《旧石器社会と明確に区別される縄文社会の特徴》
①特定の土地に落ち着く計画的意思…縦穴住居。
②はっきりと打ち出された生活戦略…食料貯蔵設備。家財道具(石皿、すり石、土器)。
→生活拠点づくり⇔旧石器時代の遊動。
《定着度の高い生活》
世界的な気温の上昇期…旧石器時代の終わりから縄文草創期に入る約15,000年前ごろ。
温暖化→①クリやドングリなどの森が茂る→植物管理。②海流が活性化し、サケやマスの回遊と遡上がうながされる→河川漁撈。
《縄文草創期の居所》
斜面を掘り込んで屋根をしつらえ、屋根には土をかけ、低い側に入り口を向けたもの→横穴のイメージ。
岩陰や洞窟の入り口で暮らした跡。
《ヤンガー・ドリアス期》
世界的な寒の戻りの時期。約13,000年前から11,000年前ごろ。
グリーンランドの氷床(氷河)に堆積した氷に含まれる酸素を調査し、気候変動を推定。
《「サト」の出現》
約11,000年前から本格的な暖かさの到来。
→植物性食料、河川漁撈へ依存。
→完全な定住…特定の土地と心をつなぐ人びとの出現。「骨を埋める」という意識。
→世代を超えた定住…人と場所との絆の蓄積。「サト」。
《定住による物質文化の発展》
約9,500年前
①形が誇張された石のナイフ=神子柴型の大型石ヤリと同じように、実用性を失うまでに手の込んだ「凝り」を盛り込み、道具のもつ社会的なメッセージ性だけを取り出して物体化したホモ・サピエンス的な人工物。
②土をこねて焼いたフィギュア=土偶の始まり。焼物細工の発明。
メッセージ性のみを取り出して物体化した人工物…定住の本格化と一致。
社会的な関係の確認に人工物を介在させる。人と人との関係を者になぞらえるアナロジーの能力と、ものづくりの才能との連携の賜物。
ホモ・サピエンスの物質文化の神髄=言語とともに人工物をもって行う。
定住が、物質文化を大きく発展させる起爆剤になった。
《環状定住集落》
恋ヶ窪南遺跡(国分寺市)…約8,500年前の大型環状定住集落。広場を真ん中にして同心円を描いている。
…約7,000年前、真ん中の広場に穴を掘り、遺体を埋葬した環状集落の出現。広場に葬られた死者=サトとしての求心力。
《縄文前期》
約7,000年~6,000年前…気温上昇がピーク。今よりも1~2℃高い。海面も今より3~5m高かっただろう。
環状集落の林立に結実する定住と人口の増加は、温暖化した気候がもたらした豊かな森の恵み(植物食料)、海の恵みの賜物だった。
→土偶、奇妙な石製品、壮大な環状集落。社会的コミュニケーションの密度が高まった。
《縄文時代に得た貯蔵技術》
獲得・加工・貯蔵という3点セットの技術。とくに、貯蔵は旧石器時代にはなかった。
縄文草創期…ドングリなどを貯えた穴蔵。
中里貝塚(東京)…7,000年前からの日本最大貝塚。干し貝加工。おもにハマグリとカキ。当時の海岸線にあり、付近に集落跡はない。貝をゆで、中身を干し貝に加工する場所だったと考えられている。保存食料。
《獲得の技術改良》
石ヤリ主体(旧石器時代)→弓矢主体(縄文時代)
石鏃(せきぞく)の発達。離れモリ。
漁具の発達。
磨製石斧(せきふ)、打製石斧。
《縄文社会で発達した3点セットの技術》
獲得・加工・貯蔵の技術の発達→定住という生活形態の確立。
《列島東西の環境相違》
東日本…落葉広葉樹林→遺跡密度が高い。
西日本…照葉樹林→遺跡密度が低い。
《縄文時代の西日本》
(土器などから)西日本は、東日本よりも朝鮮半島と共通するところが大きい。
《派手な飾りをもつ華麗な縄文土器》
岡本太郎は、縄文土器に深い芸術性を見いだした。
心の科学にのっとった老古学の観点
①定住がもたらした暮らしの特化→文化の中味を地域ごとに濃密化。
