囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

拙者は刀を抜かぬ

2019年09月30日 | ●○●○雑観の森
 
 
抜刀目的が見え隠れする「改憲論」の巻】

坂口安吾「敗戦7年後の非戦論――拙者は戦争はいたしません」(8・16投稿)の関連記事です。
 
自衛隊(国際法上の軍隊)が「現に存在するから」という皮相的理由で憲法に明記しよういう「もっともらしい論理と謀略」にスポットを当てます。
 
「有事法制から改憲へ」という計画性をどうとらえるか、がポイントです。
 
 
         ◇
 
 
■150年前まで、サムライは腰に「二本差し」で外出しました。少し家格があれば、一人歩きではなく、用人か下男を供にしたものです。「武装」していたわけです。でも中には生活苦で真剣を手放した傘張浪人などが竹光を差していた例もあり、幕末には形式的慣習になっていました。
 

■刀はサムライの命。大声で言えませんが、歩く時には「邪魔」です。もし町人などと接触でもすれば、場合によっては「無礼打ち」しなければなりません。それなり正当な理由がなければ、本人も「切腹」。お家断絶の危険さえあります。
 
 
■従って、時代劇の様に道の真ん中をふんぞり返って歩くことなどできず、道が狭いと脇の水溜まりに入ってでも「対向者」を避けました。殿様や大身なら駕籠やら馬やらに乗るので心配ありませんが、それはほんの一握り。ほとんどのサムライは、「武装」している以上、ボーと歩いているわけにはいかなかったのです。
 
 
■しかしある目的」を持って武装しているわけではありません。「辻斬り」「決闘」「襲撃」の類いとは、一線を引かねばなりません。ここを忘れてはなりません。
 
 
         ◇
 

■用もないのにボーと外を出歩く、つまり「散歩」という習慣は、この国にありませんでした。明治・大正期でも、作家先生か詩人か哲学者か、あるいは少しおかしな連中か、と相場が決まっていました。
 
 
■現代は、犬の散歩、ウオーキング、ジョギングなど、誰でもが<用もない>のに出歩いておりますが、これらはそれ自体に意味があります。
 
 
■犬は「」を持っているので「二本差し」に近い。でもラガーマンと同様、丸腰に近いがとても強い、ぐらいの感じです。飼い主にとっては、知らないオジサンや子供を噛んだりしないか、犬同士のケンカで傷付け合ったりしないか、お金持ちの家の前で用を足してトラブルにならないか、心配のタネでもありますが。
 
 
         ◇
 
 
■さて、わたしのアンディは家の中で暮らしているので「番犬」としての期待があります。薄暗い森を歩くと「ウー」と唸ってくれます。
 
 
■でも、彼はをむいたことはありません。誰に対してもフレンドリー。もしかすると「番犬」には不向きかもしれません。でも、いざという時には頼りになるでしょう。そう信じています。
 
 
「拙者は戦争はいたしません」
 
 
■つぶらな瞳は語っています。頼むぜ、アンディ。
 
 
 
 
 
▲わたしが挨拶すると、安心して遊びます
 
 
挨拶を返さない人、よく吠える犬には、知らんぷりです
 
 
彼は、ちゃあ~んと分かっています
 
 
 
 
■さて、明日から10月ですか――。
 
 
 
 
8月は、「8・6ヒロシマ」「8・9ナガサキ」「8・15戦争ようやく終結」。
 
9月は、「9・11同時多発テロ」。
 
じゃあ、10月は?
 
「10・21国際反戦デー」は、わたしの学生時代は学内で「何事か起きていた」のですが、最近はどうでしょうか。
 
「香港」のようにやらなくとも、いつも心に刻んでおくべきは「戦争と平和」だ、とわたしは思っています。
 
 

意表を突く!裏定石

2019年09月30日 | 【カベ突破道場】

定石本にない変化球「囲碁版・大リーグボール」の巻】

 

■元祖人間コンピューター、石田芳夫九段はむちゃなことを平然といってのけます。

たった二百の定石を覚えるだけで三段になれる」

たった、ですか。

 

■定石を覚えると三つのことがよくなると言います。

 自信を持って打てる

 筋に明るくなる

 作戦の幅が広くなる

 

■そして、こう続けます。

「ためらう理由は、なに一つない。明日といわず、今日から、定石の本を開こう」

「持っていない人は、本屋さんに走ろう」

「いい本を選ぶのも、あなたの実力のうちである」

 

         ◇

 

■では、定石本に載っていない裏定石を一つ。

(201番目の定石?としますか)

変な手ですが、ハメ手ではありません。

9月29日(日)の別の同好会(通称・別荘)で試したものです。

詳しくは前々回の投稿「190929別荘」の項をご覧ください。


 

▼テーマ図

黒17とケイマにかかり、白18と受ける

普通の進行です

 

▼この瞬間、星の上ツケ!

