夜の日本列島を人工衛星からみるとひときわ輝いている。宇宙へ光線を放ってもほとんど永遠に吸収されるだけだからそのエネルギーは無駄に捨てられているということになる。美星って町ではそんなことに気づいて街灯に傘をさしている。必要な明かりの大部分は夜道でつまずかないためのものだから。
生物は「闇」をも糧にしている。夜のイネに 5分間光をあてると生育が阻害される実験がある。私のような不自然な深夜系哺乳類にはなんらかの成長障害がでているのだろう。
experience:
中京大学教授・成定康平 工学博士>
「光害っていうのは光そのものの影響と考えると、照明装置から出てきた光が環境だとか天空だとか明るさとか、そういうものに対して影響があります」
サーチライトやネオン、車のヘッドライトなどに眩惑されて起きる事故のほか、例えば星を頼りにする渡り鳥たちが街の灯りで方向を間違えたり、また、海亀が浜辺の明かりによって産卵をしなくなったりするそうです。
加えて…。
「光が漏れていることによってエネルギーが無駄になってるわけですから、最終的には地球温暖化にも影響する」
そうです。
過剰で無駄な光は、地球温暖化を促進する要因にもなっています。
衛星から見ると、地球上で特に日本から宇宙に放出されている光が一際多いのが一目瞭然です。
ちなみに、その日本の電気代は…。
なんと、年間およそ200億円に上ります。
「日本は光を捨てている国である」
これだけではありません!
日本人の主食であるお米の稲にも悪影響を及ぼしているんです。
<奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科・島本功 教授>
「稲の場合は光が当たると、ホルモンを作るのを邪魔してしまう。花を作るために必要な遺伝子を働かせなくして止めてしまう。5分、真夜中に当たってしまうと、弱い光でも影響が出るという結果がある」
夜、街灯や屋外照明施設などの光が当たると、稲などの植物は活動を停止してしまい、花が咲かなくなります。
こうした光による被害に困っている農家もあるんです。
そこで、光害対策を進める自治体も増えています。
すでに22の自治体で街灯の数や形を規制する条例が作られ、補助金を支出しているケースもあります。
東京都八王子市。
ここでは、住民運動が条例制定の原動力となりました。
<八王子市・伊藤康男さん>
「みんな怖かったそうですよ、赤い火柱が立つように」
運動の中心となったのがこちらの伊藤さん。
きっかけは、パチンコ店が放つ強力なサーチライトでした。
<記者>
「すぐ付近には住宅がありますね?」
「むこうは団地ですから…病院ありますからね」
「病院が近くにあるんですか?」
それまで夜は真っ暗だったこの一帯。
店のサーチライトに加え、煌々(こうこう)と輝くネオンに鷹や農作物への被害、何より安眠妨害を訴える声が相次いだのです。
「目の前でやられた方たちは怖がって夜も眠れないという状況だった。“自分たちの夜は自分たちで取り戻せ”と」
運動が功を奏し、3年前、八王子市でもサーチライト規制を含む光害防止条例が制定されました。
現在、光害を規制する条例は福井県や香川県でも検討されていますが、19年前、全国に先駆け光害条例を設けた自治体が岡山県にあります。
町おこしならぬ星おこしで、『星の郷』をアピールする美星町では、至る所で…。
星のマーク!
流星のオブジェ!
土星…みたいなオブジェ??
<美星町の住民>
「光公害条例、はい、知っています。CO2なんかの削減にもなるんじゃないかなと思います」
(Q.光害知ってますか?)
「光害、あー、ハイハイハイ」
美星町の人は、都会人よりもずーっと地球環境の変化に敏感です。
天文台で有名な美星町。
当初は綺麗な星空を守るために、アメリカのモデルを参考にして条例を作りました。
<美星天文台・綾仁一哉 台長>
「昔はもっと星々は身近にありました。闇雲に明るくするだけじゃなくて必要なところは明るくして、その一方で夜には星空があるんだ、ちょっとした工夫でそれを取り戻すことができるだ、と」
天文台長の綾仁さんによると、防犯上どうしても必要な街灯の角度が問題だと話します。
「水平より上には光が行かないように、必要なだけの明るさはありますから。上へ光を出す必要は全然ない訳ですから」
下方向だけの照明にすることで、消費量は半分以下。
宇宙に漏れる無駄な光を抑え、防犯面でも十分な明るさを確保できるといいます。
(Q.日本は光害対策の後進国?)
「まだまだこれからなんじゃないかと思いますね。光害っていうのを環境に対する害の1つとして、段々と認識されていけばいいかなと思いますね」[MBS VOICE 2008/01/17]
私が特に気になっているのは、駅前やショッピング街などでの過剰なライトアップ。最近では民家も派手にやっていたりします。
LED光源なら白熱電球よりは消費電力が相当低いですが、個数と点灯時間を考えると相当エネルギーを食ってるものと・・・。
飾り照明を巻きつけられた街路樹を昼間目にすると、どこか痛々しくて目をそむけたくなります。