異形の仲間たち見聞録

私が見てきた精神疾患者たち

小説『ボケ茄子の花 その二十七』

2017年12月17日 18時05分44秒 | 小説『呆け茄子の花』

統合失調症で顕著に見られる症状が「水中毒」最悪の場合は死に至るとされている。

支援に入る前にそのような前口上があったので尚樹は緊張感を持って

初対面を迎えたが、患者さん「Eさん」は明るくユニークな方だったことに

尚樹は助けられた思いがした。

急性期病棟から本人が借り受けている近くのアパートまで行き

しばらく、職員と過ごしたり一人暮らしに向けて家具を買ったり、

退院に向けて一見して順調に向かっているように見えたが・・・

ある日、尚樹と他二人の精神保健福祉士と一泊していたEさんのアパートを

訪ねた日のことであった。

呼び鈴を鳴らしても応答がなく、ベテランの職員が「あとで大家さんと訪ねてみます。」

と、その時は引き取ったのだが、後日尚樹は自分の携帯電話に病院から電話があった。

その電話はベテラン精神保健福祉士からで内容は

「Eさんが自宅で亡くなっていました・・・。」とのことだった。

尚樹は声を詰まらせ選ぶべき言葉が見当たらず絶句したままであった・・・。

続けて、ベテラン職員は「××日に簡単な葬儀がありますので略式でお越しください」

とのことだったが、尚樹はしっかり喪服を着て葬儀をする会館へ向かった。

家族は年老いた母しかおらず、近しい親戚もおらず、また精神障害者であったために

母親も親戚へ連絡することを遠慮したらしく、身内は誰もおらず、

その代わりに「障害者仲間」が本人の明るい性格を反映してか、多く参列し

会館内で一番小さい葬儀場に入りきらず、交代して焼香をあげ

部屋の前で嗚咽が遠慮なく漏れ続いていた・・・。

 

その二十七 終わり

 

 

 

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