あなたならどうする?


▼以前は、ケイマに滑りでした

AI出現で、星下にツケから二段バネが大流行中です

 

▼白は部分的には、こう受けますよね

しかし、出来上がりの図は、いかにもキカサレで不満

黒がいいでしょう

 

▼白3とノビると、キカされは避けることができます

しかし、黒はスミにめり込んで、不満はありません

これの白3は、昨日のK1級が打った手です

 

▼互角の進行(つまり定石手順)

 

▼黒はシチョウがよければ、これも成立する

ちょっと複雑な手順ですが、これでも黒は勢力を得て悪くはありません

つまり、どうやっても黒が悪くなる図ができないのです

「ハメ手」ではない、という根拠はここにあります

もう少し研究の余地ありですが……

最善手の応酬で、もっといい図があったら、ご教示ください


負けても王者は王者

2019年09月29日 | ●○●○雑観の森

 

やはりアイルランドは世界トップであるの巻】

 

■アイルランドチームの清々しさを見てください。

つい先日まで、世界ランキング1位。

現在は2位ですが、優勝候補筆頭であることは間違いありません。

 

■囲碁高段者でも、こういうヒトはなかなかいません。

棋力だけでは、ダメです。

「真に強い」とは、こういうことをいうのでしょう。

 

■一夜明け、日本が勝った勝ったとばかり報じるTVに食傷気味です。

もちろん、これからも日本チームを応援しますが……。

 

■あ、今、ウェールズがいきなり先制しました。

世界3位と世界6位のゲームは開始3分が経過しました。

 


190929別荘

2019年09月29日 | 熱血他流試合記録

別の同好会(別荘)で実験碁の巻】

 

■K級と1勝1敗(4子局)

初戦は16目勝ち、2戦目は9目負け

平和な「打ち分け」でした

 

 

■初戦の流れをご覧ください。

 

▼白番のわたしは、右下スミの星の黒石に上ツケ

黒が受けたところです

わたしは次に、星の石の下にハサミツケます

これがなかなか相手にとっては厄介です

さて黒は上手く対応できるかどうか

 

▼左下スミにも、同じ手をやってみました

 

▼下辺に「大海原」ができちゃいました

かたじけない

白石の弱点といえば、左辺が少し薄いぐらいです

他の石は全部生きていますので、あとは消しに回って、白が勝勢でしょう

 

▼黒に中央を囲わせたうえでチリチリと消して小さくし、地合いで大差になりました

 

■このあとは、M五段とS3級の7子局を観戦。

前者は好敵手、後者はカベ突破道場高弟で本拠地同好会1級。

当然、ココロの中では後者を応援していましたが、大差で負けです。

7子局ですから、地合い換算で80~90目のハンディがあるのですから、

序盤は圧倒的に有利でした。ところが……。

要所要所で1路ズレた着点に石が置かれ、わたしはココロの中で

「そこじゃない。隣です、隣!」と叫びましたが、もちろん届きません。

 

■M五段は、おしゃべり碁。

「これでいこうか」「ここは我慢か」「やってくれるな」

とヤカマシイ。ちょっと、苦手です。

わたしはいつも返事せず、無視して黙って打ちます。

きょうも級位者相手にやっているので、「口だけは高段者ですね」とイヤミをチクリ。相手はニヤニヤしているだけで、とてもつける薬がありません。

「マナーは有段者ではありませんね」とまで言うと、さすがにケンカになりそうなので、ココロの中だけにしておきました。

でもSさん、これも修業のうちですよ。


ノーサイド精神 !

2019年09月29日 | ●○●○雑観の森

 

ラグビー代表選手は何故「居住地主義」なのかの巻】

 
・リーチ・マイケル(30) ニュージーランド
・トンプソン・ルーク(38) ニュージーランド
・松島幸太朗(26) 南アフリカ
・具智元(25) 韓国
・アマナキ・レレイ・マフィ(29) トンガ
・ジェームス・ムーア(26) オーストラリア
 (日本代表の一部メンバーの出身地)
 

■ラグビー・ワールドカップ(W杯)は、世界各国・地域から「20チーム」が参加し、熱い戦いが展開されている。11月2日まで全国12会場48試合。

■始まってみると、日本チームの快進撃や被災地でのおもてなしと交流など、にわかラグビーファンも含めて大盛り上がりである。

■さて、ルールを知らない人にはハードルが高いスポーツだが、話は簡単。相手の陣地にボールを置くか、ゴール内に蹴ったボールが入るか、で点数が入るというだけである。囲碁と一緒で、ルールは簡単しかし展開は複雑、なのである。
 