②定住によるコミュニケーションの高まり→機能以外の「凝り」を盛り込み、強いメッセージ性を付与する傾向を増大。
(定住により)地域ごとの鮮やかな個性が表され、いくつもの様式が競うように立ち並ぶことになった。
cf.「火炎土器」(馬高式)
《縄文土器と環状集落》
東日本の土器=派手。
西日本の土器=控えめ。
※東日本の環状集落と派手な土器…共通の社会的条件。すむ場所の形、使う道具といった物質文化に高いメッセージ性を盛り込んだ。
《物質流通のネットワーク》
人が動かなくなるほうが、かえって物はよく動く。定住によって、「人は動かず、物を動かす」ネットワークの仕組みができあがった。
→密度の高いコミュニケーション。
→文化の中味の明確化。
《文字のない社会》
視覚や聴覚を通して、他者の感情や認知に直接訴えるやり方。先史社会の込み入った儀礼、凝った衣装、芸術的な表現。
縄文時代前期から中期にかけて(7,000~4,500年前)は、土器を飾り立て、集落を環状に演出。→定住と人口増によって、個人どうしの関係と、物資流通ネットワークに連なる集団間の関係とがもっとも複雑化した関東・甲信越や東北南部において、いちばん典型的に進んだ。
《複雑華麗な縄文土器の文様》
具体的な意味は、永遠の謎。
連帯感を高める相互間のメッセージ。
《スキーマ》
知識や概念の連鎖。→人工物を研究するうえでの重要なキーワード。
文化=社会の人びとに共有された知が、目にみえる形になったもの。
《基層や表層》
複雑な脳の現象である文化というものに、科学的な意味での基層や表層があるということそのものが、そもそも疑問だ。
個別な要素にすぎない。
《環状集落の構成》
①ひとつの環状集落がひとつの出自集団の居所。
②ひとつの環状集落が複数の出自集団の居所。
《環状集落の墓》
中央広場につくられた。
その中心に何基かの墓が独立してつくられた。
《環状集落最盛期の縄文社会》
環状集落…格差を包み隠す位置関係。メンバーは互いに対等とするメッセージ⇔墓域における個人どうしの社会的な差異。
→ある局面では互いの対等を尊重し、別の局面では差異を認め合う社会的状況。
環状集落の円環形には平等のメッセージが、中心部の墓の位置や副葬品の違いには現実の序列が示されている。平等原理と序列原理のせめぎあい。
《縄文社会は平等だったか》
個体どうしが競争することは、生物の本質だ。競争があるからこそ、そのときどきの環境のなかで有利な形質をもった個体が生き残る。それが進化だ。進化するからこそ、種は世代を超えて生きながらえることができる。個体間の競争がなかったら、ヒトという種は現れなかっただろうし、今日の私たちのような姿に進化したはずもない。
暴力死の回避→序列のシステム…個体間の強弱や優劣が前もって定められているために、食物や異性をめぐる競争が暴力として爆発してしまう機会は、最小限に抑えられる。
厳しい序列のある複雑な社会環境のなかで進化→ヒトの大脳の発達…生きるための競争や不平等に満ちた社会をゆりかごとして進化。
ホモ・サピエンスの社会は、根本的には、時代を問わず不平等。
《平等はつくられた観念》
序列の原理…ヒト社会に基本的にある不平等がまねく個体間関係のゆがみを調整する手段として、その不平等を是認して合理化する。⇔平等の原理。
友愛や思いやりに基づく平等主義…ヒト社会の進化段階で生みだされた。
序列原理と平等原理が複雑にからみあって、個人間の関係、すなわち社会がつくられる。
太古から現代までのいかなるホモ・サピエンス社会においても、序列と平等の二つの原理は互いに重なり合い、せめぎあい、局面を変えながら、つねに同時に存在する。
不平等を覆い隠すための、あたかも平等主義にみえるイデオロギー。
心理学でいう「合理化」。
松本武彦「列島創世記」(小学館「日本の歴史」第1巻)
