オーナーからの一言です
工事も構造的な部分から次第に意匠的な部分になってきました。これまでの工事の中で、関心したもの、驚ろいたことなどトピック的なものも送らせていただこうと思います。
まずは、大黒柱
150年という時間の中で柱や梁は絶えず力を伝えあってきました。それぞれの屋根や荷物、部材どうしの力、風雨による力、地震による力です。これらの力によって、建てられた当時はまっすぐだった柱も次第に曲がってきました。今回移築に際し建前から柱梁が組みあがっていくと、古民家ゆえの組み立ての難しさがありました。それは、大黒柱の納めです。梁と組立土台に立てると写真のように位置が合いません。初めて見たときは測量間違いで柱と土台が合わないのかと思いました。まさか、こんなに太い柱が曲がっていたとは思いつかなかったのです。しかし、古材を使った移築再生では柱が長い時間の中で受けた力で曲がっていることもあるのです。百戦錬磨の棟梁たちはこれまでの経験から慌てず大黒柱だけ直接コンクリートの基礎に乗せて、土台の長さの調整で柱の位置を微妙に調整し曲がった大黒柱を設計通りの位置に納めました。新材を使った新築建屋であれば設計通りに組み立てができます。しかし、古材を利用した再生建築ではそれぞれの部材の状況に合わせて、構造と同様に柔軟な施工となるのです。
梁の養生
30cm×30cm以上の太さがある立派な梁です。是非見てほしいと思うくらいです。それぞれの梁の形は丸太を手斧で整形したものなので綺麗な長方形ではありません。この妻部を銅板で養生します。銅板の形はそれぞれの梁の妻部の形で、ひとつひとつ違います。銅板も初めは銅色に輝いていますが、次第に渋く変化を見せています。新しいものが時間とともに古くなるのではなく、次第に落ち着きとともに風格を見せ立派になってくる。民家再生の醍醐味のひとつだと思います。