         ◇
 

■もう一つ、代表メンバーに外国人が多いのも???だろう。
 

■ラグビーの代表選出の方法は、他のスポーツとは違う。「国籍ではなく、3年以上その国に住むこと」などで代表になれる。もちろん外国出身だが日本国籍を取っている選手もいて、日本人と外国人を見分けることが難しいし意味もない。今回の日本代表は31人。日本国籍があるのは24人。「外国人」は7人。
 

■「国籍を問わない」ことになったのは、19世紀の「事件」がきっかけ。同じ大英帝国のイングランドとスコットランドの代表を巡る「いざこざ」から発している。
歴史的に対立した両地域だが、スコットランド代表だった選手が、その後にイングランド代表となったことで大問題になった。また植民地出身の選手を、帝国の選手にすることの是非を巡って紛糾した。
そんなこんなで「居住地主義にしたら、いいのでは」との声が、解決策として浮上したのだ。

■この表面的には「野蛮」で、中身は「紳士」のスポーツ。
戦いを終えたら両チームにカベはなくなる。
「ノーサイド精神」である。
観客席も、サッカーや野球のようにチーム別に場所が分かれていない。
好きな場所に陣取り、いいプレーには相手チームにも大きな拍手を送る。

■このスポーツが、五輪などでしばしば起きる選手による政治的メッセージがないのは、こういう理由からだ。

「金メダルが何個だったか」にこだわるメディアの後進性も、ここに出番はない。

22世紀のスポーツの在り方ではないか、と前々回投稿で書いたのは、こういうわけ。

愉快に過ごしたい

2019年09月28日 | ●○●○雑観の森
 
対局マナー入門「基本のキのおさらい」の巻】
 
■基本的には、囲碁の総本山・日本棋院のホームページをご覧ください。
いろいろありますが相手を不快にさせない」ことがマナーの大原則です。
それ以外は、そう大したことではありません。
 
対局のマナー(日本棋院ホームページ)
https://www.nihonkiin.or.jp/teach/lesson/school/manner.html
 

         ◇
 
  
■ややタブー的な話です。
 
趣味の囲碁同好会の中で、
「対局を申し込まれるのが多い人」と「対局を避けられる人」がいます。
自戒を込めて「これは危ないなあ」と思った順に記載します。
 
出典:牛窪義高九段「碁は戦略」(抜粋)
 
 

■危険度ランク(最も悪い)

 
 
 
■危険度ランク(かなりマズイ)

 
 
 
■危険度ランク(知っていると上品、知らなくても問題ない)
 

コウダテを、どこに打ちますか?
 
 


2図は「上作法」→盤上に一子が残っているので、相手が目算しやすい

3図は「無作法」→相手が数えにくく、間違える恐れがある
 
 

190928例会

2019年09月28日 | 本拠地同好会記録


勝っちゃいました!の巻】

 

■本当にいいゲームでした。

日本チーム、清々しく強いです。

 

▼今日の例会は「早退」。このゲームは見逃せません。

数あるチームスポーツでも珍しい「国籍不問の居住地優先主義」。

22世紀のゲームの在り方を示していると思います。

元々は帝国主義の矛盾から出来た苦肉の策ですが、いい雰囲気になりましたね。

ノーサイド文化も含め、他のゲームでもいいものはマネてほしいです。

この件は、また別の機会に。

 

▼例会は1勝2敗。

対局者の緊張感を削ぐ「マナー違反」が多く、楽しめませんでした。

同好会なのでストレートに「ヤカマシイ!」とも言えませんしね。

観戦者はくれぐれも心してください。 

 


「住所録」見直し

2019年09月28日 | ご挨拶・お知らせetc

 

「休眠関係を見直し」させていただきますの巻】

 

いつも当ブログにお越しいただき、ありがとうございます。

 

おかげ様を持ちまして、

フォロワー数およびフォロー数が増えてまいりました。

特にフォロー数はいつの間にか「上限近く」に達しつつあります。

こうした事情もあり「休眠状態の関係」を整理させていただくことにしました。

「年賀状住所録の見直し」のようなもので他意はありません

 

         ◇

 

具体的には、

①フォロワーさんのブログは全て残し、継続してのお付き合いをお願いする

②フォローを返していただいていないブログは原則的に解除させていただく

 ――という方向です。まもなく作業を始めます。

 

なお、フォロワーさんや、よく閲覧いただいている読者の方々を、

誤って解除してしまう可能性がゼロではありません。

ご無礼をお許しいただき、再度フォローボタンを押していただくよう、お願いいたします。


ノゾキの成功例7止

2019年09月28日 | 【カベ突破道場】

狙いを秘めた一撃の巻】


▼第7図 70~80 (以下、割愛)

白70のオシの意味は何か?

