エロゲ感考おきば

エロゲの感想をメインに、時たま考察を綴ろうと思います。ネタバレありで書きますが、注意書きは入れるようにします。

ヒマワリと恋の記憶_感想

2019-11-03 16:59:16 | エロゲ感想


はじめに
 このエロゲはmoreブランドのゲームで、このブランドだと事前に期待していた通り音楽面がとても良かったです。それに合わせてグラフィックと原画も美しかったです。CGは夕暮れ時の景色などがとても美しくて、それに加えて和遥キナ先生によるキャラクターがとてもきれいでえちえちでした。
 このエロゲ、ほとんど一人のヒロインのために描かれているというかメインヒロイン二人で、ツンデレの方が軍を抜いて可愛かった感じです。僕は通常ツンデレヒロインはツンツンしているときにイラッとくるかデレきった後に飽きるタイプで嫌厭していたわけですが、このヒロインだけは特別でどうも最後まで大切な存在でありました。ツンデレ量産世代の薄っぺらいキャラクターとは違って、心があって理想が詰まってました。。。

 このエロゲの改善点を述べるとすると、まず一つ目にバグが多かったというところです。修正パッチ入れなかった僕が悪かった話でもありますが、上記二人のメインヒロインとtureルートのバグの多さは特に酷かったです。ここの部分を一番最後まで根を詰めて作っていたという頑張りは滲み出ているのですが、しかしフルプレイスの完成品のエロゲとしてそれはどうかと思いました。スクリプトと声優のセリフがずれていたり、酷いときはリテイクの音声がそのまま流れたりします。あじ秋刀魚さんの「もう一回お願いします」が聞けたりします。ちなみにこのセリフを聞けたのはは少し嬉しかったです。しかし流石にちょっと…デバックくらいはしてもらいたいです。
皆さん、『ヒマワリと恋の記憶』をプレイされる際は修正パッチはマストですよ。

 そして二つ目はメイン二人以外のヒロインのルートがあんまり面白くなかったことです。共通ルートの部分からメイン二人は絶対面白そうでぜひプレイしたいと思っていたわけですが残りの二人はほんと出涸らしみたいなもので、前者を早くプレイしたいのに、トゥルーに関係ありそうだから後回しにせずにいられなくて、つまんない部分からやるしかなくてじれったかったです。
 
 まぁそれでもラストたった一人のヒロインのためにこのエロゲには光るものを感じました。今までの攻略は教訓だったんだなとか、間違いがあっても突き進んでいくところとか荒削りではありますが、いや、だからこそ青臭くてよかったなとしみじみと感じます。

キャラ紹介

月浦亜依(cvあじ秋刀魚)
お嬢様で清楚さとエキセントリックさを併せ持つ。可愛い。



荻浜茜(cv橘まお)
ツンデレ。素直じゃないけど自分に向き合うことができて他人のために行動できる。好き。



水押カナ(cv貴坂理緒)
幼馴染。数合わせ。



蛇田汐里(cvヒマリ)
迷い子。声は良いし、えっちしーんはえちえち。でもおまけヒロインって感じ。



※ここからネタバレあり


感想
 
 前述した通りこのエロゲは真のヒロイン荻浜茜のために作られたと言っても過言じゃありません。





 はじめ主人公―元倉優は放課後音楽室でピアノを弾く亜依に憧れを抱いていました。そんな彼を見て茜はストーカー呼ばわりするわけです。しかし、茜もまた主人公の幼馴染でサッカー部のキャプテンである隼人に好意を抱いており、わざわざ早起きして朝練を眺めたり、人のことは言えもんじゃありません。互いのそんな一面を知ったあと、二人は互いに恋を応援するという同盟を結びます。優は隼人の幼馴染で、茜は亜依の幼馴染です。この二人ってなんかすごい似てますよね。そういうわけで似た者同士、それぞれの恋を成就させようと、まぁこの時点でなんか先の展開がだいたい読めるというか、こういう王道展開になってほしいという願望をいだきつつも続きが気になってプレイしていくのでした。
 
