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ぐるぐる・ぶらぶら

歌舞伎と映画と美術と読書の感想

【展覧会】江戸絵画の華 <第1部>

2023-01-09 23:04:53 | アート・文化
離れておおきくみてよし、近づいて細部みてよし。

「松竹梅群鳥図」松竹梅、に、八十八の鳥がお出迎え。
谷鵬「虎図」の毛並みに唸り。
水上景邨「牡丹に唐獅子図屏風」に口元ゆるみつつ畏敬も感じる不思議。

若冲「鳥獣花木図屏風」、とても近くでゆっくりと見れた。
多少見知っていたはずだったけれど、発見も多かった。
これからも、みてもみても、発見は尽きないに違いない。
何故こんなに穏やかなのだろう、微笑み感ある、無垢の動物たち。

鶴、ほか、墨でのしごと、筆づかいの妙、かたちの妙。
この方は生涯にどれくらいたくさん描いたのだろうと思う。

屏風の名品、肉筆浮世絵、みどころ尽きず。

ブライスコレクションから出光美術館コレクションへ。
持っていらした側、受け継いだ側、それぞれに大きな感謝と敬意を。

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江戸絵画の華 <第1部>若冲と江戸絵画
出光美術館
2023年1月7日~2月12日
http://idemitsu-museum.or.jp/exhibition/present/

(2023.1.9)


【展覧会】京都・智積院の名宝

2023-01-08 22:46:29 | アート・文化
いずれも眼福ながら。

感じ入ってしまった「楓図」。
風の気配、ざざという葉擦れがきこえ、少しひんやりした気温を感じる。
立ち止まり熟視し、戻って観、座って観、その前を立ち去りがたく。
ほか「桜図」「松に秋草図」「松に黄蜀葵図」「雪松図」が並ぶ空間には
いつまでも身を置いていたかった。

経文もすばらしくて、「金剛経」の清廉に胸うたれ。
「阿字観」もよかった。
「刺繍法華経」にも違う感性でフラグ立った(クラフト)。興味津々。

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京都・智積院の名宝
サントリー美術館
2022年11月30日~2023年1月22日
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2022_5/index.html

(2023.1.7)


【展覧会】李禹煥

2022-09-23 23:38:57 | アート・文化
禅問答みたいな空間とか。
瓦か石垣のような床面とか。

なんだか楽しかったなぁ。

空間に「問い」がふわふわと浮いている。

正面から応答できそうなときもあれば、
つかみ損ねてあれれとなるときもある、ような。

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李禹煥 国立新美術館開館15周年記念
国立新美術館
2022年8月10日(水)~11月7日
https://LeeUFan.exhibit.jp/
https://www.nact.jp/exhibition_special/2022/leeufan/

(2022.9.23)


【展覧会】ゲルハルト・リヒター展

2022-09-23 23:30:29 | アート・文化
ゲルハルト・リヒターは、名前は知ってるけど実はよく知らなかった。
実物をたくさん見て、すごいとは思った。
でも消化できてないので感想が書けない。

塗り重ね、色を重層的に交差させる表現。
場の記憶のような視点。
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ゲルハルト・リヒター展
https://www.momat.go.jp/am/exhibition/gerhardrichter/
https://richter.exhibit.jp/
東京国立近代美術館

(2022.9.23)


【展覧会】日本美術をひも解く─皇室、美の玉手箱

2022-09-11 22:27:06 | アート・文化
粒選りな。

美術館らしい、高い天井の展示スペースを、そぞろ歩いて見ていくのだけれど、
なぜか、
どちらかのお宅にお邪魔して「ウチで保管しているものなんだけど」と
次々と気安く、解説してもらいながら、所蔵品を見せられているような
そんな気配を感じたのはなぜだろう。

絵巻の名品展示がいくつもつづいててすごいし、
細部にわたって美しく繊細な画、工芸 にも目を奪われる。
源氏物語画帖(伝 土佐光則)の人物。
七宝蜻蛉河骨図香炉(川出柴太郎)の取手の細工。
挙げたらきりない。

若冲の動植綵絵は正面から見れる高さの展示で、つぶさに見れてよかった。

書はふだんきれいだなと思う程度なのだが、今回は小野道風の筆の味わいに打たれた。

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特別展「日本美術をひも解く─皇室、美の玉手箱」
東京藝術大学大学美術館
2022年8月6日~9月25日
https://museum.geidai.ac.jp/exhibit/2022/08/bi-no-tamatebako.html
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tamatebako2022/

(2022.9.11)