アルファ碁は、この一手に最も長い「2分4秒」を投じた

中央の黒を追求するのではなく、黒陣営に侵入する手段を選択したのだ

中央の白2子は囮(おとり)だったのか


白は76まで決めて、白78

これは地に換算すると30目近い大きな手

 

ここでイ・セドルは相手をせず、黒79

 

アルファ碁は中央の嫌味を解消する本手白80

 

互いに手抜き、手抜きの応酬で、盤全体を俯瞰した主導権争いが続く

 

この時点で、検討陣の判定は「全局的に白がやや打ちやすい」

 

       ◇

 

■この後、アルファ碁の細かいミス(開発責任者デミス・ハサビスはバグと認めている)が出ますが、逆転には至りません。

186手まで打ち、イ・セドル投了。盤面でほぼイーブンで、コミ7目半が出せず、投了はやむを得ません。 

 

■シリーズは5局打って1勝4敗。まさかの結果に囲碁界は騒然となりました。

しかし、これはAIによる碁界制圧の序章に過ぎませんでした。アルファ碁はバージョンアップを繰り返し、トッププロに5子置かせるほどになり、そしてグーグルは「囲碁での実験は終わった」として引退させました。同時に、進化過程の自己対局を公開し、わたしたちにプレゼントしてくれました。

プロは今、AIソフトを活用し、さまざまな新しい手を試しています。「ハンマーパンチ」でトップ棋士を次々撃破している上野愛咲美二段(17)も、熱心なAI研究でランキングを急上昇させています。


                  ◇


■「AIの碁」あるいは「AI研究による専門家の碁」を、これからも断続的に紹介します。わたしの感想を添えて、です。同時並行的に古碁も鑑賞しましょう。棋譜を50手100手あるいは最後まで並べると、必ず何かが見えてきます。

徳川家康と本因坊算砂が開いた碁将棋の世界は、幕府の庇護を受けて地歩を確かなものとしていきます。17世紀に実力十三段といわれた本因坊道策の出現によって、近代化がさらに進みます。そして大衆化へ。幕末に最初の大きな山が訪れ、昭和に再びブームが湧き起こりました。

碁の考え方や流行は、循環しています。

AIの新手と思っていたら、実は江戸時代の名人が打っていた」ということも少なくありません。

 

■古碁を鑑賞する時、定石が古くて役に立たないとか、コミがなかったから参考にならない、という声が聞かれます。確かに序盤は大きく変わりましたが、中終盤は古碁に分があるといわれます。

 

■いずれにしても、現代の価値観で歴史を語り尽くせるものでしょうか? わたしは疑問に思います。美しい布石、鮮やかな手筋の応酬、演舞のような手順の妙、ヨミの入った死活がらみのヨセ合い。それが感じられ、わたしたちの棋力向上にも参考になるなら、なにもいうべきことなどない、と思います。

 

■呉清源は晩年、古碁の価値について、こう話しました。

「古い碁を研究することは、プロなら当然のことです」

「最近の若い人は、海外の碁ばかり傾倒していて、大事な基礎となる古碁をなかなか並べないようです」

「古きも、新しきも、両方学んでこそです。なげかわしいことです」

この昭和の棋聖は「秀策全集」を片手に並べ続け、ついには持つ「手が歪んでしまった」ことでも知られています。

大三冠、趙治勲も「秀策全集」がボロボロになり「買い直した」といいます。

 

■新しいものも、古いものも、鑑賞と研究の対象とし、ぜひ楽しみましょう。

 
 
 
本因坊算砂(ほんいんぼう・さんさ、1559-1623年) 安土桃山期から江戸初期の最強棋士で、信長・秀吉・家康の三英傑の指南役を務めた。京都の寂光寺塔頭・本因坊の僧で日海と称し、後に本因坊算砂を名乗る。将軍家の命により、江戸に居を構え、俸禄を受けて家元筆頭・本因坊家の始祖に。碁打ち・将棋指しの最高位兼連絡係に任ぜられ、「一世名人」を務めた。三英傑はいずれも算砂に対し五子の手合割だったと「坐隠談叢」に記されている



 

ノゾキの成功例6

2019年09月28日 | 【カベ突破道場】

狙いを秘めた一撃の巻】


▼第6図 56~69 

白58のツケコシ

絶好の応手打診である


黒61はひねった受け方

相手のヨミ筋を外すのがイ・セドル流だ


石が絡み合って難解な戦いだが、白が争いの主導権を握っている


次の白70はどこか?