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イタンデイコウ!

ひっそりたたずむ、設備たち

謎の「T」おかわり3

2022年11月29日 | 暖房
しおりには杉野記念館の建築年は1938年(昭和13年)と
書いてあり、そこで頭をよぎった言葉は「ギリギリセーフ!」

昭和13年7月18日に合資会社文化工業社が東京市に提出した
歎願書(今の表記なら嘆願書)が残っている。
港湾部庁舎放熱器及汽罐設置工事(芝区海岸通三丁目)で
契約日は昭和13年6月8日。ちなみに文化工業社は


品川区大崎本町二丁目にあった。広告は昭和5年当時の
もので、品川区は昭和7年に誕生する。

歎願書には「放熱器は7月1日より現下非常時局の為、製作禁止品目に
指定せられ候為、現品入手不可能と相成候。其後日本放熱器工業組合に
於て7月1日以前に製作せられたる放熱器を以て既往註文数に応じ、
各工事業者に配分するの余儀なきに至り・・・」とあり、公共工事と
いえども放熱器の入手は困難だったようである。
もしかしたら一般住宅だった品川区の杉野記念館は、建築中に既に
放熱器が手に入りにくくなっていたのかもしれない。入手できた
放熱器の数と種類を見て、窓の下に置くことを断念したのではないか。
そう考えれば建築に精通していた設計者が、あの謎な配置にしたのも
妙にうなずける。

キャビネット一体型の引き出しが問題なく開閉できたと書いたが、
杉野記念館が竣工した昭和13年以降、順次資材統制が始まる。
石炭も例外ではなく、引き出しがスムーズに開閉できたのは
大工の技術もあるが、ラジエーター暖房を使用できた期間が
短かったから、という可能性も否めない。

見学時にいただいたのはしおりの他に「杉野記念館のステンドグラス」の
説明書。解説に「昭和13年は、日中戦争が始まった翌年で、ステンド
グラスの製作に必要な鉛やガラスなどの物資が不足してきていました。
明治以降日本で造られてきたステンドグラスの製作も戦前のものと
しては終末期だったのです」
放熱器も仲間に入れて~

謎の「T」おかわり2

2022年11月28日 | 暖房
自家設計で建てられた杉野記念館の暖房の謎はもう一つ。
放熱器で暖められた空気は上へ上へと移動する。
だからキャビネットの上部には、このように空気が抜ける
通り道を作る。これは旧国立公衆衛生院の院長室のもの。




が、杉野記念館の放熱器は大きい部屋のものでさえ天板である。



廊下と応接間に至っては





キャビネットと一体型の引き出し仕様になっている。
このタイプは初めて見た。木材に熱を与え続けると歪んでしまう
心配があるが、記念館のスタッフに開けてもらったところ、
問題なく開閉できた。放熱器のメーカーが日本放熱器製作所と
判明したので、キャビネットも開けてもらう。粗いとはいえ
パンチングメタルでよく見えないからである。
スタッフの皆様、ありがとうございました。






開けてもらったのは応接間の三細柱。バルブは三吉バルブ。
廊下と大きい部屋は五細柱であるが、旧山田家住宅の五細柱は
1段なのに対し(1段タイプは珍しい)




杉野記念館のものは五細柱でも、下のカタログのように2段。
(横の部材の名称をど忘れ中)



つまり同じマイナーメーカーで、型がかぶらない奇跡が
起きたのである。しかしなぜ上部を塞ぐのかは、謎。
自家設計物件は、面白いな。面白い例のひとつが旧本多忠次邸。
オープンしなけんのスタッフの皆様、素晴らしい企画を
ありがとうございました。



謎の「T」おかわり

2022年11月27日 | 暖房
品川区内にある建物を一般公開する「オープンしなけん」の
今年の開催は11月26日。前から気になっていた杉野記念館も
公開するので出かけてきた。杉野記念館は2階建ての洋館で、
中には素晴らしいステンドグラスが多数ある。




気になっていた理由は、もちろんコレ。(廊下部に設置)



杉野記念館の最寄り駅は目黒であるが、隣の大崎駅前には
放熱器を製造していた高砂鐵工があった。なのでメーカーは
TAKASAGOだろうと思っていた。粗いパンチングメタルから
見えるマークは