【展覧会】装いの力―異性装の日本史

2022-09-11 22:25:41 | アート・文化
観終わって、裡が波立つ。ざわっとする。
越境しきれなかった事例(現実やものがたりの成り行き)を見たからか。
ココ・シャネルが突破したことや何か、
装い以外の場面でおそらくずっと越境は試みられ続けていて、
完全客観では見れないところがある。興味深い構成。

アート系統では
中世の日本の作品(小碓命、とりかへばや、巴御前、阿国、若衆、稚児など)と、
20世紀以降の表現と。

ベルばら、リボンの騎士、ひばりくん、異性装といっても理由も自己納得も
異なるのだ。そうか。読んだ当時は子供だったからよくわかっていなかった。

歴史的経緯については、何度かの公権による禁止のことなど。
明治期の新聞・雑誌記事の内容が興味深い。

禁則破りで逮捕、という記事は却って、
遮られたかつてある程度ふつうにあったのかもしれない越境を思わせる。
経済その他の事情によってか、アイデンティティかは様々のよう。

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装いの力―異性装の日本史
松涛美術館
2022年9月3日~2022年10月30日
https://shoto-museum.jp/exhibitions/197iseisou/

(2022.9.4)



【展覧会】ボストン美術館展 芸術×力

2022-09-03 23:44:15 | アート・文化
「×力」とは? 時の権力との関係性なのであった。

日本から渡ったものが多くはあるけれど、
11世紀~18世紀の幅で東西様々、重厚な作品を取り上げている。

作品を作らせてしまう財力であったり、
作品が必要とされる背景、制作の契機であったり、
そもそも描かれている姿や光景の贅や規模であったり、
権力の影響はいろいろ。

そういう環境ではなくなった今の時代。

振り返ることが可能なのは、作品が見れる形で残っているから、
ということに改めて思い至ったりした。

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ボストン美術館展 芸術×力
Art & Power: From Pharaohs to Daimyōs. Masterworks from the Museum of Fine Arts, Boston
東京都美術館
2022年7月23日~10月2日
https://www.tobikan.jp/exhibition/2022_boston.html
https://www.ntv.co.jp/boston2022/

前回、空飛ぶ吉備真備と阿倍仲麻呂はいつ見たのだったか。
相変わらずつるみ具合がかわいい。
今回はたっぷり。

(2022.9.3)



【展覧会】ボテロ展 ふくよかな魔法

2022-07-03 21:59:54 | アート・文化
膨、なインパクトの迫力たるや。

モノが内側から外に押し出す圧、表面張力?…とも少し違う。

果物を題材とした静物は、どう見ても果物なのになぜか
身体の一部が描かれているかのように感じられたりする。
バナナは大腿、オレンジは二の腕、ヘタは臍…(妄想)。

随所の濃いピンク(ヴァチカンのバスルームの石鹸の色)が
お茶目に思うのは私が日本の人だからで、現地の方の受け取りはまた
違うのかもしれない。

無表情の描くのも手法なのだという。

ふくよかと、無表情と、ルネサンスなど古典からの題材引用と。

そうして描かれた作品は、意味を押し付けず(あるいは解釈をゆるさず)、
くらしの苦しみや思わぬ運命がさまざま起こりながら流転していく時間の、
一瞬を、ただ切り取って留めているよう。
南米出身作家の文学や映画の感性と通じると思うのは頭を働かせすぎか。

切り取ること、ボテロのまなざしの、それは哀切なのか糾弾なのかは
わからず、慈しみのようなものがあるのかもしれない。

洋梨が好き!

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ボテロ展 ふくよかな魔法
Bunkamura ザ・ミュージアム
2022/04/29~2022/07/03
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_botero/

(2022.7.3)



【展覧会】没後50年 鏑木清方展

2022-05-02 23:45:22 | アート・文化
うつくしい、やさしい。
季節とくらし。ひとの貌。

ものがたりから題を採った作品は、切なかったり怖かったりも。
野崎村のお染の繊細な表情。

ゆめのように滑らかでしろい肌にあかみさす頬、やわらかく結う黒髪。

大正昭和に描かれたそれらは、その時点ですでに消えつつあった明治の
気配を名残惜しむものでもあったようで。

とにもかくにも圧倒される、着物の文様と素材と織・染(特に染)の数々。
江戸小紋と縞、絞が多い生活の着物のシック。
町娘のきもののすみずみのおしゃれ。
長着からのぞく半襟や襦袢との色合わせ、襟なしでまとう夏もの、
帯揚、帯締もいろいろ。

