汚いサンタ

朝、夫を見送ってから「ちょっとだけ……」と思って、そのまま二度寝した。

でも、
「ちょっとだけ……」と思ったものが、
ちょっとだけで終わることなんて、
普通ないよね（笑）？

外の車の音で目覚めたのは９時。

その車の音が、
ゴミ収集車であると気がつくのに、
一体どのくらいの、
理解の空白があったのか。

はっきり認識した時には、
飛び起きた。

もうすでに、前回、
捨てそびれているんだから、
慌てなければ主婦じゃない。

寝巻きの上にセーターを着て、
（後で見たら、後ろ前反対に着ていた××）
汚いサンタになって、
半透明のゴミ袋を持ってでる。

　　　　　★

駆け込んで、
オートロックの自動ドアを開けたが、
ゴミ置き場に行く手前で、
管理人さんが、
「あっ！もうでたよ！！」
と制止する。

あっちゃ～……。

汚いサンタは、うなだれた。

すると管理人さんは、
管理人室から出てきて、外に出た。
つられて私も外にでる。

「あ、まだおるわ！」
「あ、ホンマや！」

見ると、数十メートル先の、
踏み切り手前あたりで、ごみ収集を行っている。

すかさず、走ろうとしたら、
私では追いつかないと判断したのか（正解かも……）
管理人さんが、
汚いサンタの汚いプレゼントを取って、
そのまま走りだしてくれた。

幸いにも管理人さんは、
収集車に追いついて、
事情を説明し、
ごみ収集員の人に
汚いプレゼント フォー ユウしてくれた。

クリスマスじゅうに、
プレゼント配り終えるサンタさんの気持ちが、
２月のわかった。リアルにわかった。

きっと、充実感や達成感より、
安堵感が真っ先にあったんだろうなぁ。

　　　　　★

さっきのスプリントとはうって変わって、
管理人さんは、
ゆっくり歩いて帰ってくる。

お礼に何度も頭を下げながら、
その距離と間（ま）を埋めた。

冷静さも取り戻したので、
ぼさぼさ頭ですっぴんの顔を、
隠すためにも、下げまくり（笑）

あぁよかった～。

神さま、
どうかこのよい行いをした、
管理人さんに、
幸運をお与えください……
と、
クリスマス風に祈る。