空風

詩&小説や日常生活を書いたりしています。
只今短詩に挑戦中。
目標:一日一更新。

狂い少女は花から何も感じない

2013年01月14日 17時52分58秒 | 小説+絵




「赤い花束なんて欲しくないわ」

そう呟く少女は実に不機嫌そうだ。
少女、というには少し年齢が上だが、大きな瞳をくっつけた童顔で頬をぷっくり膨らませる姿は、とても「少女」らしい。
両手に握るは、赤い赤い薔薇の花束。大量の花はどれもみずみずしく枯れているものは1本もない。どの花も大きく花びらを開かせて虫たちを誘っていた。
しかしその花の茎を握る手は遠慮などなく、手のひらからは濃い緑色の汁が少々滴っている。茎についた棘は処理されておらず、薔薇の汁と共に少女の赤い血も滴り落ちていた。
緑と赤が混ざって、落ちる。その光景はなんとも痛々しい。しかし少女はまるで痛みなど感じていない顔だ。いや、決して少女に痛感がないわけではない。だが少女にとって痛みなど空気を吸うことと同じようなものなのだろう。
気にすることでもない、というように、少女はまた言葉を紡ぎ始めた。


「花なんて、弱弱しいもの。木の棒でも力をこめて振り落とせば武器になれるわ。
 でも花は武器になる前に自分の体を壊しちゃうもんね。」

武器になれないものは、少女にとってゴミ未満の存在であった。
少女は色んなものを欲する。時によってそれは様々だが、今まで「花」を求めたことはそういえば一度もなかったな、と、少女の目の前にいる男は考えた。
少女にも、美徳はある。だが少女は花から美徳を感じることができないようだ。


「食べても、そんなに美味しくないし。じゃあ血で染めようとしても、
 もう真っ赤なんだよ、この花。全然面白くない!」

面白くない!いーっ!と少女は唇を噛み締めてかんしゃくを起こした。
手に握られていた花の茎はみるみるうちに細くなり、今にも千切れそうだ。それでも花は未だに凛と咲く。咲くことしか出来ない、とも言えるのだが。
少女は何か小さく叫ぶことを繰り返していたが、少しすると冷静さを取り戻した。
大きく深呼吸を3回繰り返して、ふっと前を見た。

前には男がいる。
しかし少女は男を見ているわけではない。


「何か」に狙いを定めたのだと、男は感じた。


「あーあ、おなか減っちゃった」


にひひ、と笑った少女は、手に持っていた花をぱっと離した。足元に落ちた花は泥にまみれたと思えばすぐに踏み潰される。少女の足に。
少女は足元の花から興味を失い、今は宿りし食欲を満たしに大地をかける。



「今はね、胸肉を食べたい気分なの」



そう言って少女は、花束をくれたという女が待つ場所へ駆けていった。
帰ってくる頃には今度は少女と女の白い胸元に紅い大きな花が咲いているのだろう。
それが表面上のものなのか、えぐれているのかはさて置いて。




貪欲な少女と男の特に何ともない話

having―絵

2010年11月28日 17時45分23秒 | 小説+絵
どうも、月空です。

また絵出しにきました。それだけしかすることないか自分


絵自体は1年前に塾でふと思いついたモノです。

そしてそれを最近開催された美術祭で使わせていただいた、という感じ。

タイトル考えるとき凄く悩みました。

で、having。


(心・心臓?を)食べる

(化け物・歯を見せて笑う心を)持つ

(それらの事実を)呑みこむ


コップから零れた液体から見える図は偽物か、はてまた。



な、感じです。

以上、月空でした。

花アメとウサギ―絵

2010年11月23日 14時03分39秒 | 小説+絵
どうも、月空です。

毎度毎度ツイッターログで申し訳ありません。元気です^p^

部活も美術部に変わったり塾11月いっぱいで止めたりと色々変化はありますが

本質はあんまり変わってない・・・と思われ


記事に貼ってある絵は、美術室でガツガツ描いたばーちゃん宛の絵ハガキをpixiaで加工したものです

最初スキャンした時は顔までピンクが浸食してて慌てて補正しました

・・・どうしてそうなった/(^0^)\


また後で絵UPります。pixivのあとでね!!

