ユーラシアウァッチ:ロシアから見る世界情勢

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大晦日ロシア・ウクライナ大統領電話会談 捕虜交換には「第三者」を貫くプーチン

2020-01-02 10:03:11 | ロシア 軍事

 12月31日プーチン大統領はゼレンスキー・ウクライナ大統領と電話会談を行った。
両国の大統領府リリースは、両大統領が「新年のお祝いのあいさつを交わした」ことを認めている。29日の捕虜交換の後、そしてウクライナトランジットガス供給契約が締結された後だけに、この大晦日電話会談で融和ムードが醸成されつつあるかのように見える。
 しかし両大統領府のリリースを比較してみると、両国の間の隔たりの大きさの方が目立つことがわかる、
 まず電話会談が成立した経緯だが、ウクライナ大統領府は単に「ゼレンスキー大統領はウラジーミル・プーチンロシア連邦大統領と電話会談を行った」としているのに対して、ロシア側は「ウクライナ側の発意に応じて」と示し「先方からのお願いに応じてやった」感がほのめかされている。
 捕虜交換についてロシア側は「12月9日のノルマン方式四者会談の合意どおりに、確認されたすべての捕虜を相互にという原則でキエフとドンバスの間で行われた」(河川部EW)と、あくまでもロシアが第三者であり「捕虜交換はウクライナ東部の独立共和国とキエフの間で解決済み」とにおわせている。
 それに対してウクライナ大統領府リリースは捕虜交換の実施を肯定的に評価しつつも「電話会談においてクリミアおよびロシア領内にいるウクライナ国民を含めたウクライナ国民の解放とウクライナにいるロシア国民の解放のための対象者リスト調整に早急にとりかかることでも合意した」と述べる。クリミアに現在位置しているウクライナ国民が「拿捕された」と同じであることをほのめかし、「捕虜」とは呼ばなくとも「拿捕された者」の解放に向けて交渉はこれからであることを強調している。
 ロシアはクリミア在住者を「拿捕された」状態とは認めておらず、ゼレンスキー大統領の認識に沿った交渉を実現するための法的枠組みはない。ロシア大統領府リリース通り、ウクライナ側から持ち掛けた電話会談だとすると、ゼレンスキーにとってはタイミング悪くやってしまった「新年の祝辞」であったかもしれない。

 ちなみに写真はゼレンスキー・ウクライナ大統領の国民に向けた新年あいさつ動画(同じく大統領夫妻とより)の一こま。
 カジュアルな服装で、物腰も俳優らしく、映像もフランクな作りです。
 https://www.president.gov.ua/ru/videos/novorichne-privitannya-prezidenta-ukrayini-1637
 芸能人らしい人々も動画に登場し「少し軽すぎないか」という場違い感もありますが、これがゼレンスキースタイルなのでしょう。

 プーチンの新年あいさつは歴代大統領と同じクレムリンで厳かに、静かな調子で行われました。
 https://www.president.gov.ua/ru/videos/novorichne-privitannya-prezidenta-ukrayini-1637


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