 最初険悪だった二人は同盟を通して互いを認めあって行きます。そしていつの間にか自分の恋よりも相手の恋を叶えてやりたいという自譲の心が芽生え始めます。この頃はまだ恋愛感情なんて互いに持ち合わせてなかったのですが、彼らは憧れの存在であった亜依・隼人が恋愛対象としてではなくただの尊敬の対象だったと気づいていきます。ですが、二人とも恋をやめたのが自分だけだと思い込んでるものですから、お互いにお節介を焼いて関係をこじらせていったりします。








 
 こんな感じにいがみ合ったり、仲良くなったり、気持ちがすれ違ったりしながらスローペースで彼らの恋を歩んでいくわけでして、これこそ学園青春モノにふさわしく理想の純愛協育なのだとしみじみと実感しました。
 
 ここまで全体的な流れのみを追って来ていきなり言わせてもらいますが、荻浜茜は本当に最高のヒロインです。だって単にツンツンしていて付き合いだしたら急にデレるテキトーに作られた量産型チョロインとは違い、、このエロゲの中心がどうしようもなく彼女であり、一ヒロインとしてではなく、一人の女の子として彼女に寄り添ったからこそ見えてくるものがあるからです。彼女と過ごした日々の中には、彼女の人物像を補完する思い出がたくさん詰まってます。だからこそ一見一昔前のラブコメのメインヒロインみたいな彼女がこれほどまでに好意を持つことが出来たのだと思います。


考察

考察対象は主に二つです。このエロゲの作品世界についてで、もう一つは主題歌についてです(こっちは一つ目から派生する余談のようなものです)。



 tureルート終盤にて、このエロゲで攻略してきた茜以外のヒロインたちとの生活は、主人公の記憶を元に天使が作り出したifの世界線であることが明らかになります。天使はクリスマスに愛に迷える人々を導くことを生業としており、今回、記憶の世界を創り出したのは、茜の仕事の大成を慮って別れを切り出した優を考え直させるためでした。ところが、その世界を創りだしたとき、同時にまた亜依もお見合いという愛に悩んでおり、主人公同様その世界に閉じ込められてしまうのです。そしてこの際、亜依が記憶を保持してしまい、その代償として本来あるはずの主人公の記憶は取り去られてしまいます。
 そうした背景があり、主人公は毎回記憶を失いながら学園時代にあったかもしれない身近な女の子との青春を繰り返すのでした。しかしその夢のような生活もタイムリミットがありました。そんな期限の迫った夕暮れのひまわり畑にて亜依は言います。

「思い出してください、元倉さん。ここは私との思い出の場所じゃないはずです――」
亜依が大切にしてきた”恋の記憶”を主人公が受け継ぎます。しかし天使は言います。もうタイムリミットに間に合わないし、このもしもの世界に閉じ込められる、何度も楽しい青春時代を過ごせていいじゃないかと。

茜とふざけあったり‥‥
茜と笑い合ったり‥‥
茜と夢を語ったり‥‥
全部‥‥全部‥‥全部‥‥
俺の‥‥俺たちの大切な青春‥‥。
やり直すことなんて出来ない、大切な青春。
大切な恋の記憶なんだっ!!


優はそんな誘惑を当然のようにはねのけます。そしてもうタイムリミットには間に合わないというのにそれでも学祭で最後に一言茜に愛を伝えるため、バスでやってきた道を自転車でさかのぼっていきます。
「どうしてそこまでする?やり直したいことだってあるんだろ?
この世界で君は‥‥‥」
「ないっ!!やり直したい事なんてないっ!!!」
「どんな事があっても、逃げたかもしれないけど‥‥それも全部ひっくるめて俺の人生なんだっ!」
「そして、茜と過ごしてきた大切な青春‥‥‥それを無かったことにするなんて嫌だっ!!!」
「君の方から別れを告げたのに?」
「あぁ、俺がいくら謝ったって、好きだと言ったってもう遅いと思う。
それでも、きちんと伝えたい。俺にとっての茜は本当は手に放しちゃいけない、大切な存在だったってことを‥‥‥」
「そして、もし‥‥‥もし‥‥‥許されるなら‥‥‥。俺はこれから先の未来を茜と過ごしたいっ!過去の青春時代ではなく、これからの未来をっ!!」