以上、月空でした。

イラスト

2010年03月04日 14時02分35秒 | 小説+絵
どうも、月空です。

先ほど絵をスキャンしまくりました。

他ブログにUPする分もあるので、今のうちに全部あげときます。

暇があったら、後日UPした絵をpixivにもあげとこうかと思います。

絵に変更点は特にないです。

どれも馬鹿に大きいので、表示サイズは小さく設定しています。

原寸サイズはクリックしたら見れるようにしておきました。


行く先無知帯   ららら世界

ハナノサクミチ   透間時計


2つ目の絵以外は色鉛筆です。2つ目の絵は水彩色鉛筆で筆塗り。

以上、月空でした。

排水溝―絵

2010年03月04日 10時33分58秒 | 小説+絵

汚い水に足を浸からせてでも歩んでみせよう


***


絵をスキャンするからファイルは空にしておこう、としてたら

以前スキャンしておいて放置してた絵があって

消すのももったいなかった、ので・・・



絵の説明?ノーコメントさ!

BGMが梨本Pの「あぶらむし」であることは書いておきます。

以上、月空でした。

リコリスの斑紋―詩物語

2010年01月10日 10時53分09秒 | 小説+絵
(アルカロイド な ヒト)





 赤く照らされる廊下をゆっくりと歩いていると、隣の『彼』に時間を尋ねられたので腕に巻いてある時計に目を向けた。しかし、父が渡してくれた機械式時計の読みにくさ―どう読めばいいのかよく分かっていない、が正解―に少女は大苦戦を強いられる。時計と睨め合いっこをしている少女に今更ながら溜息をついて、隣にいた少年が少女の細く折れそうな腕を掴んで時計の針が指す時間を読み上げた。
 ――・・・17時34分。カラスの鳴く声が聞くごとに遠くなっていく。

 少年にせかされ、少女は渋々小走りに目的の場所へと向かった。タンタン、とリズミカルになる廊下と靴の擦れる音に密かに楽しさを覚えながら、前を行く。隣に沿うように走る少年はまだ何か不満なのか(何が原因なのかを少女はよくわかっていない)、ぶつぶつと独り言を呟くが少女は無視して廊下と奏でる音に心全て寄り添っていた。
そのため後で少女たちは目的の部屋を通り過ぎてしまい、後でこっぴどく少女は少年に叱られてしまうが、廊下と一緒に演奏出来たことに満足した今の少女に言葉など一切通じなかった。酷くのんきな奴だ、と少年のつくため息はとうに100を超えた。

 何年も使い古された扉は思うように動かず、少し力を入れなければ「閉まっているのか?」と勘違いしてしまいそうだ。幸い少女はここのクラスの人間だ。・・・クラスの人間、と言っても、半分以上の人間が少女を「クラスメイト」だとは認識していないのだが。
そんな事も気にかけず扉を力任せに半分開けて、中にするりと忍びこむように入っていった。少女も少年も痩せ形なため、少ない力全てを出しきって扉を開けるなんて無駄なことはしない。まだこれは二人だからいいとして、もし後ろに他の人が入ろうものなら気を悪くしながら半開けされた扉を全開にするところなんだろう。
そろそろコイツにもそのことを伝えておかなきゃなあ、と一人考えていた少年が前を踏みしめ行こうとするとそこにあったのは壁、ではない、棒のように立っていた少女だった。


「なんだ、お前。早く忘れもの取りに行けよ」
「・・・ね、アレって」


 少女が指さすので一瞬、幽霊か?という馬鹿なことも考えてしまった。改めて指さす方向に目を向ければそこには意外な人物が机に座って外を見ている。乱入(?)してきた自分たちには一切目もくれず。
 記憶力の悪い少女は、一応顔は覚えたが名前が出てこない様子だった。少年はずば抜けて、とまでは言わないが一定の記憶力があったので遠くから見た少女の顔、座っている机の位置から、特定することが出来た。


