
今日は映画の第2部「不在」第3部「帰還」。
恋人ギィーが2年の徴兵に行くため、プラットホームに出るシーン。
これが恋人達の<今生の別れ>になる起点になる場所。
お店とプラットームの入り口の扉は、マドレーヌの色グリーン。
この映画の監督ジャック・ドゥミ監督は細部に渡って色彩で、
ストーリーの中にその後を暗示する布石を入れている。

そしてギィーが不在となって2カ月後、ジュヌヴィエーヴは
妊娠した事を知る。
不安で押しつぶされそうになる17歳の女の子がいる。
母親の雨傘屋を手伝いながらも、ギィーを想う日々。
手にはグリーンのタオルが握られている。
この母子は潰れそうなお店の状況に為すすべもなく暗澹と
した日々を過ごしている。
その心情を表わしているかのように、ジュヌヴィエーヴは母と同じ色の洋服。
そしてギィーの子供を妊娠した事を言えないでいるジュヌヴィエーヴ。

とうとう妊娠が母親に発覚。
その上、母親の経営能力の無さから税金滞納で、もう差し押さえ寸前。
ジュヌヴィエーヴは渋る母親に手元にある宝石を売る事を承諾させる。
17歳の小娘がここで初めて生きてゆく現実に直面し、
困窮を乗り切るためにドライに決断していく過程の始まりとなる。
そして、お金持ちの中年の宝石商にジュヌヴィエーヴは一目惚れされる。
ここで、既にジュヌヴィエーヴは現実と向き合っている事を指示している色。
それが、この真っ白な色で表した映像。

その上、お腹の子供は自分達の子供として育てよう。というトントン拍子の求愛。
困っている時に王子さまは徴兵でいない。
代わりに、愛してもいない別な王子が現実の全てを満たしてくれると言う。
愛と現実を生きていく事を秤にかけた時に、ギィーへの愛は希薄になっていく。
そして「人生を台無しにする気などない!
あの人がいない事がこんなにも重荷になるなんて」と、母親に言った時、
ジュヌヴィエーヴは愛していない王子さまと結婚する事で心の決着をつけた。
ギィーの戦地からの辛い状況を切々と語る手紙に戸惑いながらも、
別れの言葉も言わず、結婚してシェルブールを去りパリへと行ってしまう。
このシーンもすでに鮮やかな色彩はなく、心がここにはないと語っている。

兵役を終え帰郷したギィーには恋人も唯一の肉親の伯母もいなくなってしまった。
だがマドレーヌの賢さと健気さに、共に人生を歩むため自分のガソリンスタンドを買い、
夢に描いていた温かい家族をつくった。
数年後パリに帰る道すがら、雪の中をシェルブールのギィーのガソリンスタンドに
偶然立ち寄るジュヌヴィエーヴ。
傍らにはギィーの子、フランソワーズ。

ここで昔の恋人同士は再会。なんとも言えない表情の2人がいる。
ジュヌヴィエーヴが「ここは暖かいわね」と言い言葉を交わした後
「あなた、幸せ?」と訊く。ギィーは「幸せだ」と答える。
そして車の中のフランソワーズに会うか?と言うと、
ギィーは「いいよ」と首を振る。
車から見えるフランソワーズのコートの袖口から見える色は
ギィーの色である青なのだ。
これがジュヌヴィエーヴのギィーへの想いの残像なのかは
分らないが、よくよく見ないと見過ごしてしまうシーンだと思う。
ジュヌヴィエーヴの「あなた、幸せ?」という問いかけの中には、
今でも自分に対しての想いがあるのか訊いてるように感じれる。
ギィーが「幸せだ」以外の言葉が返ってくれば、ジュヌヴィエーヴにとって
自分の結婚の選択は正しかったと思う事が出来るからじゃないだろうか。
これで本当の意味でのギィーとジュヌヴィエーヴの
「心の決着」がついたのではないだろうか。
実は一つこの映画の泣き所がある。
それはギィーの一人息子の名前が「フランソワ」
2人が恋人だった時に、子供は女の子で名前は「フランソワーズ」にしよう
と言いあっていた名前。
本当に恋は曖昧で分らない事だらけです。
結婚だって、そうだと思います。
スリル満点です、結婚ってものは。。。
今回でこの映画を観たのは3回目ですが、こんなに無駄なものが一つもない
映画はないと思わされました。
全てのセリフが歌になっているけど、ミュージカルとは一線を画している。
ジャック・ドミー監督がフランスのはずれの港町シェルブールに行った時、
町の人々の話す言葉が歌っているように聞こえた事から、
この「シェルブールの雨傘」が出来たと云う事でした。
この映画はあまりにもジュヌヴィエーヴ役のドヌーブ(当時19歳)が
美しすぎるのと、映像の美しさ、歌ってる言葉の美しさに、うっかり
本質の部分を見逃してしまう恐るべし映画です。
名画ですが、最近は置いてるビデオ屋さんを見つけるのが大変でした。
ストーリーは書いてしまったので申し訳ないですが、
一度これを踏まえて観て下さい。gumrieお薦めです♪

ギィは青色。
ドヌーブは、青色(ギィ)から赤色(母)そして白色へ遷ろう。
マドレーヌは、本来は緑色で、ギィを引っ張り挙げる時は、オレンジ色で自分を鼓舞し、ラストシーンは本来の緑色に戻っているのですね。
ドヌーブは「恋」を求め、マドレーヌは「人を愛し」、ギィは「家庭を愛し」たとも見えますね。
その一瞬が、ふたりの人生の上で、どれだけ救済になるか。
その再会の偶然もすごいですが、
つい先日、記事を書いて、色々と考えた事を、
より深く掘り下げた記事を排毒させて頂けてよかった!
しみじみと考えながら拝読しました。
有難うございます。
実は、こちらのブログ、「シェルブールの雨傘」を検索してた時、出会っていました。
パーソナル・カラーについての考察、「あ、そういう事だったのか」と、目からウロコでした。
何だか読み込みの深さが凄くて、コメント躊躇してしまいました。
では、こちらから一つ「お返し」を。(笑)
これも僕が気付いたのではなく、ブログのリンク先の方が書いておられたものですが。(汗)
「ブルックリン」でエイリッシュが身に付ける水着、カーディガンの色はイングランドのナショナル・カラーの淡いグリーン。
ラスト、グリーンのカーディガンを纏っていたのは、アイルランド系アメリカ人として生きていく覚悟を示したものなのかもしれません。
知ってらしたら、ゴメンナサイ。(汗)
僕のブログにリンクを貼らして頂いてもOKでしょうか?
歳喰っても粗忽者は変わらずなんです。
失礼しました!