1 用語の誤り
「QC検定2級合格ポイント解説」(山下正志、塚田光平、森富美夫著・オーム社)に用語の混乱が見られた。次の部分である。
相関係数rは、xとyの共分散(Sxy)を、xとyそれぞれの平方和(SxとSy)を掛けたものの平方根で割って求める。(p.146)
上の文で「共分散」とされている部分は、「積和」としなければならない。
p.156にも、次のとおり、同様の誤りがあった。
分子の共分散Sxyが負の場合、回帰係数(b=Sxy/Sx)も共分散Sxyを持つので、符号が結果的に回帰係数に影響する。
★★★以下、2級試験の重要事項をまとめておく。★★★
2 上に関連する用語
関連する用語をまとめておく(ave(x)はxの平均を表す。nはサンプルサイズ(いずれも以下同じ))。
「(偏差)平方和」または「変動」 Σ(x-ave(x))^2
※記号Sxを用いる。
※QC検定では、「偏差平方和」ではなく、「平方和」が使用される。
「(偏差)積和」または「共変動」 Σ(x-ave(x))(y-ave(y))
※記号Sxyを用いる。
分散 平方和/(n-1)
※記号Vを用いる。
共分散 積和/(n-1)
3 平方和、積和の公式
次の2つは、QC検定を受験する際の重要な公式である。2に掲げたそれぞれの定義式ではなく、次の電卓計算用の公式を覚えておかなければならない。
平方和=Σ(x^2)-(Σx)^2/n
積和=Σ(xy)-Σ(x)Σ(y)/n
4 相関係数の公式
相関係数=(xとyの積和)/(√(xの平方和)√(yの平方和))
=Sxy/√(SxSy)
5 回帰係数の公式
回帰係数=(xとyの積和)/(xの平方和)
定数項=ave(y)-回帰係数×ave(x)
寄与率(決定係数)=相関係数^2
6 標準偏差(s)と標準誤差
s=√(V)
標準誤差=s/√(n)
7 t検定
(1)「平均に関する検定」、(2)「2つの平均の差の検定(対応のある場合)」、(3)「2つの平均の差の検定(対応のない場合)」の3つがある。いずれも
t=(平均の差)/標準誤差
が検定統計量である。
(1)は「1標本t検定」。上式のtが、自由度n-1のt分布に従うことを利用する。
(2)では、対応する各データの差について、(1)の検定と同じことをする。
(3)では、分散を、次のとおり、自由度をウェイトとした加重平均として計算する。t分布の自由度はna+nb-2である。
分散=(νaVa+νbVb)/(νa+νb)
※νa=na-1、νb=nb-1
※a、bは添え字。例えば、νaは、サンプルaの自由度。
標準誤差は次のとおり。
標準誤差=√((1/na+1/nb)×分散)
8 z検定
母分散(σ^2)が既知の場合の平均に関する検定を、z検定という。7のt検定との違いは次のとおり。
(1)検定統計量が標準正規分布に従うことを利用する。
(2)「平均に関する検定」の場合、標準誤差は、σ/√n である。
(3)「2つの平均の差の検定(対応のない場合)」では、標準誤差は、
√((σa)^2/na+(σb)^2/nb)
である。
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