-08 | 俳句

障子貼りゐていつの間に囲まれし  今瀬剛一

冬の星糸で繋いで贈らむか  同

瀧凍り始める寒さかと思ふ  同

ショール巻いて母が見えなくなりしかな  同

やがて会ふはずの枯野の二人なり  同

瀧深く隠して山の眠るなり  今瀬一博

鮟鱇の腹の白さよ雪催  同

目瞑れば吾も大柚冬至風呂


大木あまり・句集『山猫座』ふらんす堂

2025-02-05 | 俳句

ペンギンの胸の広さや春隣  大木あまり

霜の花忘るるために歩きけり  同

鎌倉の水羊羹と無常観  同

マスクして逢ふや双子座流星群  同

立ち泳ぎするかに揚羽飛ぶことよ  同

入院も旅と思へば冬うらら  同


大屋達治・句集『大屋達治集』(俳人協会)

2025-01-28 | 俳句
くらい水すきとほらせる花火かな  大屋達治
大年の街の音聞く橋のうへ  同
大山に脚をかけたる竈馬かな  同
海に出てしばらく浮かぶ春の川  同
泳ぎより立つとき腕を翼とす  同
日蓮が妙と叫びし初日かな  同
捨てし田を豊葦原へ還しけり  同
 

鈴木総史・句集『氷湖いま』ふらんす堂

2024-11-15 | 俳句

薔薇咲くや抜歯のあとのあをぞらを  鈴木総史

とんばうや蝦夷にあをぞらあり余る  同

背広にも晩年のあり漱石忌  同

薬飲むみづのまばゆし風信子  同

実石榴や触れればくづれさうな家  同


藺草慶子・句集『雪日』ふらんす堂

2024-11-08 | 俳句
山上の雲の厚さや田水張る  藺草慶子
水底のかくも明るく冴返る  同
水渡り来し一蝶や冬隣  同
片雲の遠く光りて夏きざす   同
光陰のなだれ落ちたるさくらかな  同
 

石田郷子・句集『万の枝』ふらんす堂

2024-10-04 | 俳句
火柱の見えしと思ふ白雨かな  石田郷子
暗がりに人詰めてをる里祭  同
寄せ合へる椅子のまちまち天の川  同
冬林檎剝けば夕べの月の色  同
万の枝けぶらふバレンタインの日  同
 

増田まさみ・句集『かざぐるま』霧工房

2024-10-04 | 俳句
にんげんの回転木馬さくら散る  増田まさみ
何処へも戻らぬひとよ冬花火  同
手花火の手の入れ代わるニルバーナ  同
空蝉にまだ陽の残る浅きゆめ  同
二つ折り厳禁とあり天の川  同
 

月野ぽぽな・句集『人のかたち』左右社

2024-08-10 | 俳句
街灯は待針街がずれぬよう  月野ぽぽな
真水汲むように短夜のFM  同
松茸に太古の空の湿りあり  同
まだ人のかたちで桜見ています  同
太陽は遠くて近し芒原  同
手袋に旅立ちの指満たしけり  同
 

坪内稔典・句集『リスボンの窓』ふらんす堂

2024-08-07 | 俳句

ころがしておけ冬瓜とこのオレと     坪内稔典

長崎に住もう枇杷咲く五、六日     同

リンゴにもオレにも秋の影ひとつ     同

ねじ花が最寄りの駅という日和     同

夕べにはすっかり晴れて栗ご飯     同


「零文学」第十三号(群馬県立太田高等学校文芸部)

2024-08-06 | 俳句

友情にイルカが跳ねる時を待つ     十文字潤

夕焼けが捨てた光に救われて     栗原知也

誰が夢を空へ紡ぎて五重塔     星野煌太


佐怒賀正美・句集『黙劇』本阿弥書店

2024-08-06 | 俳句

地平の目まだ半びらき真葛原     佐怒賀正美

乗るによき父の背いつか天の川     同

地球まだ知られぬ星か磯焚火     同

亀鳴くや天の沖には磁気嵐     同

くねりだす街の石みち鳥渡る     同

青嵐や骨のみで立つ電波塔     同