日本国憲法blog

現行日本国憲法と自民党憲法改正草案を比較する。
日刊更新、基本として一条ずつ吟味する。
転載歓迎。

連載の終わりにあたって 井上ひさしさんの憲法前文と第九条

2015年12月24日 | 日本国憲法
日本国憲法blogも最終回を迎えた。

このblogは、消去することなく版元の許す限り永久に残すつもりである。


さて、連載当初に断った通り、憲法前文について子細に検討してみたいが、
もう少しお待ちいただけたらと思う。

その前に、井上ひさしさんの書かれた、憲法前文と第九条を引用しておく。(著作権の関係で、引用は許されないのかもしれないが、是非とも読んでいただきたい。)




井上ひさしさんによる憲法前文と第九条

この国のかたち(前文)  

国民がみな、ひとつところに集まって
話し合うことはできないし
たとえできたとしても
やかましくてなにがなんだかわからなくなるだろう
そこで私たち国民は
決められたやり方で「代わりの人」を選び
その人たちを国会に送って
どうすれば私たちの未来がよりよいものになるか
それをよく話し合ってもらうことにした
私たちが、同じ願いをもつ
世界のほかの国国の人たちと
心をつくして話し合い
そして力を合わせるなら
かならず戦はいらなくなる
私たちはそのようにかたく覚悟を決めたのだ
今度の戦で
つらく悲しくみじめな目にあった私たちは
子どもや孫たちと
のびのびとおだやかに生きることが
ほかのなによりも
大切であると信じるようになった
そこで私たちは
代わりに国会へ送った人たちに
二度と戦争をしないようにと
しっかりことづけることにした
この国の生き方を決める力は
私たち国民だけにある
そのことをいま
世界に向けてはっきりと言い
この国の大切なかたちを
憲法にまとめることにする
私たちは代わりの人たちに
国を治めさせることにした
その人たちに力があるのは
私たちが任せたからであり
その人たちがつくりだした値打ちは
私たちのものである
これは世界のどこでもそうであって
この憲法もその考えをもとにしている
私たちは、この原則に合わないものはなんであれ、はねのけることに決めた
私たちは、世界の人たちがみな
こわがったり餓えたりせずに
ただおだやかな生き方をしたいと
願うのは
当たり前だということを
いま一度
自分に言い聞かせ
どんなことがあっても
そのじゃまをしてはならないと
たしかに決めた
自分たちのためになることばかり言い立てて
ほかの国をないがしろにしてはならない
これはいつどんなときでも
守らなければならない決まりごとである
この決まりごとを私たちもきびしく守って
日本国のことは、国民であるえ私たちが決め
ほかの国国の主人公になろうとしたり
家来になろうとしたりせずに
どこの人たちとも同じ態度でつきあうことを誓う
どんな国でもそうしなければならないと
信じるからだ
日本国民は
これから築きあげようとする
私たちの国のほまれのために
ありたけの力を振りしぼって
これまでに書いたことを
やりとげる決心である



もう二度と戦はしない(第9条)  

私たちは、人間らしい生き方を尊ぶという
まことの世界をまごころから願っている
人間らしく生きるための決まりを大切にする
おだやかな世界を
まっすぐに願っている
だから私たちは
どんなもめごとが起こっても
これまでのように、軍隊や武器の力でかたづけてしまうやり方は選ばない
殺したり殺されたりするのは
人間らしい生き方だとは考えられないからだ
どんな国も自分を守るために
軍隊を持つことができる
けれども私たちは
人間としての勇気をふるいおこして
この国がつづくかぎり
そのたちばを捨てることにした
どんなもめごとも
筋道をたどってよく考えて
ことばの力をつくせば
かならずしずまると信じるからである
よく考えぬかれたことばこそ
私たちのほんとうの力なのだ
そのために、私たちは戦をする力を
持たないことにする
また、国は戦うことができるという立場も
みとめないことにした
どんなもめごとも
筋道をたどってよく考えて
ことばの力をつくせば
かならずしずまると信じるからである
よく考えぬかれたことばこそ
私たちのほんとうの力なのだ
そのために、私たちは戦をする力を
持たないことにする
また、国は戦うことができるという立場も
みとめないことにした







井上ひさしさん


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