環境の世紀

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インフルエンザ予防にうがい・マスクは迷信?!

2009年05月19日 | 鳥/新型インフルエンザ

 19日の時事通信によれば、繁華街は、休校となった中高生が目につくという。何をかいわんやだが、過剰反応と同じくらい無反応は恐ろしい。水際対策の無意味さと国内蔓延については、前に述べたが、それ以上に思い込みや過信が恐ろしい。

「感染したら自業自得」。新型インフルエンザの影響で一斉休校が続く中、大阪府や兵庫県の繁華街では19日、普段の平日以上に中高生らの姿が目に付いた。自宅待機が徹底されない状況に、両府県の教育委員会は「ほかの人にウイルスを感染させないことが目的。『自己責任』は通用しない」と呼び掛けている。・・・大阪市立中学3年の女子生徒(14)は「地元でも外出している友達をよく見掛ける。家でおとなしくしている子は少ない」と話す。体調不良で欠席している同学年の生徒が20人以上いるというが、「手洗い、うがいをすれば大丈夫だと思う。感染したら自業自得という感じ」と笑った。・・・一斉休校でも結局、友達と会うから意味がない」と話していたが、カラオケ店員に「休校中の学校の生徒は入店できない」と断られ、「一時間待ったのに」と嘆いていた。・・・学校側は家庭訪問などで在宅確認しているが・・・

「感染は自業自得」というのは、あまりに危険だ。感染者が対策を怠った愚か者としてやり玉にあげられることになる。手洗い・うがい・マスクの着用については、よいと思われているのだが、、感染予防策としては迷信に限りなく近いものだ。そのほかにも迷信としか言えないようなものや、効果があまりないだろうと思われる対策もある。それらについて検証してみると次のようになる。

①手洗い・・・効果が確認できるような爪の中や手首まで行う効果的な手洗いを頻繁に行うことはほぼ不可能。

②うがい・・・10分おきにうがいをしてウイルスを洗い流すような効果的で頻繁なうがいはほぼ不可能。

③マスクの着用・・・通常のマスクはウイルスにはないも同然。マスク以外の頭髪や衣服にもウイルスは付着。未感染者の予防としてのマスクは効果が期待できない。着用したマスクは、使い捨てとし、マスクに触れることも極力避けなければならない。N95規格のマスクをしたとしても裸の王様同様。防護服のような頭から目から衣服も含めて外界と完全に遮断しなければ予防策としては、ほぼ無意味。迷信に近いものだ。

 2月ごろ歯磨きがインフルエンザ予防に効果があるという記事があったが、給食後の歯磨きを励行していたクラスが他のクラスに先駆けて学級閉鎖となったという笑えない話が身近であった。では、上記3点の対策は無意味なのだろうか。神戸の高校に殺到したような「マスクをさせないから感染した!」というような愚かしい判断を下せるほどの予防効果はないということは確かだろう。なにしろ、アメリカをはじめ多くの国々で、マスクやうがいの習慣がないだけでなく推奨もされていないことを知るべきだ。

 では、どうしたらよいか。①の手洗いに「できるだけ顔に触れない」習慣を身につけると効果は上がるらしい。頬杖をついたり、爪を噛んだりしないという習慣はインフルエンザ以外の感染症を予防するためにも有効らしい。②のうがいについてもイソジン等の薬を用いると良いという人もいるが、逆効果で免疫力を弱めるという人もいる。人ごみや感染者と濃厚な接触があったらすぐに行うと効果があるかもしれないが、過信しないということだろう。③のマスクについては、感染者が飛沫を他者に浴びせる量を減らすことは確認されているが、それで予防できるとしている専門機関はない。これも過信しない方がいいだろう。ましてや、マスクをしないからインフルエンザに罹って発症したととらえては、本質を見失うことになる。「感染は自業自得」と笑う無知で傲慢な中学生が行う手洗いやうがいには、効果はほとんどないと想像できる。

