どんな本でも本は本

短編&アンソロジーを中心に、私が読んだ本の感想をズバッと書いちゃう超不定期ブログです

ジャスト・ア・フレンド―彼はただの友だち―

2008年04月22日 | 新潮社(文庫)
題名 ジャスト・ア・フレンド―彼はただの友だち―
著者 白石公子
出版社 新潮文庫
価格 388円(税別)


全104篇。
白石さんのエッセイ集のようです。あとがきを読むと25~27歳に書いたものだそうで、今の私と近いこともあり、共通点がいくつかありました。

全104篇もあるのですべての感想は書けないので、気になったものをいくつか紹介します。


『石蹴り遊び』学校帰りにひとつの石ころを蹴りながら追いかけている。
→そうそう!やったことある~と懐かしく思えました。絶対に家まで辿りつくことがなかった気もします。

『真夏の夜のいたずら電話』留守電に「おれのは大きいんだぞお」と入っていた。
→私は会社でそういう電話を取ったことがあり、つい思い出しちゃいました。その時はビックリしてすぐ切っちゃったけど、今ならなんか反撃できる気がします。ただ、かけてくる人も相手が男だったらどうするつもりだったんだろう?と思ってしまいます。


『美しい男の子たち』近頃の男の子たちはかわいく整っているように思う。そして女のほうが汚い。
→キレイになるための化粧が逆に肌を傷つけているのでは?と思ってしまいます。私はお洒落に興味を示さない学生時代を過ごしてきたので、先日女子中学生たちが「あのシャンプー良いよね」「あの香水は良い匂い」「髪を染めるならあのメーカー」など…お洒落について語っているのを見て付いて行けないわ~と思ってしまいました。別に付いていく気もないけど。


『ホテル青山』ホテル青森まで、と言ったはずがラブホテルのホテル青山に連れていかれた。
→地元ネタ、しかもホテル青山が近所のため、おかしくて笑っちゃいました。行き先ではないけれど、私は苗字を間違えて覚えられて、話してる間ずっと違う苗字で呼ばれてたことがあります。もう会わない人だからいいだろうと、ずっと呼ばせてましたけど…

放課後。

2008年04月20日 | ピュアフル文庫
題名 放課後。
著者 草野たき/梨屋アリエ/深沢美潮/川上亮/中島京子/折原みと
出版社 ピュアフル文庫
価格 560円(税別)


ランチタイム/草野たき
…山田明子、5兄弟の長女で中2、秋田県生まれ。ヨーロッパに憧れ、ランチはサンドウィッチかパスタ、それに果物と決めている。私は本当はフランスかイギリスに生まれたかったのに、どうしてこんなところにいなくちゃならないんだ!自分を好きになるってどういうこと?

月の望潮/梨屋アリエ
…玉木を見つめている緑川と、緑川を見つめている自分は片思い同志だと思っていた。しかし花火をした夏の日、誤解を生んでしまい…

放課後の約束/深沢美潮
…高校時代の放課後、対照的な沙耶と梨李子は「お互い壁にぶつかった時、全力で越えさせよう」と約束した。そして5年後…沙耶は危ない男諒一に振り回される毎日を送っていた。そこにロンドンにバレエ留学していた梨李子が帰って来て、昔の約束を思い出す。

彼女の不機嫌そうな革靴/川上亮
…革靴作り教室に通うことにした松井正和は、講師の陽子と出会う。そして彼女を好きだと自覚し、勇気を出して告白すると意外にも良い返事が返ってきた。しかし年が離れていることもあり、俺はいつも陽子さんとの距離を感じていた。ある日、セレクトショップに陽子さんたちが作った靴を置いてくれる話がきたのだが…

ゴセイト/中島京子
…放課後になるとどこからかあらわれる“ゴセイト”の古野君によく話かけられるようになった。古野君は転校生で人気者の菅沼君に恋をしてしまったそうで、ふたりの話題はいつもその話。しかしある出来事から古野君は現れなくなる。

道草少女/折原みと
…小学校時代の私は道草ばかりしていた。見知らぬお姉さん、警察官、山姥風のおばあさん、スナック・クロちゃんなど…今は危ない世の中だが、当時はみんな優しい人たちばかりだった気がする。


『月の望潮』の勘違い具合が好きです。
思春期でもある高校時代ってちょっとしたことが気になってしまうもので、大抵は勘違いが多いんです。

『彼女の不機嫌そうな革靴』は、松井くんの勇気を尊敬します。
私も仕事で高校生男子と話す機会が多いんですが、年下の一生懸命な姿を見るのは年上の女にとってはたまらないものなんですよね。また素直でよろしい(*^_^*)

『道草少女』では自分の小学生の時のことを思い出しました。今思えば結構寄り道してたな~とか、遠くまで遊びに行ったな~とか。今の世の中だと、小学校に親が車で迎えにくるというなんとも不思議な時代になりましたからね。かわいそうでなりません(ToT)