「紗絵さん」
「・・・あ、そうそうそんな名前だった」


 一欠けらも思い出せなかっただろう、という本音は胸にしまって、少年は外を見続ける紗絵に近づいた。慌てて少女は少年の腕を掴んで、まるで隠れるように後ろに続いた。少女の、少年の腕をつかむ手の力に「なぜこれほどの力が握力測定で結果が出ないのだろう」と思いながらも、少年と少女は紗絵の座る机の前にまで足を進めた。
人の気配に気づいたのか、ようやく紗絵は視線を窓の外からこちらに変えた。


「・・・莵杷子、ちゃん?」


 少年の腕を掴んでいた手の腕力が一気に強くなり、そして震えを感じた。少年は何も言わずただ、二人を見ているだけである。少女の強くなる腕力に内心、「腕もげちゃうかも」と思いながらもそれは口にせず二人を見守る。それだけで大丈夫だと、少年はよく知っているからだ。
 少女は突然の「名呼び」に動揺し、怖ろしさを覚え、敵意を感じた。それが無意識に震えや力となったが、ゆっくり時間がたつにつれそれが、「自分を馬鹿にしているのではない」と確認すると、少し空気を吸い込んで、少々目を逸らしつつ、紗絵の問いに首を縦に振った。


「忘れ物があったから」


 その一言を言うのにも、大きな勇気が必要だった。一つ言葉を発するのにも、少女―莵杷子には、誰にもわからないような迷いに頭を悩ませ、大丈夫と自分を励ましつつ口から出すのだった。少女のそばにいつもいた自分だから分かることで、多分このことは他の誰も知らないだろう。
そんな莵杷子の葛藤も知らず、紗絵は淡々と、少しの笑みを見せながら答えた。


「ふーん・・・あ、私まだちょっとここにいたいから、鍵はかけなくていいよ」
「・・・わかった」


 「わかった」の言葉も、最後の方ではただ空気を口から出しただけのように小さくなってしまっている。しかしそれを少年は咎めなかった。言葉を口にするだけ、少女は逞しくなったなと褒めるぐらいしなければいけないなと思っていた。そして少年はてっきり、少女がそのまま忘れ物を取って出ていくのだと考えていた。
 が。
 莵杷子は紗絵の目線には合わせず、しかしその場から離れようとはしなかった。
紗絵も不思議に思い、尋ねてみようと口を開けた時だった。莵杷子は決心したように、ハッキリとした声で紗絵に向かって喋った。



「悩んでるんだ」


 その言葉に一番目を見開いたのは紗絵でも少年でもない、莵杷子だった。ひゅ、と声にならない音を口から吐き出して、ざり、と髪を強引に梳かし始めた。
太陽が焦りながら、焦らしながら山に隠れようとする時間のことである。



***************



 紗絵は、美しかった。
 どう美しいのだと説明を求められると何も言えなくなるが、一つ上げろと言われるなら、これだけは挙げておくべき点がある。その心だ。
 外見も少女少年大人子供老人先生誰からも好かれそうな形で、少女も自分の外見を気に入っていた。ので、生んでくれた両親にはいつも感謝し二人の期待を外させまいと勉強もなにもかも頑張った。それも全て上手くいく。絵に描いたような『天才少女』である。
 しかし一つ、少女には欠点とも最大の魅力とも言える「心」を持ち合わせていた。

 良いように言えば「純白、素直な子」。悪く言えば「馬鹿正直」。
 何でもかんでも好きなら好きと言い、嫌いなら嫌いだと言える紗絵は社交辞令も褒めも貶しも全て受け止め、跳ね返すのだ。