この「T」マークは世田谷の旧山田家住宅にあるのと同じだ。
まさかマイナーなメーカー、日本放熱器製作所の2例目に
出会えるとは予想外だった。

杉野記念館の暖房で気になったのが、通常放熱器の設置は
冷気を抑えるために「開口部の下」であるが、ここは違う。
上から順に玄関入ってすぐの応接間、大きい部屋。






どの窓の下にも設置していないことから、専門の設計では
ないのでは?と思っていたら、記念館のしおりに
「設計は、初代理事長であり、芳子の伴侶であった杉野繁一に
よるもので、1938年(昭和13年)に建てられました」とある。
自家設計かぁ、ならあるかもなとしおりを読み進めると
「スタンフォード大学で学んだ専門技術の上に、重ねてきた
建築の体験と熟練した腕と新知識を思うがままに生かして・・」

設計者はアメリカで本場のラジエーター暖房を目にしている
はずである。なのに開口部を外している意図は、なんだろう。




謎の国産放熱器株式会社 2

2022年09月04日 | 暖房
国産放熱器株式会社の詳細が判明したのは、昭和13年下半期の
第15回営業報告書である。皮肉にもそこに書かれていたのは
・・・昭和13年10月8日 午前10時より本社に於て臨時株主総会を
開き、左記事項を議決したり。
1 本会社解散に関する件

営業報告書には営業の概況、財産目録、貸借対照表などが掲載
されており、最後には取締役の名前と株主名簿がつく。
株主名簿と照査して、どこの誰が取締役だったのかを見てみる。
( )の中は所属会社。

代表取締役 関山 延
以下は取締役
佐藤 軍太(日本暖房衛生株式会社)
前田 彌市(株式会社前田鉄工所)
前田 濱五郎 ※合資会社の前田鉄工所かも
飯田 久次郎(昭和鉄工株式会社)
安藤 薫六(株式会社東亜鉄工所)
上西 威(株式会社建材社)
柳町 政之助(高砂暖房工事株式会社)
篠原 史郎(第一工業株式会社)
須賀 藤五郎(株式会社須賀商会)
以下は監査役
重金 源治郎 ※三機工業株式会社らしい
菅谷 元治(株式会社大阪電気商会大阪暖房商会)
萩原 貞 (萩原暖房工業所)

合併した会社なら、このラインナップもわかる。
が、国際放熱器とは別に、それぞれの会社は存在していたのである。

謎の国産放熱器株式会社

2022年08月22日 | 暖房
昭和11年発行の国産放熱器株式会社のカタログ。



放熱器の種別は5種類と決定したので、規格外となったのが
四細柱。これは横浜・山手のベーリックホールに設置された四細柱。




昭和10年に発行された書籍「鋳鉄製放熱器」には
「四細柱放熱器は、商工省の日本標準規格制定後需要に迫られ、
国産放熱器株式会社に於て製作したもの」と記されている。
この国産放熱器の謎は、表紙をめくると




住所のほかに



高砂鐵工株式會社 昭和鐡工株式會社 株式會社前田鐡工所
株式會社東亜鐡工所の全景写真が掲載されている。
この意味が長らくわからなかったのだ。

先生!そりゃないよ・・・

2022年07月31日 | 暖房
毎週土曜日の夜に放映されている「新 美の巨人たち」。
23日は横浜の港の見える丘公園と近隣の洋館がテーマだった。
取り上げた洋館は隣のイギリス館と山手111番館

この111番館は小学生の頃は「新井」さんちで、塀に囲まれて中が見えず、
脇を走る市営バスの座席からかろうじて見える館だった。だからここが
一般公開になった時は驚きと喜びと安堵だった。

111番館はモーガンの設計ということで、登場したのはモーガンを研究して
いる大学教授。食堂での解説のひとつは、この造りつけの家具。




写真では見切れて蝶番しか映っていないが、右端は物入れ。
モーガンは使わない花瓶等をしまうスペースとして考えた・・・てな解説。
それを聞いた時に


えっ、先生マジっすか!

と、愕然としちゃったよ。昔にスタッフの許可のもと開けさせてもらったが、



この家具の正体はラジエーターのキャビネット。
番組では一貫して日本びいきのモーガンは日本の気候も考えて設計した、と
なっているが、花瓶をしまうスペースは日本の大工でも考えられる。
モーガンが凄いというのなら、これを取り上げてほしかった。




冬の乾燥する室内を、ラジエーターの熱で気化した水蒸気で
調整する装置「水盤」。
ラジエーター暖房を採用する・・珍しくない
ラジエーターをキャビネットに収納する・・よくある
ラジエーターに水盤をつける・・ほとんどない

見終わったあとは、タイトルの言葉しか浮かばなかった。



謎のアルファベット判明

2022年04月03日 | 暖房
以前の「探していないと、ものは見つかる」の記事で、
弁にあったESWのマークは株式会社齋藤省三商店の
ものと判明したが、この文字が何を意味するのかは
わからなかった。が、探していないとものは見つかる。

