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異形の仲間たち見聞録

私が見てきた精神疾患者たち

『ボケ茄子の花 その二十八』

2018年01月21日 02時18分25秒 | 小説『呆け茄子の花』

葬儀が終わり、次の出勤日が来て病院内で尚樹は「無職」になった。

それは「被支援者」が亡くなったからだ。

尚樹は亡くなったことで半ば空虚な気持ちになった。

それは尚樹の「トラウマ」を呼び起こす切っ掛けとなったからだ。

だが尚樹はそのことを主治医にも同僚にも語らなかった。

語ることで「トラウマのフラッシュバック」を自発的に起こしてしまう恐れがあったからだ。

これは当事者のプログラムで語って、その翌日の早朝に「フラッシュバック」で目覚め、

その後一週間ベッドから出られなかった経験が幾度かあったのである。

尚樹はその後このことを繰り返し体験することになる。

そしてこのことは、職場長に理解してもらえずトラブルを生むことになる。

その二十八 終わり

 

 

 

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小説『ボケ茄子の花 その二十七』

2017年12月17日 18時05分44秒 | 小説『呆け茄子の花』

統合失調症で顕著に見られる症状が「水中毒」最悪の場合は死に至るとされている。

支援に入る前にそのような前口上があったので尚樹は緊張感を持って

初対面を迎えたが、患者さん「Eさん」は明るくユニークな方だったことに

尚樹は助けられた思いがした。

急性期病棟から本人が借り受けている近くのアパートまで行き

しばらく、職員と過ごしたり一人暮らしに向けて家具を買ったり、

退院に向けて一見して順調に向かっているように見えたが・・・

ある日、尚樹と他二人の精神保健福祉士と一泊していたEさんのアパートを

訪ねた日のことであった。

呼び鈴を鳴らしても応答がなく、ベテランの職員が「あとで大家さんと訪ねてみます。」

と、その時は引き取ったのだが、後日尚樹は自分の携帯電話に病院から電話があった。

その電話はベテラン精神保健福祉士からで内容は

「Eさんが自宅で亡くなっていました・・・。」とのことだった。

尚樹は声を詰まらせ選ぶべき言葉が見当たらず絶句したままであった・・・。

続けて、ベテラン職員は「××日に簡単な葬儀がありますので略式でお越しください」

とのことだったが、尚樹はしっかり喪服を着て葬儀をする会館へ向かった。

家族は年老いた母しかおらず、近しい親戚もおらず、また精神障害者であったために

母親も親戚へ連絡することを遠慮したらしく、身内は誰もおらず、

その代わりに「障害者仲間」が本人の明るい性格を反映してか、多く参列し

会館内で一番小さい葬儀場に入りきらず、交代して焼香をあげ

部屋の前で嗚咽が遠慮なく漏れ続いていた・・・。

 

その二十七 終わり

 

 

 

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小説『ボケ茄子の花 その二十六』

2017年09月05日 00時47分01秒 | 小説『呆け茄子の花』

結局、言われるがままに「障害者支援」の役をすることになった。

尚樹の今の体調を考えて、「週一日、三時間」という勤務時間になった。

入院中の患者さんの「退院訓練」というものだった。

この患者さん、尚樹と同じ主治医でその主治医の大ファンを自負してはばからなかった。

とても愛嬌のある患者さんで、挫折もあるが憎めないキャラクターの持ち主だった。

それが、「だった。」なのだ。

後に大事件になってしまう。

 

 

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小説『呆け茄子の花 その二十五』

2017年05月29日 23時37分23秒 | 小説『呆け茄子の花』

尚樹は、主治医に訴えた、なにをか?

「就労していないことの焦燥感・罪悪感」を・・・

その訴えは数度続いた。

それから、幾月かが過ぎた。

あるときの診察の時に尚樹は、主治医から思わぬ言葉を聞いた。

「尚樹さん、あなた病院で働いてみない?」

「え?」

尚樹は耳を疑った。

主治医は一方的に話し続けた。

「障害者の支援をして欲しいのよ、今日は私の担当する患者さんのお母さんがお見えになってるの」

全く、尚樹に口を挟む間も与えず、直ぐさま尚樹の横にある出入り口の扉が開いた。

老婆だった。

ナースに導かれ診察室の中に入ってきた。

老婆は・・・

「このお人なら、私の息子を任せられます・・・」

尚樹はずっと唖然としたままであった。

 

その二十六につづく

 

 

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小説『呆け茄子の花 その二十四』

2017年03月03日 21時17分00秒 | 小説『呆け茄子の花』

精神科のプログラムで「外部講師」としてではあるが、

毎週土曜一度の90分が唯一の「就業時間」であった。

尚樹は、自分が「健常者」のときに比べると、

とても「働いている」というものでは無かった。

そして、もう一つ彼が自身で「拘束時間」としていたのが、

卒業した大学の「もぐり」での講義受講であった。

ただ、問題は片足の尚樹は「もぐり」での受講は目立ちすぎたが

本人は「卒業しましたが、ひきつづき・・・」と、大学講師にことわって受講していた。

受講している講義の内容は「佛教における時間論」というあまりにも地味であったが

「重箱の隅をつつく」様な学びは尚樹が好むところであった。

この「二つの拘束時間」を除く時間がどのように混乱して乱れていても

寝て過ごすことはなかった。

内心「物足りなさ」を感じながら心は徐々に焦り始めていた。

 

その二十五に続く・・・

 

 

 

 

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