 『あら可愛い服。素敵ね。誰に買ってもらったの?』
「おかーさんです。でも私はこの服は嫌い。リボンはそんなに好きじゃないの」

 『好きです、付き合って下さい』
「ごめん、私アナタと初めて会うんですけど」

 そんな人間は普通なら、制裁とも言うべき教育を受けていくものだ。社交辞令の意味や日本語独特の言い回しを考えもしない所を、誰かが咎め改めさせようと必死になるはずなのだ(それがいいかは別にして)。
 しかし、紗絵の抜群の風当たりの良さに人々はそんな所まで目を光らせようと思わなかった。最初ビックリするはするものの、ニコニコと綺麗に笑う紗絵に誰も「アンタって子は!」と叱りつけもしない。そして少女自身、それに味をしめて無茶なことをしたりなんてことはなかった。下手すれば生まれた時から叱られるという経験を持たない紗絵はもう、中学3年生だ。
 その頃にはようやく紗絵にも変化が訪れたのだが、周りの人たちは何一つその変化に気づけはしなかった。気づこうとも、思わないだろう。変わらなくとも紗絵はそのままで十分だったのだから。
 しかし、その変化を一番苦しんだのは紗絵本人自身なのである。


 と、いうのも。


 「全てを受け止め吐き出す」紗絵には、悩みというのがなかった。多少、子供らしい願いや考え事はあったが、親にも言えないような悩みというものを、紗絵は経験すらしなかったのだ。そんな、順序良く生きてきた彼女だから、躓きが起きたのかもしれない。
 人生始まって以来の、誰にも言えない悩みを紗絵はどう解決すればいいのかよくわかっておらず、放置するだけしか方法はなかった。もうそれでいいかと思ってもいた。こういうものはいつか、時間が解決してくれると「本に書いてあった」から。

 そうして紗絵が、自身の変化を放置して間もなくのことだった。



********



 紗絵と莵杷子の間には、単なるクラスメイト以外何もない。
小さい頃通った保育所が一緒ということもないし、まず話す機会さえない。それはほとんどのクラスメイトも同じだろう。莵杷子が普段、ほとんど喋らないのだから。

 そんな莵杷子、という「あまり親しくもない人」に、自分の胸の内の悩みがバレたのではという紗絵のショックは大きかった。莵杷子はただ紗絵が悩んでそうに見えたからそう言っただけなのだが、突然のことに優等生の紗絵がついていけなくなっていた。目を見開いて、口をぽっかり開けたまま莵杷子を見上げる紗絵を不思議に思った少年は、莵杷子の肩を揺らしたが莵杷子の方も紗絵と同じようにぽかーんとしていた。
外にいたはずの太陽は山に完全に隠れてしまい、もう少しで完全に闇が空を包むだろうとわかった。その前に帰りたいと、莵杷子の脱力した腕を掴んで強く引っ張った。

 莵杷子は、「おきた」。

 少しうるんだ瞳に映る自分の顔に気を悪くしながら、少年は莵杷子を出口の扉に引っ張りながら、先に進む。その体に何が入っているのかと思うぐらい莵杷子の身体は軽く、ちょっとの力で連れて歩くことが可能だった。ひょっとしたら、この部屋の扉に使う力以下かもしれない。
がたがたと莵杷子の体が他の机と接触するのも無視して、少年はついに扉の前まで来たときだった。


「待って」
「待ってられない。真っ暗になって帰れなくなったら困る」
「彼女が、見てる」


 莵杷子の可笑しな言葉に疑問を覚え振り返ると、先ほどまで自分の席に座っていた紗絵が席から立ってこちらをじっと見ていた。
その表情がどこか切羽詰まったようで、そんな顔をした紗絵を少年は初めて見た。それは、紗絵本人も同じだった。自分の知らないところで身体が動き、何か言おうとして喉に言いたい言葉が詰まったままだった。
その言葉を外に出す方法を紗絵はまだ、誰にも「教えられなかった」。
 そしてそれは、莵杷子も同じだった。

