野球小僧

羽生善治 / 永世七冠

今年は将棋界がニュースになることが多かった年でした。

藤井聡太四段が歴代最多の公式戦29連勝
加藤一二三九段引退・・・ひふみんブーム
林葉直子、藤井聡太四段巡る連勝記録の予想的中 。「予言者」と驚きの声も
三浦弘行九段の将棋ソフト不正“冤罪”事件和解(きっかけは2016年)
竹俣紅女流初段「彼氏いたことない」

そして、12月になってからのビッグニュースが、「羽生善治棋聖が史上初の『永世七冠』獲得」です。

現在プロ公式戦は17個ありますが、このうち「竜王戦」「名人戦」「王位戦」「王座戦」「棋王戦」「王将戦」「棋聖戦」が七大タイトルと呼ばれています。

将棋で「永世」というのは、これらのタイトルの前に付けられ、永久に名乗ることができる称号のことです。タイトルごとに違いますが、名人・棋聖・王位・王座・棋王は、通算5期、竜王は通算7期、王将は通算10期、タイトルを保持すると、永世の称号が贈られることになっています(なお、王座のみ名誉王座となります)。

既にニュースで報じられていますが、第30期竜王戦七番勝負の第5局2日目が12月5日、鹿児島県指宿市「指宿白水館」で指され、挑戦者の羽生善治棋聖が渡辺明竜王を87手で破り、通算4勝1敗でタイトルを奪取しました。

これにより、羽生棋聖は2003年以来、15期ぶりの竜王復位を達成し、通算7期となり「永世竜王」資格を獲得しました。また、将棋界の8大タイトルのうち新設の「叡王」以外の7タイトルで永世称号の資格を得たことになり、史上初の「永世七冠」資格者となりました。

羽生棋聖は1970年、埼玉県所沢市生まれ。4歳からは東京都八王子市で育り、1985年に中学三年生でデビューして以来、タイトル獲得は通算98期、タイトル戦への登場は132回。2014年に公式戦通算1300勝を達成し、トップ棋士として将棋界に君臨しています。

棋風は居飛車中心ですが、時には振り飛車もこなすオールラウンダー。定跡からはずれた「未知」の局面の戦いでも強く、若手が考案した新戦法も積極的に取り入れ、相手の戦型に合わせて指す柔軟さも持ち合わせています。序盤、中盤、終盤と隙がなく、圧倒的な終盤力から見せる逆転勝ちは「羽生マジック」と呼ばれています。また、集中するにつれて目付きが鋭くなり、相手を下からジロリとにらむ独特の「羽生ニラミ」、自分が勝ちだと分かると、「手が震え出す」のです。しかも震えたら、100%の勝ちというのも、有名です。

記憶力は抜群で、重要な棋譜はすべて頭に入っており、「10代後半のころは、研究会で隣の人が指している将棋も覚えていました」と語るくらいです。なお、チェスが趣味とのことですが、チェスでもトップレベルの実力を持つそうです。

将棋との出会いは小学一年生の頃でした。学校が終わると、毎日のように遊びに行っていた友達の家に将棋盤があり、将棋のルールは友達たちから教わったそうです。小学二年生の夏に子ども将棋大会に出場しましたが、1勝した後、2連敗で予選落ちだったそうです。しかし、その後、将棋道場「八王子将棋クラブ」に通うようになったとのことです。

羽生棋聖は「将棋で遊んでいる方が面白かった」とのことで、デパートの将棋まつりなどにも広島東洋カープの赤い野球帽をかぶって出場し、次々と勝利したことで、当時、将棋ファンの間では「恐怖の赤ヘル少年」と話題になっていたそうです。ちなみに、これは母親が見つけやすいよう、かぶらせたものだったそうです。

1982年、小学六年生の時に二上達也九段に入門し、奨励会入会試験にも合格します。その後、わずか1年あまりで「初段」になるなど、破竹の勢いで昇段していき、1985年、15歳で四段になり、プロデビューし、加藤一二三九段、谷川浩司九段に続いての史上3人目の中学生棋士となりました。

「中学時代は奨励会(プロ養成機関の例会)などで月3日は学校を休んでいました。でも、友達にノートを借りたり、努力している姿を先生に見せたりして、何とか赤点は取らなかった。試験の山かけは、よく当たりました」

羽生棋聖と同年代には、故・村山聖九段(追贈)や佐藤康光九段、藤井猛九段、森内俊之九段など、いわゆる「羽生世代」と呼ばれる強豪棋士たちが揃います。また、その上には谷川浩司九段という「天才」がいました。

デビューからわずか4年の1989年、初タイトルの「竜王」を獲得します。19歳2ヶ月でのタイトル獲得は当時の最年少記録でした。1995年には史上初めて「六冠」となり、「七冠」制覇に王手をかけました。

ここで立ちはだかったのが、目標としていた当時の谷川浩司王将でした。七番勝負の第7局、同一局面が4回現れる「千日手」による指し直しの末、谷川王将が勝利し、4勝3敗でタイトルを防衛しました。谷川王将は当時、阪神大震災で神戸の自宅が被災しており、5局目まで名古屋市にある奥さんの実家から対局にっていました。意地の防衛といわれました。

