いそのまさはるの教育間欠泉

中学校教師を定年退職し、現在は大学非常勤講師をつとめる立場から、折に触れ教育課題への発言を間欠泉の如く吹き上げます

多くの中学生が欠席した大阪府チャレンジテスト

2017年01月19日 | 日記

 過日行われた大阪府の「チャレンジテスト」に生徒の多くが欠席した中学校があることがマスコミで報じられた。

 で、読売テレビの夕方の番組である“ten”でもこの問題を取り上げていたが、MCである局アナやほとんどのコメンテーターが、ある中学校で生徒からの「内申に影響があるのか」という質問に、教師が「ある」と答えたことを取り上げて、教師を批判し、「テストとは自分の苦手なとろを明らかにするものだから、教師は『内申に影響する』などどいわず、生徒に受けるように励ますものだ」という趣旨の発言をしていた。

 そもそも大阪府がチャレンジテストなるものを実施したのはなぜか。

 文科省が実施する全国学力調査は、本来の主旨を外れて各都道府県が全国で何位であるかということばかりが注目されている。常に「低位」にある大阪だが、教育委員会が全国平均より低い学校の校長を集めて叱咤激励してみたが、大きな変化はおきなかった。で、業を煮やした委員会が考えたのがチャレンジテストだったのである。さらには、そのチャレンジテスト対策に独自のテストを実施する市町村まで現れた。学校で生徒たちは、定期テスト以外に市町村ー府ー国といった数多くのテストを受けなくてはならず、疲れ切っているというのが実態なのである。

 確かに、テストには「自分が分からないところを明らかにする」という面があることは否定しない。が、大阪府のチャレンジテストは、そのような「きれいごと」でおこなわれているのではないのだ。府のHPにも掲載されているが、府がチャレンジテスト実施の意義として掲げていることのなかに、「調査結果を活用し、大阪府公立高等学校入学者選抜における評定の公平性の担保に資する資料を作成し、市町村教育委員会及び学校へ提供する」ということがある。ありていに言えば、各学校で定期テストを基に作成された絶対評価である内申点がチャレンジテストの結果と合致しているかを点検するとしているのである。こうなれば、範囲の定めれた定期テストの点数より、範囲のないチャレンジテストの点数が低い生徒の内申点は下がらざるをえない。教師が生徒の質問に答えて「内申に影響する」といったことは間違いではないのである。また、こうしたことを踏まえて、進学塾の中には「内申点を下げない」ために、「チャレンジテスト受けない」ことを生徒に勧めているところもあるといういう。

 全国学力調査やチャレンジテストめぐって大阪の学校現場はかように疲弊しているのだ。

 マスコミがチャレンジテストの欠席者の問題を取り上げるのなら、その背景にあるこうしたさまざまな問題まで掘り下げるべきではなかったのか。「テストとは~」という表層のきれいごとや、ましてやお決まりの教師批判ですます"ten"に、単に政治問題だけでなく、あらゆる分野における今日のマスコミの劣化を見る気がしたのは決してぼくひとりではないだろう。