 二人はただ遠くから、顔を見合わせていた。聞きたいことはたくさんあるのに出てこないという現象に焦らされているのは二人同じだったが、莵杷子はそんな事は「よくあること」なのだ。
しかし、全てが上手くいった少女には「未知の現象」であった。突然のことに苦しさを覚え―これも、紗絵子は初めての現象であった―、ただ立ちぼうけるしかなかった。


 「時間が解決してくれる」には、遅すぎるのだ。

 詰まっていた言葉が最初に出てきたのは、紗絵の方だった。


「なんで気づいたの」
「え、」
「どうして、なんで、」
「おいちょっと紗絵さん」
「どうしてわかっちゃうの。なんであなたがわかるの。」

 不思議で不思議で仕方ないというように問い詰める紗絵に、莵杷子は何も言えなかった。さっと少年の後ろに回って、紗絵の様子を見ている。少年は莵杷子の行動にまた息を吐きながら、紗絵を見た。
 ・・・ここまで焦る紗絵は、今まで、存在しただろうか?


「・・・知らない」
「え」
「知らない。分かっただけで、理由なんか知らない」
「そんな」
「そう『見えた』から、そう『思って』、そう『言った』だけだから」


 そう「見えて」、そう「思って」、そう「言った」?
 莵杷子の出した意外な答えに、紗絵は何の反応も返せずにいた。
 その様子を見ていた莵杷子と少年だったが、暗くなる外を見て少年は引っ張るように莵杷子を連れて部屋から出た。廊下に出る前に莵杷子は律儀に扉を強く閉めた。
金属のすれる酷い音が、長い廊下と、小さな教室に響き渡って消えた。いずれ、二人の走る音も小さくなり、遠い何処かへ攫われるのだろう。
 紗絵は、ただ立っていた。

 意識を取り戻したのは、闇に星がちかちかと光る時だった。慌てて携帯を取り出し開けば、そこに映し出されていた数字に紗絵はまた慌てふためいた。


 ・・・―18時48分。



*******



 闇が笑っている、と莵杷子は呟いた。言葉は空というドームに響いて渡って、何処かへ行ってしまう。誰かに聞こえたかな?誰に聞こえたかな?とのんきに思う莵杷子に少年は眉をよせながら道を行く。運動靴と補正されたコンクリート道が出す音は聞きあきたなあと、莵杷子は下を向きながら考えた。

「わかるか。もうこんな時間だ。叱られても俺は知らん」
「え、酷い」
「酷いのはおまえだろ」

 関係ない自分が何故こんな時間まで、この宇宙人みたいなやつと一緒にいるのかと考えた。今更すぎるな、と自虐しながら吐いた息の行く末を見ていた。ふと、莵杷子と紗絵という考えられない組み合わせの夕を思い出して、尋ねてみた。


「お前さ」
「ん」
「・・・紗絵さんが、悩んでるように見えたのか?」
「ん」
「何で言葉にしたんだ?」


 ん、とだけ返した莵杷子は少し悩むような仕草を見せて、ふっと上にある夜空を見て、少ししてから口を動かした。その声が小さすぎて聞こえず、それを分かったのか、莵杷子はもう一度言った。隣から突風が吹いて、自身の前髪が両目を隠してしまうのを手でどけながら、ハッキリと。