暮らしの道具、季節の道具、食、植物。

正月の女の子は髪に鶴と亀を挿し。宝来の柄行。

意外にも、建造物の表現が印象に残る。屋根、軒先。屋内の柱。

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没後50年 鏑木清方展
東京国立近代美術館
2022年3月18日~5月8日
https://www.momat.go.jp/am/exhibition/kiyokata/#section1-2
https://kiyokata2022.jp/

(2022.5.2)


【展覧会】ふつうの系譜

2022-05-02 23:13:21 | アート・文化
一昨年気になっていて行けなかった「ふつうの系譜」展、
再構成で再開催とのこと。

ただ観るだけでもじゅうぶん楽しく美しい出展の数々。
加えて、「ふつう」とは何か?
という問いかけが寄せる波のように(やさしく)やってきます。

正統派とか多くに支持されてきた表現、大きな流れとして
保たれてきたものや、その隙間にあって気づかれにくかったもの、
新しい表現のかつての奇想が伝播と再現によってふつうになったもの。

キャプションが時々可笑しい。愛がこぼれている。

「敦賀コレクション」すばらしく。

岸恭「四季花卉図屛風」の多彩な緑。
曽我二直庵「柳枝鷹図」の墨で描かれているおなか。もふりたい。
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ふつうの系譜 「奇想」があるなら「ふつう」もあります─京の絵画と敦賀コレクション
府中市美術館
2022年 3月12日~5月8日
http://fam-exhibition.com/futsu/

ミュージアムショップの奥のコーナが多方面に延びていて目がハート。

(2022.5.1)


【展覧会】よみがえる正倉院宝物

2022-02-27 01:16:50 | アート・文化
正倉院宝物の再現模造。
ひとつひとつゆっくり拝見。ためいき。

自然由来の部材、染料、絶滅や絶滅危惧で、手に入れるのが
困難なものも少なからず。
それでも制作の各段階の技術の担い手の方々が今はまだいて、
再現が為されている。
現代の再現は、構造も含めた忠実な再現で、構造の把握には
21世紀の技術が適用されている。
今の時代だからできることもある。

センシングと3Dプリンタで、似せたものはもしかしたらいずれ
成形できるようになるのかもしれないけど、それは違う。
コピーじゃない。
人の手わざによる再現であって、もとのものと同じではない。
作品なのである。

個人的に興味が強い染織。
龍村「七条織成樹皮色袈裟」の一見無作為に見える彩の交錯の織り。
川島「小菱格子文黄羅」よくよく見ないと判然としないくらい繊細な菱。
私のかさついた指先が触れたらひっかけて台無しにしそうな細い糸で
織り出される布は平らか。すごいなぁ。
納税として納められた布は、均質でないことそのものも再現している。

器物制作のプロセスが分かる展示もよかった。

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よみがえる正倉院宝物 ―再現模造にみる天平の技―
サントリー美術館
2022年1月26日~3月27日
https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/25146
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2022_1/

(2022.2.26)


【展覧会】ミロ展―日本を夢みて

2022-02-21 00:05:05 | アート・文化
初期から晩年まで時系列でミロ作品を総覧。
各作品に付された詳細な解説とともに、表現の変遷がつぶさに。

初期の作品は画面全体が強いトーンながら、多色を用いているのに
調和がある。こういう描き方もしていたのかと思う。

生涯を通じて表現の工夫に飽くことがない。
浮世絵や大津絵、玩具、民藝との接点。墨、書。

よく知られた細い描線の表現に至るあたり、
情報量が減ってきた、とか、音楽的だなと思ったのだけれど、
その後《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》を観るに至り
「情報減ってないぞ」と思い直した。
たとえば森の中に立って、全方向に多様な音を聞くようなのだ。

詩と絵の越境。
私はフランス語は分からないから、そもそも意味を取れない記号なのだ
けれど、フランス語圏の人から見るとまた違うインパクトなのだろう。
ミロの絵画表現が象形文字や漢字と似て見えることの意味について
この展覧会で理解が進んだ気がする。
ミロの脳の中で起こっていたことを想像してみたりする。

スペイン内戦など容易ならざる時代を生き抜けて来た方、
少なくとも展示の中でみた、ご本人の人となりはチャーミングで、
瀧口修造はじめいくつもの「仲良し」の楽し気な様子になごむ。

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ミロ展―日本を夢みて
Bunkamura ザ・ミュージアム
2022/2/11~2022/4/17
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_miro/

(2022.2.19)


