囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

ボヤキはマナー違反か?

2021年10月17日 | ●○●○雑観の森

 

【反則 じゃないけれど

 行儀が よろしくありません】

 

標題の投稿が、

ある囲碁ブログにあり

ネット碁愛好者のライン談話室

(12人加盟、わたしはオブザーバー参加)

において、管理人さん(元同好会長)が

引用しつつ、お題を出した。

「みなさんの感想を聞きたい」

ということである。


タブーの領域に近く

さいきん珍しく刺激的テーマである。

わたしは本音トークを期待しているが

さて、どうなりますやら。

全員、ひとことでも

なんらかコメントしてもらいたい。

 

わたしも

この話題には

「思うところ」が多々あるが

詰めて考え、展開していくと

長期連載になってしまうので

この投稿ではサワリのみ、

としておきたい。

 

大前提として、

日本囲碁規約にある「反則」は

以下の点であって

マナー云々は「その埒外である」ことを

断っておく。

 

*********************************************************************

 

■反則負け行為

【ハガシ】 一度打った自分の手を打ち直す。「待った」も同じ

【二度打ち】 相手の手番を飛ばして二手続けて打ってしまう

【コウの取り間違い】 コウ材を打たずにコウをとってしまう

【着手禁止点】 打った時点で、相手に取られる着手

 

■「反則」と「マナー」の違い

反則 ⇒もってのほか ⇒レッドカード(退場。プロは厳罰あり)

マナー違反 ⇒よろしくない ⇒イエローカード(警告。2枚で退場)

 

*********************************************************************

 

わたしの考えを、ひとことで言うならば

マナー違反は、時と場合と内容によりけり

原則的に余計なことを口走って碁を打つのは

下品であり忌み嫌われる。よって、控えたい。

ファンサービス旺盛な趙治勲のボヤキもあるが

井山裕太のように黙って打つのが正しい。

(強者は、勝って嫌われるのだから、

 物言いでさらに嫌われてはどうしますか)

 

特にアマの碁では、

どんなボヤキであっても

相手の受け取り方によっては

不快になることもあり

注意が必要である。

 

褒めごろし、ささやき作戦などと

受け取られることも少なくない。

 

とかく反感を買いやすい上位者が

上から目線でモノを言っている風は

危険極まりない。

 

本人は教えているつもりでも

あるいは、何気なくのつもりでも

そう受け取られないこともある。

 

 

 

 


さて、昭和の頃の碁はどうだったか――

1981(昭和56)年の棋聖戦七番勝負から

ボヤキの様子をつまみ引用してみる。

 

〝華麗〟の藤沢

〝美学〟の大竹が挑んだ

新旧対決の大勝負は

藤沢4連勝で負けなし

という意外な結果で終わった。


焦点は、

初戦の〝扇子の音がうるさい〟

と、かまされる想定外事件があり

終始押され気味の挑戦者・大竹のボヤキが

目立ったシリーズだった。

 

結果、大方の予想に反して

藤沢秀行が4局全てを制し、

ストレート勝ちで防衛する。

 

五連覇により

名誉棋聖の称号を得た

執念の大勝利となった。

しかし

後味の悪いシリーズであった。

 

 

■第1局 昭和56年1月13日、14日

黒・大竹英雄・挑戦者(十段)

白・藤沢秀行・棋聖

コミ5目半、持ち時間は各9時間

166手完、白の中押し勝ち

立会・武宮正樹本因坊

解説・石田芳夫九段

富山県高岡市・北陸文化ホテル

(第2局以降は、札幌、別府、新潟)

 

初日の1月13日10時26分

藤沢が一礼して退室。

対局室から約10㍍離れたロビーへ。

そこで、

「大竹君の扇子の音が気になる。

昼休みにでも武宮君を通じて、

音のしない扇子に変えてもらうよう

話してほしい」

という申し入れがあった。


13日10時58分
 
大竹「こんなことをしていたら時間がきれちゃう」

ぼやきとともに 扇子が激しく鳴る。

お茶を飲んだり アメをなめたり ツメをかんだり

……きぜわしい。

大竹は13に五十九分を費やした。

13を打ってからも

「おかしかったか」を連発していた。


13日13時(昼食後の再開)

大竹「先生、扇子はすみませんでした」

藤沢「いやいや無理を言ってすみませんねえ」

 

13日13時19分

藤沢が たばこに火を。

対局室で吸うのは、

これが朝から4本目で極端に少ない。

大竹が吸わないから

遠慮しているのかもしれない。

 


二日目の1月14日9時22分

黒65。

大竹は「持ち込みになった」

ぼやいていたけれど、

左上の黒三子は捨てるつもりなのである。


14日10時11分

大竹「ダメダメダメダメ……」


14日13時42分

大竹の ぼやき

一段と激しくなった。

 

 


■第2局以降の主なボヤキ


大竹「バラバラになってしまった。

あーあ、参り軒のおやじか」

ぼやき出した。

藤沢は「うふふっ」

笑って余裕がある。

 

     ◇

 

藤沢は一度振り上げた手を止めて

碁器に石を戻した

そして「手が早い」と独り言。

しばらく考えてから

また同じことを繰り返し

「軽率だったか」ぼやき始めた。

 

     ◇

 

「ええーい、いばられちゃたまらんよ」

藤沢が力を入れて白50と割り込んだとき、

大竹は席にいなかった。戻ってきて

「撲殺されたかな。

頭をガツンとやられた。

アタガンだ」

 

     ◇


「もろにつぶされちゃったぞ」

と 大竹の悲痛な声


     ◇


大竹「いかん、いかん、

軽率ヨビタイをやった」

と、白76を打てば

藤沢「おれの方がおかしかった。

軽率をやった」

と動揺、沈痛な声だった。


     ◇


息詰まる正念場。

何を思ったのか

「ウフッ」

と 藤沢が含み笑った

なにか楽しい予想手順を

頭にえがいたのであろうか。

すぐキッとした顔にもどる。

また たばこに火をつけた。

 

  


   


どうです。

ボヤキのオンパレード。

所作もいただけない。

棋界最高の舞台で、これです。

まだ緩かった昭和の碁の風景ですね。

 

とどのつまり

ボヤキが許されるのは

縁側や居酒屋の隅で打つような

「待ったあり」のヘボ碁ぐらいですか。

 

プロ、アマの別なく、ほどほどに!

 

(自分は平気で、相手が不愉快じゃ、相手がいなくなります)

(ため息とボヤキ癖、自戒を込めて「ココロして改めます」)

 



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