 早期発見や早期治療についても、妊婦や糖尿病・その他の疾患がある場合に必要であるが、すべての人に即タミフルという対応は、タミフル耐性菌を製造するようなものなので慎みたい。あくまで今回は、病原性が低いのであるから、乱用によって耐性菌が生まれ、病原性が高い新型インフルエンザが現れた時に、有効な薬がなくなるといったことがあっては、困る。重篤な発熱やその他の症状が出なければ、自宅で静養していることが、大切だろう。さて、19日の産経新聞によれば、

新型インフルエンザ感染が拡大する中、感染者が「発熱外来」だけでなく、地域の診療所で受診できる仙台市の対策が注目されている。パンデミック(世界的大流行)時にはかかりつけの診療所で診断、治療を受け、症状の軽い患者は自宅療養する方式で、季節性のインフルエンザと同様に診療し、感染拡大を防ぐのが狙い。感染者が増加している大阪府や兵庫県では感染者が発熱外来に集中し、病床がパンク状態になる問題が生じているが、仙台市ではこうしたことを想定し、地元の医師会と協力して態勢を整えてきた。 この「仙台方式」は新型肺炎(SARS)騒動に危機感を抱いた梅原克彦市長が約4年前の市長就任時から、準備を進めていた。東北大の専門家から情報を得たり、厚生労働省仙台検疫所長だった岩崎恵美子氏を副市長に迎えるなど、陣頭指揮に・・・診療所が軽症者診療機能を担うなどを盛り込んだ「メディカル・アクションプログラム」を策定。パンデミック時には、感染者の多くは最寄りの「かかりつけ医」がいる医療機関に行くだろうという想定のもとに検討した。岩崎副市長は「国の行動計画は発熱外来を設定しているが、普通のインフルエンザと同じ対応ができれば、かかりつけの医療機関に診てもらい、早く治療して自宅待機してもらった方が感染拡大の防止になる」と話す。 協力を依頼された医師会は患者を受け入れる診療所を募り、市は受け入れ診療所にタミフルや防護用マスクの配布準備をしている。軽症患者は抗インフルエンザ薬の処方で自宅療養を基本に、重症患者は入院治療を行う態勢を進めている。 梅原市長は「今後は東北へも感染拡大が予想されるが、市民の生命と健康を守るため、気を引き締めて取り組んでいく」と・・・

この記事を見れば、インフルエンザになるのは「うがい手洗いをしないから」と外を出歩く愚か者とは根本的に違うことがわかる。要は、病原性が低い、俗にいう「弱毒性」であっても「気を引き締めて」取り組まねばならないのだ。敵を甘く見ると近い将来痛いしっぺ返しを食うことになる。

 ところで、フェーズ6への引き上げについてだが、感染の広がりからすれば、すでに「6」相当なのだが、WHOは、次のように引上げをしなかった。19日の産経新聞によれば、

・・・世界保健機関(WHO)緊急委員会委員の田代真人・国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長は19日、WHO本部で記者団に対し、「感染の地理的な広がりだけから機械的に警戒フェーズを最高度の6に引き上げることはない」と述べ、当面はパンデミック(世界的大流行)を意味する「6」への引き上げはないとの見通しを示した。・・・英国や日本の要請を受けて判断したもので、田代氏は「政治的な決断だ」と指摘した。パンデミックを宣言した場合、各国政府は移動・集会規制の措置をとらなければならず、弱毒性の新型インフルエンザの健康被害に比べ影響が大きすぎるため・・・

という。医学的・疫学的判断でなく「政治的判断」というところが正直で良い。しかし、WHOの権威は失墜したと言えるかもしれない。次のパンデミック時に、今回の「政治的」対応が、どのような惨禍を招くか分からないが、米国CDCの発表を重要視し、WHOのそれを軽視するような一連の動きが気になってしまう。今後インフルエンザAが発展途上国や南半球でどのように力を蓄え、他のインフルエンザと合体して人類に襲いかかるかは分からない。万が一の時世界を救うのはWHOであっても、米国CDCではないと思うのだが・・・・。がんばれ!WHOV(=∩_∩=)


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