【展覧会】文様のちから -技法に託す-

2022-01-10 00:34:54 | アート・文化
「文様から技法を探る」の展示には単体でも見どころがあふれる装束と裂が、
「技法から文様を探る」では読めば読むほど手の込みかたに唸る器物が、
次から次へと差し出されて垂涎が止まらない。

視覚に供される美は、物理的方法としての技術で実体化される。
いったいどれだけ、どのようなプロセスで誰がどれだけどう関わって
どんな技術が折り重なってここまでのものに至るのだろう。

備忘メモ:

#3の紅浅葱段籠目草花模様唐織と#4の紫浅葱縹朱段秋草模様唐織は
見ても見ても見足りない。

#9古代裂手鑑 何かに使われていた裂をきれいにほどいて伸して
大事に貼り集めている。

#13縮緬地せせらぎあやめ模様友禅小袖 裾と肩口の花菱の赤と黒がモダン。

#16薄浅葱地槍梅鶴亀模様直垂 槍梅の意匠のインパクト。三番叟用。

#25茶練貫地亀甲松竹梅折鶴模様腰巻 ぴんと張った糸運びは一点の緩みもない。

展示室4の饕餮を表現した青銅器の数々。3千年ものなど。

展示室5は百椿図(賛の集め方がすごい)と初公開「邸内遊楽図」は若衆茶屋もよう。

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文様のちから -技法に託す-
根津美術館
2022年1月8日~2月13日
https://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html

(2022.1.9)


【展覧会】生誕120年記念 篁牛人展~昭和水墨画壇の鬼才~

2022-01-09 00:09:47 | アート・文化
麻紙の白に繊細な描線、
フジタを受け継ぐ肌あい、腿や二の腕の充実。
さらさらとしていながら重量感がある身体。
衣裳や装身の珠や布の洗練。

人物の切れ上がった目は表情に富むのと同時に静かでもあって、
赦している、という感じがする。
誰かをではなく自分を赦しているようなのだ。自己受容。
それを見ることは、自分を赦しているひとの傍に居るのと似た心地良さがある。

梅や菩提樹、様々な樹は、人物のなめらかな肌とつるりとした表情と
対照的に荒々しく奔放で原始生命を思わせる。

「天台山豊千禅師」が特に印象深く。
人物の表情。樹は菌のコロニーのよう。

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生誕120年記念 篁牛人展~昭和水墨画壇の鬼才~
大倉集古館
2021年11月2日~2022年1月10日
https://www.shukokan.org/exhibition/

(2022.1.8)



【展覧会】民藝の100年

2021-11-29 00:00:26 | アート・文化
「民藝」。
組成から活動スタイルの確立、戦中、戦後と時系列的な過程を縦軸に、
柳宗悦を始めとするたぐいまれなる才知・感性と探究活動を横軸に
モノとことばと行動記録から全体が浮かび上がってくる。

観終わったら「すごい。なんだこの人たち」とつぶやくしかない。

展示品、蒐集品・創作いずれも、かっこいい。
数多の民具・民画からかっこいいものを拾い出したのだ。選別力。
かっこいい、に加えて何でしょう、これを"カワイイ"とは言いたくない、
擬音でいうと「ほっこり」「ふくふく」とか、陶器には特に、
観ればなんとも愛おしい感覚が生じる、という共通項。

朝鮮、台湾、沖縄、アイヌ、に関する視座は、それら文化への憧憬に、
当事者性から離れていることの自覚と内省も併せ持っていて、じくじくと来る。

美術館(展示)・出版・流通、地方のモノ・人をつなぐ、新作民藝による
技術・文化保全と経済活動化…と見ていたら、発酵デパートメントさんの
活動が想起されました。
(と思ったら特設ショップの書籍コーナーに日本発酵紀行が)。

フォントにまで着眼する柳宗悦、
吉田璋也という人の厚みに驚愕。
テクノロジー系の2人が参画していたからこそ、という解説も興味深かった。

技術という要素の関わり方。
モノづくりだけでなく情報の扱い・視覚効果等々、今の時代に観るからこその
凄みというのもある。

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柳宗悦没後60年記念展 民藝の100年
100 Years of Mingei: The Folk Crafts Movement
東京国立近代美術館
2021年10月26日~2022年2月13日
https://www.momat.go.jp/am/exhibition/mingei100/
https://mingei100.jp/

常設展も民藝運動と関連する展示コーナーあり。

上記とは関連しませんが
常設展の「音が聞こえる」(だったかな)テーマ展示の
伊砂利彦の型絵染の一連の作品が眼福でした。

(2021.11.28)