政治家の暴言でもっとも有名なのは「バカヤロー」でしょう。1953年の衆議院予算委員会にて、吉田茂元首相は社会党議員からの質問を受けて答弁していました。国際情勢に関する質問について、自身の見解はどうなのかと問われ、吉田元首相は少し熱くなってしまいます。社会党議員が「総理は興奮しない方がよろしい」と揶揄すると、これに対して吉田元首相は「無礼だろ」と返答、今度は社会党議員が「答弁できないのか君は」と言い返し、そして「バカヤロー」という発言になりました(発言はすぐに取り消していますが、これがきっかけで衆議院解散という状況まで突き進んでしまいます)。
これまで多くの政治家が暴言を発し、場合によっては政局を動かす原因となったり、自ら政治生命に終止符を打つこともありました。これは報道などで前後の発言を切り取られてクローズアップされてしまうことも一つの原因かもしれませんが、この世の中に政治家と言う職業がなくならない限り永遠に繰り返されてしまう、悲劇でもあります。
「アメリカは黒人が大統領になっている。これは奴隷ですよ。建国当初の時代に、黒人・奴隷が大統領になるなんて考えもしない」 (丸山和也参議院議員; 二院制の在り方の意見陳述にて)
「ナチスの手口に学んだらどうかね」 (麻生太郎副総理; 憲法改正と問われて)
「あの子、大事なときには必ず転ぶ」 (森義明元首相; フィギアスケートの浅田真央選手について)
「最後は金目でしょ」 (石原伸晃経財相; 福島原発事故に伴う中間貯蔵施設の建設をめぐり)
暴言のみならず、ヤジもひどいものです。2014年4月の衆議院総務委員会で日本維新の会の女性議員が人口減少対策について質疑を行っていた際、自民党議員から「子どもを産まないとダメだ」などとヤジを飛ばし、その後、謝罪に追い込まれました。また、同年6月には東京都議会で晩婚化や晩産化対策について質問した女性都議に対し、自民党議員から「自分が早く結婚すればいいんじゃないか」「まずは、自分が産めよ」などのヤジが飛びました。
2016年2月の衆議院予算委員会で「保育園落ちた日本死ね!!!」の待機児童問題に対する憤りをつづったブログでの答弁においては「中身のある議論をしろ」「誰が書いたんだよ」「ちゃんと本人を出せ」などの低レベルのヤジが飛んでいます。
ほとんどの場合、本人が発言などを撤回し謝罪していますので、こうした発言は社会的に許容されないという自覚は持っているのですよね。それでも、いつもいつもこのような発言が繰り返し出てくるというのは政治家は一般社会とは別世界の思考回路を持ているのではないかと思えてしまいます。
さて、今日決勝を迎える第88回選抜高等学校野球大会に初出場で準々決勝まで勝ち進んだ滋賀・滋賀学園高の選手らに対して、滋賀県の県議(自民党)が3月16日に開かれた激励会後に暴言があったそうです。
激励会は県教委が開催し、選手や監督らが県庁正面玄関に並び、滋賀県知事らが励ましの言葉を述べて送り出しました。この発言をした県議は出席していなかったそうです。
激励会の終了後に選手らが県庁西側の路上に停車していた大型バスへ移動したところ、県議が突然「なんちゅうとこ止めてんねん」「誰の許可を得てん」などと怒鳴り、「おまえらなんか一回戦負けしろ」と叫んだとのそうです。
学校関係者はその場を取りなそうと、県議に「すみません」と謝って発車させ、バス車内では野球部長が「気にするなよ」と呼び掛けたそうですが、選手たちは状況がのみ込めない様子だったそうです。学校側は「大舞台を前に選手を動揺させたくなかったのでその場では謝罪した。士気をくじくような言葉を選手らにぶつけて欲しくなかった」と話しています。
この県議は野洲市選出で6期目、議長経験もある方だそうです。毎日新聞の電話取材に「止めてはいけない場所にバスを止めていたので注意しただけ。そんなこと(『負けろ』と言ったこと)は二の次だ」と話しているそうです。
なお、バスは県教委が指定した場所に止めていたそうです。
この県議の方こそ「なんちゅうこと言ってんねん」と怒鳴りたい気持ちです。
「政治家は発言に、『言っていい事・悪い事』、『言っていい人・悪い人』、『言っていい時・悪い時』に普段から気を配らなければならない」 by 田中角栄元首相