①特定の土地に落ち着く計画的意思…縦穴住居。
②はっきりと打ち出された生活戦略…食料貯蔵設備。家財道具(石皿、すり石、土器)。
→生活拠点づくり⇔旧石器時代の遊動。
《定着度の高い生活》
世界的な気温の上昇期…旧石器時代の終わりから縄文草創期に入る約15,000年前ごろ。
温暖化→①クリやドングリなどの森が茂る→植物管理。②海流が活性化し、サケやマスの回遊と遡上がうながされる→河川漁撈。
《縄文草創期の居所》
斜面を掘り込んで屋根をしつらえ、屋根には土をかけ、低い側に入り口を向けたもの→横穴のイメージ。
岩陰や洞窟の入り口で暮らした跡。
《ヤンガー・ドリアス期》
世界的な寒の戻りの時期。約13,000年前から11,000年前ごろ。
グリーンランドの氷床(氷河)に堆積した氷に含まれる酸素を調査し、気候変動を推定。
《「サト」の出現》
約11,000年前から本格的な暖かさの到来。
→植物性食料、河川漁撈へ依存。
→完全な定住…特定の土地と心をつなぐ人びとの出現。「骨を埋める」という意識。
→世代を超えた定住…人と場所との絆の蓄積。「サト」。
《定住による物質文化の発展》
約9,500年前
①形が誇張された石のナイフ=神子柴型の大型石ヤリと同じように、実用性を失うまでに手の込んだ「凝り」を盛り込み、道具のもつ社会的なメッセージ性だけを取り出して物体化したホモ・サピエンス的な人工物。
②土をこねて焼いたフィギュア=土偶の始まり。焼物細工の発明。
メッセージ性のみを取り出して物体化した人工物…定住の本格化と一致。
社会的な関係の確認に人工物を介在させる。人と人との関係を者になぞらえるアナロジーの能力と、ものづくりの才能との連携の賜物。
ホモ・サピエンスの物質文化の神髄=言語とともに人工物をもって行う。
定住が、物質文化を大きく発展させる起爆剤になった。
《環状定住集落》
恋ヶ窪南遺跡(国分寺市)…約8,500年前の大型環状定住集落。広場を真ん中にして同心円を描いている。
…約7,000年前、真ん中の広場に穴を掘り、遺体を埋葬した環状集落の出現。広場に葬られた死者=サトとしての求心力。
《縄文前期》
約7,000年~6,000年前…気温上昇がピーク。今よりも1~2℃高い。海面も今より3~5m高かっただろう。
環状集落の林立に結実する定住と人口の増加は、温暖化した気候がもたらした豊かな森の恵み(植物食料)、海の恵みの賜物だった。
→土偶、奇妙な石製品、壮大な環状集落。社会的コミュニケーションの密度が高まった。
《縄文時代に得た貯蔵技術》
獲得・加工・貯蔵という3点セットの技術。とくに、貯蔵は旧石器時代にはなかった。
縄文草創期…ドングリなどを貯えた穴蔵。
中里貝塚(東京)…7,000年前からの日本最大貝塚。干し貝加工。おもにハマグリとカキ。当時の海岸線にあり、付近に集落跡はない。貝をゆで、中身を干し貝に加工する場所だったと考えられている。保存食料。
《獲得の技術改良》
石ヤリ主体(旧石器時代)→弓矢主体(縄文時代)
石鏃(せきぞく)の発達。離れモリ。
漁具の発達。
磨製石斧(せきふ)、打製石斧。
《縄文社会で発達した3点セットの技術》
獲得・加工・貯蔵の技術の発達→定住という生活形態の確立。
《列島東西の環境相違》
東日本…落葉広葉樹林→遺跡密度が高い。
西日本…照葉樹林→遺跡密度が低い。
《縄文時代の西日本》
(土器などから)西日本は、東日本よりも朝鮮半島と共通するところが大きい。
《派手な飾りをもつ華麗な縄文土器》
岡本太郎は、縄文土器に深い芸術性を見いだした。
心の科学にのっとった老古学の観点
①定住がもたらした暮らしの特化→文化の中味を地域ごとに濃密化。
②定住によるコミュニケーションの高まり→機能以外の「凝り」を盛り込み、強いメッセージ性を付与する傾向を増大。
