彼は一つの卵を手にしてそれを見つめる
丸、の一言では片付けられない曲線と
硬いようで脆いようで実は硬い殻を持ったそれの中には
白と黄、それだけが詰められている
それだけが詰められている?
それは、違う
この不思議な曲線が守っていたものは
殻に守られた白に守れた黄色に守られた、もの
それをすくいとって彼は
これをどう調理しておいしく食べようかと
笑って、言う
(玉子焼とか目玉焼きとかはありきたりすぎるから)
(あたしは何も言わない)
誰かがやってきて
彼に何か話しかけて
ああ、良いと彼は言う
ふっと、わかる
彼の耳が手にしたのは
『あの子』の料理法
美味しい、おいしい
『あの子』のカタチ
次々と人が現れて
彼に教える、『あの子』の行方
誰かがしゃべり
彼はうなずく
誰かが笑い
彼が笑う
あたしは見ている
見ている
ふと見つけた彼は同じ道を行く事を知った
ついでに私も同行する
後ろに
50m
近くなく、少し遠い距離で
ゆっくり
歩いて
上を見たら
ああ、可愛い女の子ですね
あたしも話しかけてみたい子なのよ
凄く明るそうで、なんて素敵
良かったですね、ああいいな
あたしも欲しいです
あたしも欲しいですよ
と
追い越して
笑う
道が
遠い
気づいてない
知らない
そんなのしらない
あたし、しらない
そんなことしりません
だからこれはこれで
気づいてない
気づいてない
気づいてない
しらなかったら、これは
人が勝手につけるものにならないんでしょ
じゃあ気づいてない
知らないふりをする
時点で気づいてる、なんて、
(イワナイデ!)
『あの子』の調理法とか
『あの子』のカタチとか
『あの子』の行く先とか
それさえ、知っていれば
そばに、なんて言わない
だから少し位は言わせて
(質問ぐらいしても)
(拒絶、されないなら)
(皆と同じようにふるまってみるから)
(変にならない、から)
1.3秒喋って歩きたい、だなんて
(贅沢?)
良いかな、良いかな こんな変な子だけど良いかな尋ねたい尋ねれない
P.S.梨本Pの「心の形」から、ふっと。関係性ないですが(下)