それは齋藤省三商店も会員だった現在の(一社)日本
空調衛生工事業協会の機関誌に掲載されていた。

「現社長が大正2年頃、個人で機械工場を経営していた
時代から使用している Trade Mark です。
Saito Eng.Works の頭文字 S.E.Wを意匠的に
配置したものです」

とあり、現社長とは齋藤省三のこと。大正2年頃の
個人で機械工場を経営とあるのは、斎藤大崎工場である。
大崎工場は大正7年に株式会社高砂鉄工所に改組し、
大正10年に齋藤省三は高砂鉄工所を退職した。
関東大震災の翌年、大正13年に設立したのが株式会社
齋藤省三商店である。




卒業!金谷ホテル 5

2022年01月13日 | 暖房
駅から遠くて温泉でもないのに素泊まりで
税込15,863円は、自分でも高いと思う。
今回は500円クーポンがあり、いつものようにクレジット
カードのポイントを利用したので、実質は1万円程度で
宿泊できた。付加価値=ラジエーター暖房がなければ
毎年泊まることはなかっただろう。
そんな客に朗報。

14号室はバスルームにもラジエーターがついていた。
以前にバスルームにラジエーターがついているのは
別館だけ、と聞いていたので嬉しい誤算である。








二柱3節と小ぶりの壁掛である。
メーカーはプラグ部で判断するが、これはつぶされている?




反対側は摩耗しているようだが、



おそらくこのマークであろう。
このマークのメーカーがいまだ不明で、国産か外国製かすら
わからないが、ホテル内の数ヶ所で見ることができる。




バスルームを壁掛にするのは掃除を考えると
合理的である。その合理性をあえてこのラジエーターは
つぶしている。全景がこれ。




水が流れるべきところにはあるのは





転倒防止の部品らしい。溶接しているのではずせない。
安全性と美しさのバランスは難しいようだ。
ちなみにバスルームのこれに、すこーしだけ水をかけてみた。
結論:やっぱりくさい。

部屋の変更をしてもらう時に14号室を覗かせてもらったが、
なぜか「卒業」の文字が浮かんだ。さよならではない。
私は次へ行くのだ!
これまでありがとう、金谷ホテル。
日本標準規格(JES)の壁掛は「ナイアガラに類似した型」と
決められたが、この現役を見ることができるだけで
金谷ホテルは貴重なのである。
※ラジエーターの追っかけによる個人的な意見です。





卒業!金谷ホテル 4

2022年01月12日 | 暖房
金谷ホテル本館の14号室の部屋にはラジエーターが
もうひとつ、対角線に設置されていた。




こちらはナイアガラ社の二柱8節。







塗料もハゲており、転倒防止はワイヤーだ。
金谷ホテルの暖房方式は「蒸気」だそうだが、




右の往き管と左の還り管をノギスで測ったら同じ径。
ラジエーターにも「空気弁」がついていないので、
ちょっと謎。空気弁を使用しなくてもいい技術変化が
あったのか。
ちなみにラジエーターを通すとどれぐらいの熱損失なのか
温度計で測ってみたところ、






結構な熱を放出しているのである。
この部屋はラジエーターが2つあるせいなのか
ものすごく暑く、このままバルブで室温調整を
しなかったらどうなるんだろう(ワクワク)と
実験したら、じんわり汗が出るサウナ状態。
室内の備品であるガラスのコップや木の柱まで
触ると、結構な熱を帯びていた。









卒業!金谷ホテル 3

2022年01月11日 | 暖房
金谷ホテルで変更してもらった14号室の床置き。
撮影の後はお約束のコイツだ。




実はこの上にカーブがついているので、落ち着かない。



これから散歩に行くのに、落下していたらヤダなと
いうことで、あの「棒」を使いました。




あらヤダ、ピッタリじゃない(笑)
本来のこの棒の用途は、こういう水盤の保持。
「加湿」するためにこの中に水を入れて使用する。




完全に用途外使用であるが、気になったのが前面から
ちらりと見えるワイヤー。




このワイヤーをたどっていくと、壁にぶつかる。
ラジエーターの転倒防止対策のようだ。




ラジエーターの転倒防止策では岡崎市の旧本多邸が
鎖を使い、三菱財閥の旧岩崎邸となるとこの仕様になる。
旧本多邸で鎖はそぐわないと書いたが、なんだこの場末感。
金谷ホテルはこれを美しいと思っているのか?
ちなみにこの部屋は素泊まりで税込15,863円。
金谷ホテルはテーテンスの美意識を保守して継承している
書いたが、前言撤回。