(定住により)地域ごとの鮮やかな個性が表され、いくつもの様式が競うように立ち並ぶことになった。
cf.「火炎土器」(馬高式)
《縄文土器と環状集落》
東日本の土器=派手。
西日本の土器=控えめ。
※東日本の環状集落と派手な土器…共通の社会的条件。すむ場所の形、使う道具といった物質文化に高いメッセージ性を盛り込んだ。
《物質流通のネットワーク》
人が動かなくなるほうが、かえって物はよく動く。定住によって、「人は動かず、物を動かす」ネットワークの仕組みができあがった。
→密度の高いコミュニケーション。
→文化の中味の明確化。
《文字のない社会》
視覚や聴覚を通して、他者の感情や認知に直接訴えるやり方。先史社会の込み入った儀礼、凝った衣装、芸術的な表現。
縄文時代前期から中期にかけて(7,000~4,500年前)は、土器を飾り立て、集落を環状に演出。→定住と人口増によって、個人どうしの関係と、物資流通ネットワークに連なる集団間の関係とがもっとも複雑化した関東・甲信越や東北南部において、いちばん典型的に進んだ。
《複雑華麗な縄文土器の文様》
具体的な意味は、永遠の謎。
連帯感を高める相互間のメッセージ。
《スキーマ》
知識や概念の連鎖。→人工物を研究するうえでの重要なキーワード。
文化=社会の人びとに共有された知が、目にみえる形になったもの。
《基層や表層》
複雑な脳の現象である文化というものに、科学的な意味での基層や表層があるということそのものが、そもそも疑問だ。
個別な要素にすぎない。
《環状集落の構成》
①ひとつの環状集落がひとつの出自集団の居所。
②ひとつの環状集落が複数の出自集団の居所。
《環状集落の墓》
中央広場につくられた。
その中心に何基かの墓が独立してつくられた。
《環状集落最盛期の縄文社会》
環状集落…格差を包み隠す位置関係。メンバーは互いに対等とするメッセージ⇔墓域における個人どうしの社会的な差異。
→ある局面では互いの対等を尊重し、別の局面では差異を認め合う社会的状況。
環状集落の円環形には平等のメッセージが、中心部の墓の位置や副葬品の違いには現実の序列が示されている。平等原理と序列原理のせめぎあい。
《縄文社会は平等だったか》
個体どうしが競争することは、生物の本質だ。競争があるからこそ、そのときどきの環境のなかで有利な形質をもった個体が生き残る。それが進化だ。進化するからこそ、種は世代を超えて生きながらえることができる。個体間の競争がなかったら、ヒトという種は現れなかっただろうし、今日の私たちのような姿に進化したはずもない。
暴力死の回避→序列のシステム…個体間の強弱や優劣が前もって定められているために、食物や異性をめぐる競争が暴力として爆発してしまう機会は、最小限に抑えられる。
厳しい序列のある複雑な社会環境のなかで進化→ヒトの大脳の発達…生きるための競争や不平等に満ちた社会をゆりかごとして進化。
ホモ・サピエンスの社会は、根本的には、時代を問わず不平等。
《平等はつくられた観念》
序列の原理…ヒト社会に基本的にある不平等がまねく個体間関係のゆがみを調整する手段として、その不平等を是認して合理化する。⇔平等の原理。
友愛や思いやりに基づく平等主義…ヒト社会の進化段階で生みだされた。
序列原理と平等原理が複雑にからみあって、個人間の関係、すなわち社会がつくられる。
太古から現代までのいかなるホモ・サピエンス社会においても、序列と平等の二つの原理は互いに重なり合い、せめぎあい、局面を変えながら、つねに同時に存在する。
不平等を覆い隠すための、あたかも平等主義にみえるイデオロギー。
心理学でいう「合理化」。
松本武彦「列島創世記」(小学館「日本の歴史」第1巻)