Ｖｏｌ．２０ 新たなる旅立ち

さあ、新たなる一歩を踏み出そう。不安もあるけど、きっと今いる場所では見ることの出来ない景色が広がっているはずだから・・・。

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３人で渋谷で会ってからも、２人はそれぞれの道を順調に歩いていた。
自分にとって、２人の活躍や頑張りは誇りであり、自分も頑張れる力の源でもあった。

しかし、プロの道というのは平坦なものでははい。
時には高い壁や分かれ道が目の前に現れ、それを乗り越え、選択するのは自分しかいない。

今年（２００６年）の４月初め、僕はＭ君に異動で職場が変わったことを伝えるメールを送った。
すると、すぐに返事が送られてきた。
そのメールにはこう書かれていた。

「４月はいろいろ新しいスタートの月だね。実は俺も新たなスタートなんだ。劇団を退団しました。もっと早く話そうと思ったけど、なかなかタイミングがね・・。」

僕はこのメールを読んで、「やっぱりそうだったんだ」と思った。
というのも、今年に入ってからＭ君が舞台の話をすることが少なくなっていたからだ。
彼の退団を僕はうすうす感じていたのだが、そのことを聞くことは出来ずにいた。

Ｍ君は６年間いた劇団を辞めた。
この劇団は、僕達が経営スタッフの採用試験を受け、２人が知り合うきっかけとなった場所。
僕の中で様々な思いが錯綜した。

それから２ヶ月が経過した６月初め。
僕が私用で東京へ出かけることになったので、Ｍ君と一緒に飲むことにした。
場所は奇しくも、この１年半前、高橋君も含めて初めて３人で顔を合わせた渋谷だった。

退団してからのＭ君は、バレエやダンスを教えながら生計を立てていた。
しかし、現役の俳優から引退を決意したわけではなく、舞台やテーマパークのショーのオーディションを色々受けていた。
彼の中には、大勢の人の前で歌い、踊ることへの情熱がまだまだ燃え続けているのだ。

そして、この時、彼の口から嬉しい知らせを聞くことになった。
夏休み期間中限定で、ハウステンボスの屋外ステージで毎夜行われるショーのオーディションに受かったというのだ。

「新たなるスタートの第一歩として、また一から頑張ろうと思ってるよ。」

そして、７月１５日、Ｍ君は新たなる一歩を踏み出した。
その夜、ショーを終えたばかりの彼からメールが届いた。
そこには、舞台衣装を着ている彼の写真が添付されていた。

この写真を見て、僕は彼の行動力の凄さを改めて感じるのだった・・・。
【次回へつづく】

～お知らせ～
Ｍ君の出演しているショーは、７月１５日～９月３日まで、毎夜行われています。
今夏、ハウステンボスへ行く予定のある方は是非、このショーをご覧下さい。
なお、屋外ステージのショーのため、雨天時は中止となるそうです。