 このシーン優くんが最高に格好いいと思います。すごいくらい世界系してますね。世界系はハマるかハマらないかで当たり外れが激しいですがこの作品の世界系は割と気に入ってます。完全に僕自身の感性によるものですが、行動が理にかなっていうのかな…この人物ならこうするんだろうなとかむしろこうすべきだろうとか、茜への行動はエロゲを通して愛を育んだ僕にとっては納得の内容でした。あと今にとらわれずにしっかり過去を受け止めて未来に進んで行くところがかっこよかったです。

 こんなラストの展開について一つ考察したいことがあってそれは”愛”についてです。とはいっても別に大層なことを言いたいわけではないです。
担任坂本のその本職――天使は人間の愛の手助けをしています。
下のセリフをご覧いただきたい。



愛のキューピッド。
きっとこっちの方が聞き覚えがありますよね。
恋のキューピッド。
この作品に恋と愛の区別があるものだと考えて見て下さい。
このエロゲにおいて恋とは何だったでしょうか??
これまで優は何度も青春時代を繰り返してきた。そして、ときに幼馴染と、引っ込み思案な女の子と、どこかずれたお嬢様と、ちょっとしたきっかけから惹かれ合って――きっとこれが恋なんだと思います。けれどこれらの恋は全てもしもの世界の出来事です。これらの恋よりも前に現実の世界で茜と恋をしたのです。現実のたった一度きりの青春時代は茜とともにあったのです。
ここで主題歌の話をしますが、EDの『First love』のことは以前から知っており、この曲名をただ単に初恋というふうに捉えいい曲だなぁと思ってたのですが、このエロゲをプレイし終えて真のニュアンスを知ってとても感慨深いものになりました。青春時代には色んな女の子と恋仲になったかもしれない可能性があって、でもそんな最初にして一度きりの青春でくっついたのが
茜で、二番目、三番目の恋はもしもの世界で追体験するっていう…だからこそ茜だけは特別で”一番目の恋”という意味の『First love』があったんだと気づいてすごいしっくり来てます。しかもこの曲茜のテーマソングみたいなもので、作中では茜が作った曲という設定でtureのラストでは茜が学祭でこの曲を歌うという流れでEDに入ります。しかもEXTRAを確認するとこの曲のオフボーカル版のサントラのタイトルが『アカネ』だったりするんですよね。そういうわけで普段何気なく聴いていたこの『First love』には茜との思い出がいっぱい詰まっていたいたのでした。
 ちなみに、ただの対比なので理由としては不十分かもですが、OPの方は亜依をイメージして作られた曲のように思います。『恋の記憶』っていうタイトルがもしもの世界で優の代わりに亜依が記憶をもっていたことからなんとなく想像できます。詳細はわかりませんが、亜依ルートとかtureルート調べてみれば歌詞が境遇と一致したりするかもしれません。興味があったら調べてみて下さい。

 話を戻すと、茜とは、いがみ合ったり、笑い合ったり、泣いたり、怒ったり、たくさんの出来事を共有しながら惹かれ合って大切な存在になっていきます。恋はいつしか過去になり、その思い出を分け合って互いを愛おしく思います。作中にも出てきた”恋の記憶”とは愛を育んでいくものなのでしょう。
 この作品は僕に大切なことを気付かせてくれました。ヒロインと恋愛をしたその後についてです。
 昨今、僕は色々なエロゲをプレイしてそんなエロゲのうちの一つの中でも様々なヒロインたちに出会います。そしてそのヒロインたち全てと恋をして、攻略して、クリアしたら、何事もなかったように次のヒロインに向かいます。前のヒロインの記憶は追いやられ、次から次に新しいヒロインばかりを求め、僕は本当にキャラクターを愛しているのと言えるのだろうか。たった一度きりのだからこそかけがえのない青春時代を何度も過ごしてそこに一体どれだけの価値があるのだと言うのだろうか。そんな疑問がふと僕の頭に湧いてきたのです。一人のヒロインを大切にするというそういうメッセージ性をこのエロゲはもっていました。このメッセージ性こそがこの作品のもっとも光る部分なんだと思います。特に僕みたいなエロゲーマーには心にささりました。こういう部分も含めてこれからは精進してプレイしていこうと思います。
 


おまけ