「周知」を動詞として使うとき、「周知する」と「周知させる」の2通りの言い方が使用されています。質問掲示板では、「周知する」は誤りで「周知させる」が正しいという回答も見られます。そこで、「周知する」と「周知させる」について調べてみましたので、メモしておきます。
1 辞書に書かれている「周知」の意味(デジタル大辞泉)
世間一般に広く知れ渡っていること。また、広く知らせること。「―の事実」「―の通り」「運動の趣旨を社会に―させる」
2 1をもとに考える
「運動の趣旨を社会に周知させる」という例文があるので、「周知させる」は正しいということが直ちにわかります。それに、「周知」の意味を1つ目の「世間一般に知れ渡っていること」の方だとすると、その状態にする、という意味で「周知させる」を選ぶことになります。
しかし、「周知」の意味を2つ目の「広く知らせる」の方だとすると、「周知する」としなければ、「〜させる」の意味が二重になってしまいますから、「周知する」とすべきです。
結局、「周知する」でも「周知させる」でも構わないのではないでしょうか。
3 「周知する」と「周知させる」の使用状況
日本語コーパス「少納言」で「周知」の動詞としての使用状況(件数)を調べてみました。結果は次のとおりです。《少納言へのリンク》
※単位:件
法律 白書 広報誌 国会 他 計
周知させ 7 5 0 6 24 42
周知せ 0 0 0 1 5 6
(周知させる・計) 7 5 0 7 29 48
周知す 1 17 6 2 7 33
周知し 1 9 7 19 18 54
(周知する・計) 2 26 13 21 25 87
※ 「周知せ」は「周知せしめる」など。「周知し」は「周知し、」の他、「周知して」、「周知します」など。
上の表を見ますと、法律では「周知させる」の使用が多いのですが、白書、広報紙、国会会議録では、「周知する」の方が多くなっています。その他の区分(書籍等)では、「周知させる」の方がやや多くなっています。
「周知する」と「周知させる」の使い分けのルールや傾向は、これらの使用例を見ても読み取ることができませんでした。
使用状況から考えた場合も、結局どちらでもよさそうです。
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