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Feelin' Groovy 11

I have MY books.

善良な無知を、ぼくは憎みます

2009-02-19 | 
  どうやらぼくたちは、
  知りたくないことにかんしては無知のままでいることができるという、
  便利な能力を与えられているらしいのです。

  善良な無知を、ぼくは憎みます。
  だから、せめて自覚していたいと思うのです。
  自分たちの生活が、どういう自然破壊システムの上に成り立っているのか。
  ノン・ギルティでないことをわきまえておきたい。
  その上で、自分にできることをやっていきたい。
                (『宇宙を孕む風』片山恭一著 光文社)



本文は、やってももう間に合わないんだけど、
といった内容がつづくのですが。。。

とにかく自然破壊のことだけでなく
狭いところでは学校の教室の中であったり会社の中であったり、
広範囲でみれば日本の社会のしくみであったり、
歴史を含めた世界のしくみにもあると思いますよね、「善良の無知」が。

今すぐできるのは自覚的であること。
そして発信すること。

いいなあとか、そういうんじゃなくて・・・

2008-12-08 | 
  「でも、夜がこんなに暗いってことを東京の人にどんなに説明しても、
   うまく説明できないの。いいなあとか、星がきれいなんでしょうとか、
   そんなふうにいわれちゃうの」いいなあとか、そういうんじゃなくて、
   暗いってことだけ伝えたいのにな。 
           (『ジャージの二人』長嶋有著 集英社 太字:groovy)


今だったら落ち着いて読める。
もう少し若いときだったら飽きて途中で投げ出していたかもしれない。
何も起らない淡々と綴られたお話だった。

読んでいたら『風の歌を聴け』と同じ印象だった。
内容はもちろん全く違うし
洒落た言い回しなんかが入っているわけでもないけれど
起ったことを書き連ねていけば
彼らの置かれた状況を一番把握することができるとでもいうような。
そうどこかで(最近どの作品だったかパっと思い出せず・・・後で補填)
村上春樹さんがカフカの『流刑地にて』のことを言っていたような感覚を受けた。

 いいなあとか、そういうんじゃなくて、 暗いってことだけ伝えたいのにな。

そのあるがままの状況だけが伝わってくる作品。

パラレル、じゃない。

2008-11-24 | 
長嶋有さんの本を立て続けに読んでます。

今回は『パラレル』。

前奥とかパラするとかの言葉遣いが面白かったり、
「なべてこの世はラブとジョブ」なんて七五調で言われたりすると
なんだか名言のような気がしてしまうセリフが出てきたり、
はたまたテトリスの面白さを私なりに真剣に考えてしまった本でした。

そこここにハマる場面があるのですが、
紹介は1つだけにしておきましょう。。
きっと他の方がとりあげてくれるだろう名場面は除いてw

結婚式で教会にて新郎新婦が退場する場面。。。


   痩せた女が電子オルガンをひき、二人が退場する。
  オルガンの音色は隈なく響いた。よくみると両側の壁に
  ボーズのスピーカーが設置されている。
   再び立ち上がり拍手をつづけながら見送ると、出口の扉の上に
  大きく「非常口」の表示。拍手しながら、皆一瞬そこをみたと思う。
  僕の目は釘付けだった。これはなにかのメタファーなのか。
  汝と汝はどこへ脱出しようというのだ。
                (『パラレル』長嶋有著 文藝春秋)


こういう日常的な観察眼、私は好きですねぇ。。。

そうそう
この本『パラレル』ってタイトルなのに
表紙の装丁の4本の線が最終的に交わっちゃったりしているのも
意味深でいいですねぇ。。



そろそろなんじゃないか

2008-11-11 | 
芥川賞をとった『猛スピードで母は』を読もうとしたら
一緒に「サイドカーに犬」が収められていた。

昨年だったか映画化されていたので
タイトルだけは知っていたけれど
観ていないし、それが長嶋有の原作だったなんて知らなかった。

本文で目に見えるような印象的な場面があるので
そういうところは映画でよく表現されているんだろうな、
と想像する。

私の気に入ったのは終盤。

   「薫もそろそろなんじゃないの?」と弟はいった。
   私はうろたえた。「そろそろ」というのが結婚を
   意味すると気付くのに少し時間がかかった。
   結婚のことだと気付くと、むしろ私は安心した。
   それよりもっと別のなにかが「そろそろなんじゃないか」という気がする。
   (『猛スピードで母は』より「サイドカーに犬」長嶋有著 文藝春秋)


なにがそろそろなのか。

いろいろ考えたあげく、
主人公の薫が洋子さんに最後に会ったときにもらった、
RCサクセションのテープを聴けるのが、
そろそろだってことに、私の中では落ち着いた。

当時は小4。
たぶん薫は歌を理解できなかっただろう。
でも今の薫なら彼の歌が身にしみるはずだ。
作中登場する「いい事ばかりはありゃしない」の歌詞を借りるならば
そろそろ「何も変わっちゃいない事に気がついて、
坂の途中で立ち止まる」時期だということ。

映画でココはどう表されていたのかな。
省略されてたりしてね。

「いい事ばかりはありゃしない」→歌詞



LIFE IS NOT FAIR

2008-11-11 | 
主人公が近所の小学生の運動会のかけっこを見て、思う場面。

   スタートラインが横一線ということだって、
  ほんとうはめったにないんだ、と菜穂は思う。
  最初から差がついたまま走りださなければならないことは、
  世の中にたくさんある。
  でも、その代わりゴールだって同じじゃないから、
  1人ずつ違うんだから---------それを信じているから、
  おあいこなんだよ、と笑ってうなずく。
        (『少しだけ欠けた月』季節風 秋より
           「よーい、どん!」重松清著 文藝春秋)




この本は秋の12編が収められていて
どれもこれも普通の日常にありそうな話なのに
どれもこれも泣けてしまう。

あまりにも、うま過ぎて
すっきりし過ぎていて
なんだか物足りなかった。

国語の教科書に載ってるような話ばかり。。