「言ってほしいように、見えた」

 そう呟いた莵杷子はまた空を見て、少年は何も言わず、とりあえずこの可笑しな少女が家まで躓かないようにと、腕を引っ張ることにした。



「変わり、ないね」

 それは夜空のことなのか。
尋ねることも疲れて、少年は少女を引きずるように一本陰の道を歩んだ。



*********



 山外れに建てられた家から学校まで車を使っても一時間弱かかるというのに、紗絵は時間のことも気にせずゆっくりと砂利道を進んでいた。真っ暗な空や密かに輝く小さな星、少し欠けた丸い月を、紗絵は小さな窓からしか見たことがなかった。
 そういえば、と紗絵は追想する。
昔、紗絵がまだまだ幼い頃に、夜景を見ようと両親を誘ったことがあった。父も母も仕事のことでとても忙しいのは分かっていた。
それでも、大好きな、そして自分を守ってくれる両親と一緒に、真っ暗闇のことを少しでも知りたいという好奇心に紗絵の頭はいっぱいいっぱいだった。思ったことは全て口にする紗絵なので、願望が頭に浮かんだその日にそのことを直接二人に言った。
 苦笑いしながら父は、紗絵の頭をわしわしと撫でてきた。


「お前の部屋からなら、とっても綺麗な夜空が見えるだろう?」



 違う。
 そんな小さな空間から、目を見開いても受け止めることができない空を見れるわけがない。
紗絵は泣いて喚いて意見を通したかったが、両親の敬遠するような態度にいち早く察しがついて、すぐに謝った。両親もごめんね、ごめんねと自分を宥めて、その日のデザートに大好きなケーキを買ってきてくれたのだ。まだ小さい紗絵はそのケーキに一瞬にして心が移り、夜景が見たいなんて願いは一瞬にして何処か遠くへいってしまった。夢中にしてケーキを頬張る紗絵を見て母が安心したように息を大きく吐いた。




 違う。
 私の願望が、そんな簡単に消えてしまうわけがなかったのだ。



 思えば、あれが初めて自分の意見が通らなかった日だったように感じる。幼かった紗絵は両親と一緒に夜景を見るという願望と、大好きケーキを食べれたという満足感をすり替えてしまったようだが。
 ああ、と誰もいない小さな石ころの粒の上で、紗絵は声を発した。




 鍵になるかもしれない。
上着のポケットから携帯電話を取り出して、紗絵はすぐさまアドレス帳を開く。この時間帯なら、もう両親は家に着いていると思うのだけれど。
 頭の中で、頭の片隅に置かれていた願望の持ち掛け方をどうすればいいか考えた。こんなに頭をフル回転させたのは初めてだ。高校の願書でもここまで悩まなかったかもしれない。




 ―――私自身よく分かっていないこの悩みが、頭の片隅に追い込まれ埃を被った願望と直接リンクしているとは思っていないけれども―――




 何か、一歩になるかもしれない。『完璧少女』だった紗絵という少女が何か変わる糸となるかもしれない、と。それこそただの考えであって、「しれない」だけなのだが。

 遠くから聞こえる風の鳴き声に重なるように、母の接待用の声が携帯電話の穴から聞こえてくる。少し空気を吸って、紗絵は口を動かした。



fin.



以前一度出して、すぐお蔵に入れられたお話。
訂正し終わったのが年明けてからって。何だそれは

多分まだ幾つか訂正個所あると思いますがスミマセン。
とりあえず今はこのまま出します。
もしかしたらまた蔵に押し込むかもしれません。

女の子―絵

2009年10月20日 18時56分38秒 | 小説+絵
どうも、月空です。

前にスキャンして、UPする機会がなかったので。

もう今の内にあげておこうかな、と。

前は別世界の、人間離れした子を描くことが多かったのですが

最近は現実に近い女の子を描くことが増えてきました。

何故かはよくわからず。

まあ悪いことではないのでガリガリ描いてます。


描くほど、暇じゃないけどね!

月空、今テスト期間なんですけど・・・ハイ


頑張ります。

以上、月空でした。

優しい貴方に―絵

2009年09月19日 17時57分05秒 | 小説+絵

最後じゃないよ

多分きっと、また会うのよ

私が会いに行くの

だから貴方はしたいことをしに行けばいいから


本当に、会うから。




閉鎖されると聞いて、捧げるような。

初めて出来た、この世界の只今一人のお友達に。

切ない切ないさびしい、でもそれではい終わりじゃない。

終わりではない。ないない。



とりあえずまずは会うためのお金をためなきゃね!