秘密。私と私のあいだの十二話

2008年04月04日 | メディアファクトリー
題名 私と私のあいだの十二話
著者 吉田修一/森絵都/佐藤正午/有栖川有栖/小川洋子/篠田節子/唯川恵/堀江敏幸/北村薫/伊坂幸太郎/三浦しをん/阿部和重
出版社 メディアファクトリー
価格 570円(税別)


ご不在票-OUT-SIDE-/ご不在票-IN-SIDE-…吉田修一
彼女の彼の特別な日/彼の彼女の特別な日…森絵都
ニラタマA/ニラタマB…佐藤正午
震度四の秘密-男/震度四の秘密-女…有栖川有栖
電話アーティストの甥/電話アーティストの恋人…小川洋子
別荘地の犬 A-side/別荘地の犬 B-side…篠田節子
〈ユキ〉/〈ヒロコ〉…唯川恵
黒電話--A/黒電話--B…堀江敏幸
百合子姫/怪奇毒吐き女…北村薫
ライフ システムエンジニア編/ライフ ミッドフィルダー編…伊坂幸太郎
お江戸に咲いた灼熱の花/ダーリンは演技派…三浦しをん
監視者/私 / 被監視者/僕…阿部和重


ひとつのストーリーを2人の別主人公の支店で綴った短編12編。
出来事や出会いが立場の違い、状況の違いでどう受けとめられるのか、言葉と言葉の裏にあるものが描かれた不思議な一冊。(背表紙より)

悲しい話、楽しい話、意外な話、偶然な話、かわいい嘘の話など、それぞれが4ページくらいと短く、バリエーションもいろいろで、本当に読みやすい本でした。

中でも好きなのは、森絵都さんの話と唯川恵さんの話。
森絵都さんの話は、初めてバーに行った女と初めて女に声を掛けた男の話で、お互いバーにいる時の行動や言動がそれぞれに書かれていて、最後も良かったです。

唯川恵さんの話は、美人なユキはブスになる夢を、ブスなヒロコは美人になる夢を見る、という話。普段は悪い思いをしてるんだから、夢くらいは良い思いをしてもいいでしょ、というヒロコを応援したくなります。うまく逆になっていて面白かったです。

アンボス・ムンドス

2008年04月03日 | 文藝春秋&文春文庫
題名 アンボス・ムンドス
著者 桐野夏生
出版社 文藝春秋
価格 1300円(税別)


植林
…安売り量販店で働く真希は暗い顔のデブ女。兄夫婦に自分の居場所を取られそうになるし、自分は一生このままなのだろうかと思っていた。そんな時、昔起きた大事件の中心人物だったことを確信する。それから真希は強い自分に生まれ変わったのだが。

ルビー
…登喜夫はホームレスになって、人の恋しさを知る。ある日寝泊まりしている公園にルビー・モレノ似の女が現われた。ルビーは泊まる所が無いため、段ボールハウスに泊まることになった。それと同時に、登喜夫たちはルビーを“もの”として共有することになり…

怪物たちの夜会
…田口と不倫をして9年が経つ。昔に戻れないもどかしさから、田口の自宅を訪ねた咲子は…

愛ランド
…特に仲が良いわけではない鶴子、佳枝、菜穂子の女3人は今年も海外旅行に来ている。エステで気分が良くなった佳枝が、「告白ごっこをしよう」と言い出す。そして3人それぞれの強烈な告白が始まる。

浮島の森
…藍子の父は文化勲章を貰っている作家の北村敬一郎。もうひとりの父は母と再婚したこれまた作家の赤木。その赤木の甥である龍平は自分の夫だ。文人一家に育てられた藍子の元に、回顧録を出版しないかと石鍋が訪れる。

毒童
…寺を継いだ義父と弟が嫌いだ。こんな生活、もううんざりだ。だって私はあの有名な神野与五郎の娘なんだから!ある日寺にホームレス風の親子が現われ、お金を要求してきた。2歳になる男の子には特殊な才能があるそうで、思い付いた袈裟子は子どもを借りることにするが…

アンボス・ムンドス
…生徒が事故で死んだ時、私は教頭と最初で最後の海外旅行に行っていた。彼女は本当に事故死だったのか?謎は多く残り、本当のことはわからないままだ。


サスペンス?と呼ぶべきでしょうか。

ストーリーが好きなのは『毒童』です。はらはら、ドキドキ感が良いです。結末にも「そう来たかぁ…」と感動しました。


表題作に書かれていましたが、「アンボス☆ムンボス」は“両方の世界、新旧ふたつの世界”という意味だそうです。

そうやって見てみると、話の登場人物、いや、世の中すべての人に“裏表”があるんだな、と思います。醜い部分が無い人なんていないし、誰にも言えない思いがあるのが普通なんだよな。