昨年秋から作業していた"Tree Sauna"がオープンした。
Instagramにも載せているので写真はそれを見て貰えば良いけど、少しストーリーも含めてもっと詳しく書こうと思う。
はじめてサイレントリバーに行ったのは4年ほど前。
「新しいプロジェクトを考えているからキャンプ場で打ち合わせしよう」と呼ばれた時だった。
数年使われていなかったキャンプ場にサ室や炊事場を新設したり、各所修繕の計画を話し合った時「いつか、ここにTreehouseを作りたいんだよね」と檜の林の前で聞いたのでした。
心のどこかで"出来たら良いけど、現実にならないかもしれない"と思いながら「めっちゃいいっすね!」と半ば適当に答えた気がする笑笑
サ室を作り炊事場も作り、運営は3年を過ぎていた。
ある日「あのTreehouseやるよ。健太郎、打ち合わせしよう」とパースを見せてもらった。
もちろんパースでは納まっている。書くのは簡単だ。でも実際作るとなると脳みそは目に見えたものを作るモードに解像度を高めていかなければならない。
しかも図面もパースはおおよそであり、書かれている木の配置は適当だった。
谷尻さんの言葉を一つ一つ拾った。
「水平を浮かせたい」
「ファンズワース邸」
「ガラス張りだったらいいよね」
「不安定の安定」
「緊張の中の安心」
そんな言葉を頭に浮かべ続けていた。
施工に向け、ツリーハウスビルダーチームと打ち合わせを重ね、彼らの知見を借り、使える樹木と位置を探していった。
ツリーハウスビルダーチームにはベースとなる鉄骨を依頼した。
私達はそこにツリーハウスらしくない床を作りたいと思っていた。ツリーハウスをイメージすると、トムソーヤの小屋の様になる。
谷尻誠の思い描く浮いた水平はそれでは無いだろう。
素材のこと、床材の太さは話したけど、細かな事は何も話していないに等しい笑
「いい感じにやっといてよ」
彼は私に余白をたっぷりくれた。
変な事はしないよね、と信じてくれていると良いように解釈して考えた笑
あまり重くしたく無いけど耐えなきゃダメだし、劣化して欠損が生まれても芯があれば、と思い、檜の90角にした。
この時点で屋根の見付けは90ミリにしたいと思っていた。
2層の床を終え、屋根に取り掛かる時に問題があったが、そのおかげでまたディテールを考え直せた。アクシデントはチャンスでもある。
結果的に良かったので、問題の事は置いておこう笑笑
4人が入れるサウナと樹木に合わせて屋根のサイズを決めた。
写真を送ると「もっと、目一杯大きく出来ない?」と返ってきた。
屋根の大きさや重さを考えて樹木の負荷を減らすために決めていたけど「もーいいや、ここまできたらやっちまおう」と腹を決めた笑笑
そうなるとサウナのガラス面積が気になりだした。
パースでは一面壁、ベンチ面の下部も壁、ドアにも枠があった。
屋根が雄大に伸び、視界が狭くなるのに壁も視界を遮るとなると、綺麗に見えるイメージが湧かなかった。
写真を送ると「全部ガラスにしたいな、出来る?」と返ってきた。
もうここまできたらやるしか無い笑
やったろうじゃ無いか、と燃える笑
作り手の人が見ていたら考えてみて欲しい。
全てがどうやって出来ているのだろう?と。
この話の通り正確な図面は無いのだ笑笑
都度写真で確認はしていたが、ほとんど交差点で右が左か、の確認。
どうやって作りますか?なんて事はない笑
任せてくれたと言えば任せてくれた。
放置といえば放置だ笑笑
階段も任せてもらったのでファンズワース邸の階段に想いを馳せ、浮かせる様な連続性を感じる様に作ってみた。
自然の中でその場に合わせて作っていたので、沢山の障害が起きた。
スムーズに行ったことなんてない。
頭の中は「谷尻誠ならどうする」を考えていた。
結果的に彼のイメージに届いたのか、または超えたかどうかは分からない。
「ヤバいね!すげーじゃん!」なんて褒めてくれる人ではない笑笑
ただ完成写真を送った時「あやうくていい」とだけ貰えたメッセージが僕には合格印のように思えた。
私は時々「建築はジャズだ」と表現する。
これが最もジャズな建築だと思う。
図面とパースはあったけど、ライブで音を合わせながら正解を探る。僕はこう解釈するぜ、と音を返せばじゃあこんなのはどうだい?と戻ってくる、音が上がっていく感覚だ。
だからなんだ?と言われたらそれまでだ笑笑
これは私の快楽だけでしかない笑笑
迷惑極まりない、余計なお世話と言えばそれまでだけど、建築には型も正解もない。
今回は谷尻誠と関わるスタッフ、仲間と共に形にしたストーリー。
多分この建築はこの方法でしか出来ないだろう。
全てが図面に書かれていたとしたら、嫌になるだろう笑笑
もしこれを読んで興味が湧いたら是非見てきてほしい。
こんなプロセスを含めて見てもらえたらきっと、もっと楽しいだろう笑
そんなTree Saunaのストーリー。
興味が湧いてくれる事を願って書いて見ました。