goo blog サービス終了のお知らせ 

CIRCUS, CIRCUS & CIRCUS

FOR LONELY HEROINES & BROKEN HEROES……目指せ、甲斐バンド全曲解説!

この夜にさよなら/2 そばかすの天使

2010-04-08 | album:この夜にさよなら
そもそもは内藤やす子への提供曲として書かれたという、「日活無国籍映画もの(?)」。主人公の16歳ですでに水商売の世界にいた少女、という設定は北原ミレイの「アケミという名で18で」に対して、あえてもっと若い年齢を設定したそうだ。若い女の子がどんどん水商売とか風俗の世界に落ちて行く__それくらい、これからは状況がもっとヤバくなる、という甲斐よしひろの時代への目線、と解釈していいだろう。

と、ここまで書いてあらためて歌詞を見直してみると、意外なことに彼女が水商売の女だという描写が一切無いことに気づいた。「あれは16 新宿の名も知らない店で」という一節があるけど、自分の職場に対して「名も知らない」なんてありえないもんな。初めてこの曲を聴いたときから彼女は歳をごまかすかなんかして水商売をしている少女に違いないと思いこんでいただけに、これはホントに意外だった。
で、歌詞には全く書かれていないのになぜそう思ったのかをまたあらためて考えてみると、「音楽」がそうした周辺事情を語っていたのではなかろうかという考えにたどりつくことになる。曲全体にかかっているリバーブ、ホーンセクション、シャッフルビートとウォーキングベース、間奏のワウをかましたギターと、あらゆる音の要素がチープで猥雑な、当時で言うところの「スナック」みたいな雰囲気ムンムンである。

しかし甲斐よしひろという人はこうした三部構成でストーリーが進んで行く、というベタベタに歌謡曲的な曲づくりが上手い。「裏切りの街角」に始まり「かりそめのスウィング」本作収録の「8日目の朝」「地下室のメロディー」そして後期の「冷血」にいたるまで佳作ぞろいじゃないですか。その歌謡曲的上手さがいずれ時代に追い越されて行った要因の一つではないかというのも皮肉なものだが。

解散後のライブビデオ「Live at the Apollo」のストイックなアレンジのバージョンも秀逸。
 
追記
たまたま、なんの脈絡もなく山川ユキの「新宿ダダ」を聴いた。舞台が新宿だし、マイナーキーのシャッフルで曲調もちょっと共通した印象。加えて、山川ユキ、内藤やす子ともに演歌系ドス声歌唱(と言うか山川ユキに無理矢理やらせてる感じだが)、となると、「そばかすの天使」に「新宿ダダ」のコンセプトの上での影響を感じてしまう。いやー、わざわざこのB級路線を狙ってみようなんて考えないかな。でもこの頃の甲斐よしひろだったら、あえてやっちゃうような気もするしなあ。
ちなみにリリース時期を調べてみると、「新宿ダダ」が'77年6月、「そばかすの天使」のシングル発売が'77年9月5日。時系列で考えると、意図したものか偶然なのか、実に微妙なタイミングである。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