えんどうたかし の つぶやきページgooバージョン

このブログは、憲法や法律に関連する事柄を不定期かつ思いつくままに綴るものです。なお、素人ゆえ誤りがあるかもしれません。

「政治とかね」について・・弁護士阪口徳雄氏のエントリより転載

2009-03-26 01:44:51 | Weblog
 下記エントリは、表記の通り「弁護士阪口徳雄氏」のHP(注:に従って転載自由)より転載させていただいたものである。

 以前問題となったいわゆる「KSD事件」について整理したものである。

 以下引用・・・
【 KSDは国から多額の補助金を受けているので、政党等への政治資金に関する寄附は法22条の3により禁止されていた。
そのためにKSD豊明会(ダミー団体)という任意団体を設立し、その団体に補助金を出し、この団体を通じて政界工作を行っていた。
さらに、KSDは自民党職域支部として東京・豊明支部、千葉・豊明支部、埼玉・豊明支部、神奈川・豊明支部を設立した。
KSD豊明会(ダミー団体)を通じて自民党の上記職員支部に党費名目で出損した金は次のとおりである。
1994年  49553人   約1億9821万円
1995年  70073人   約2億8029万円
1996年      0人
1997年  89052人   約3億5620万円
1998年  98915人    3億9566万円
1999年  84735人    3億3894万円
 計約15億6930万円】
以上の行為は、政治資金規正法26条の2、4号(第三者名義の寄附)、被疑者(2)は同26 条の2、3号(第三者名義で寄附受入)に該当するので、早急に捜査をつげ、厳重に処罰されたく告発する】として告発した。
KSDは政治家らに対して寄付ができない。
そこで、ダミー団体であるKSD豊明会を設立し、そのダミー団体を利用して党費名目で、自民党に献金をしていたというのである。
ダミー団体及び第3者名義の寄付、それの受領、虚偽記載という点では、小沢の事件とピッタリ。
小沢の金額と桁が違うではないか。
ところが東京地検は、自民党のこの金を貰った関係者全員を不起訴にした。
・・・<中略>・・・引用終わり。

 そして坂口氏は「明らかに、不公平」だという。私も同様に思う。

 <中略>・・・再度引用・・・
小沢代表の秘書起訴、東京地検 「迂回献金」で虚偽記載
2009年3月24日 19時25分(共同)
 西松建設の巨額献金事件で東京地検特捜部は24日、違法な企業献金を受領しながら虚偽の報告をしていたなどとして、政治資金規正法違反の罪で、小沢一郎民主党代表の公設第1秘書で資金管理団体「陸山会」の会計責任者大久保隆規容疑者(47)と、同社の前社長国沢幹雄容疑者(70)を起訴した。
 元総務部長岡崎彰文容疑者(67)は処分保留のまま釈放した。大久保被告は否認しているとみられる。
 西松建設は、ダミーとされる政治団体を通じ、二階俊博経済産業相ら自民党議員側に対してもパーティー券購入や迂回献金をしており、特捜部は、こうした資金が支出された経緯の分析を進める。小沢代表への事情聴取は当面、見送る方針。
 東京地検の谷川恒太次席検事は大久保被告の起訴について「特定建設業者から長年、金銭提供を受けており、見過ごせない重大で悪質な事案」と述べた。
 西松側のダミー団体は新政治問題研究会(新政研)と未来産業研究会(未来研)。
 起訴状では、大久保被告は2006年10月ごろ、実際には西松建設からの企業献金なのに新政研や未来研の名義で計300万円を陸山会と民主党岩手県第4区総支部の口座で受領。これを含め、03-06年に同社から計3500万円の献金を受けたのに、政治資金収支報告書には新政研や未来研からの献金と偽って記載したとしている。
 また、国沢被告は06年10月ごろ、違法な企業献金などと知りながら、新政研や未来研の名義で、陸山会と4区総支部、民主党岩手県連に計500万円を献金したとしている。
・・・引用終わり。


 上記エントリの事実は興味深い。
 以前の、KSD豊明会を通じて自民党の上記職員支部に党費名目で支出された金の流れの構図が同質であることは、おそらく誰もが感じるであろう。その意味で、ダミー団体を通じた政党への金の流れに対する弁護士阪口徳雄氏の見解はもっとものように思われる。
 また同氏は、「政治資金規制法違反が形式犯ではない」というのもその通りであろう。ところが検察は、とりあえず“虚偽記載”(形式犯)の点だけをもって「起訴処分」としているのに、東京地検の谷川恒太次席検事が『大久保被告の起訴について「特定建設業者から長年、金銭提供を受けており、見過ごせない重大で悪質な事案』と述べたと報道されていることとは、明らかに矛盾している。

 注:政治資金規制法<抜粋>
第21条 会社、労働組合、職員団体・・・その他の団体は、政党及び政治資金団体以外の者に対しては、政治活動に関する寄附をしてはならない。
第22条の2 何人も、第21条第1項・・・の規定に違反してされる寄附を受けてはならない。
第26条 次の各号の一に該当する者(団体にあつては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)は、1年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
3.第22条の2の規定に違反して寄附を受けた者
第12条 政治団体の会計責任者は収支報告書を・・・・提出しなければならない。
1.<略>
イ<略>
ロ 同一の者からの寄附で、その金額の合計額が年間5万円を超えるものについては、その寄附をした者の氏名、住所及び職業、当該寄附の金額及び年月日並びに当該寄附をした者が第22条の5第1項本文に規定する者であつて同項ただし書に規定するものであるときはその旨
第25条 次の各号の一に該当する者は、5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
3.第12条第1項・・・提出すべき書面に虚偽の記入をした者

 上記(注)をみると、寄付行為禁止の処罰規定よりも虚偽記載の方が重くなっている。勿論、もらってはいけない金をもらい、これを隠すために虚偽記載をした場合には、両方の行為は牽連するわけであり、入り口論では2罪となるが、これは、重きにしたがって処罰されることとなろう。
 ところが単独で成立する虚偽記載(名義の冒用)のみについても、25条(重い方)の罰則が適用されることとなっているから、例えば刑法の「偽造の罪」と比較してみても、所謂“形式犯”との間に「鎹(かすがい)現象」となっている。不思議な制度である。

 思うに、捜査機関の捜査の容易さを考慮しての制度だと言うことができようかと・・・。即ち、捜査機関は「比例原則」に従い、重き犯罪と思量される虚偽記載から捜査に着手するであろう。そして被疑者を逮捕してから、これの「故意」を虚偽記載の行為に牽連する“もらってはいけない金”を受け取り、これを隠す目的という行為の認識・認容の態度が明らかとなる。当に、虚偽記載の故意が確定的となるのである。
 しかし、法益侵害が虚偽記載に止まる場合(政治団体から資金管理団体への正当な寄付であって、記載が名義の冒用などの虚偽であった場合)はどうであろうか。
 同法成文規定では、こちらも形式的には同罪である(つまり、虚偽記載は、もらってはいけない金を受け取るよりも重い罪となる)。但し、虚偽記載の“故意”の裏づけは難しいと思われる。