七冠を目前に敗れた当時の羽生六冠に「再挑戦は難しい」という見方がありました。しかし、ここからが驚異的であり、当時獲得していた6つのタイトルの防衛に成功し、翌年、谷川王将への再挑戦を果たし、王将戦では4連勝で谷川王将を圧倒します。そして、前人未到の「七冠」制覇を成し遂げました。こうして、「天才」の世代交代が始まりました。

そして、その七冠独占から約20年後の2017年。羽生棋聖は9月に「王位」、10月には「王座」と続けてタイトルを失い、2004年以来13年ぶりに「一冠」となりました。

「羽生の時代は終わった」

そんなことも言われました。現在の将棋界は佐藤天彦名人や豊島将之八段、羽生棋聖を破ってタイトルを獲得した菅井竜也王位と中村太地王座など20代の棋士の時代です。この世代は、あの天才・谷川浩司九段からタイトルを奪取していった「羽生世代」と、どこか重なるとも言われています。その「羽生世代」も、いまやアラフィフとなって、気力、体力が必要な棋士にとって、厳しい年齢になりつつあります。羽生棋聖と名勝負を繰り広げてきた森内俊之九段は2017年3月、棋士の序列を決める「名人戦」順位戦でA級からB級への陥落が決まると、フリークラス転出を決断しました。これは、森内九段が二度と名人復位を目指さないことを意味するものです。

一方で若手の台頭が著しい現在にあっても、羽生棋聖はトップランクのA級棋士として君臨しています。一冠に陥落した2004年、あの頃にも「羽生の時代は終わった」という声がありました。でも、直後に次々とタイトルを奪取し、同年度内には「四冠」(王座・王位・王将・棋王)となる破竹の勢いを見せました。

2007年に二冠になったときも「羽生は終わった」と言われましたが、この時も、羽生棋聖は風評を覆して、翌年には名人と棋聖を奪取し「四冠」となりました。2011年には、またも二冠となり、「羽生の時代は終わった」という声はこの頃にもありました。

それでも、「羽生の時代は終わらなかった」のです。

2012年には「朝日将棋オープン戦」などで優勝、NHK杯では4年連続優勝を果たし、将棋界初の「名誉NHK杯選手権者」となりました。史上3人目となるA級順位戦での全勝優勝も達成しました。1991年から現在に至るまで、常に一つ以上のタイトルを保持し続けている羽生棋聖。一度もタイトルを獲得せずに引退する棋士が数多くいるなか、この記録は快挙だと思います。

羽生棋聖の強さは、レベルの高い競争相手に恵まれたことが挙げられます。まず、デビュー当初から中期にかけて目標にしつつ対戦した谷川浩司九段を頂点に、「羽生世代」と呼ばれる森内俊之九段、佐藤康光九段ら、そして、年下の渡辺明棋王らとも、死闘を繰り広げて自身のレベルを高めてきました。

また、勝負を超えた探究心が言われています。日本でトップクラスの実力を持つチェスや、最近では人工知能(AI)への関心も高く、興味の幅は多岐に渡り、他分野で得た知識を将棋に還元する、将棋の本質へ迫りたい、という意欲には衰えがありません。

そして、敗戦を引きずらない精神的な強さも偉業の要因でしょう。大一番で敗れても、次の対局に何事もなかったかのように臨んでおり、連敗は極端に少ないのです。

これらは、私たちも見習わなければいけないでしょうね。

羽生棋聖は年が明けると通算100タイトルの獲得、そしてあと42勝に迫った大山康晴十五世名人が持つ歴代最多の1433勝に挑んでいきます。いつまでも「羽生の時代」が続くとは羽生棋聖も思っていないと思います。それでも、新世代の波を肌で感じながらも、47歳の羽生棋聖は、まだまだ歴史に名を刻むことだと思います。


コメント一覧

まっくろくろすけ
eco坊主さん、こんばんは。
確かに七冠は素晴らしいです。ただ、凡人の私にはタイトル一つひとつの違いがちょっと分かりませんので、ここはひとつ、統一王座「八冠」にして欲しいです。
ついでに「IWGPヘビー級」「IWGPインターコンチネンタル」「NEVER無差別級」に「IWGP USヘビー級」もよく分かりません。

責任者出てこ~い!!
eco坊主
おはようございます(*Ü*)ノ"☀

将棋は好きなので結構ニュースはチェックしています。
>竹俣紅女流初段「彼氏いたことない」
 ↑この件だけは知りませんが・・・

目覚めたのは大山康晴さん、中原誠さんの時代です。
谷川浩司さんの頃も結構見ていたと思います、NHKの将棋番組は。

永世7冠って凄いですよね~
小島聡でさえシングルは4冠でしたもんね(笑)

今、注目しているのは藤井聡太四段・・・ではなくて
「出雲のイナズマ」里見香奈5冠です。(だってライバル県の出身ですもの)

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