エロゲ感考おきば

エロゲの感想をメインに、時たま考察を綴ろうと思います。ネタバレありで書きますが、注意書きは入れるようにします。

この青空に約束を――感想

2019-08-27 01:01:34 | エロゲ感想


紹介
本土から南に離れた南栄生島。この島の産業を支えてきた出水川重工の撤退により島は過疎化が進みつつあった。それは主人公たちが暮らす学生寮――つぐみ寮も同様で一人また一人と学生が減りつつあった。最後に残った6人とこんな時期に家庭の事情から引っ越してきた凜奈を加え、つぐみ寮の取り壊しまでの残り一年かけがえのない日々を送る。とにかく学園ものとして王道の中の王道をいき、未プレイの方にはぜひおすすめできます。

キャラ感想
宮穂→凜奈→沙衣里→静→奈緒子→海己の順でプレイしました。とくにプレイ順について話が繋がったりして推奨するところはありませんが、海己は最後にやることをおすすめします。一番身近な存在だけに色々なものが詰まっているのです。
・宮穂√
なんとなく一番気に入りました。犬っころのように「せんぱい~」って慕ってくるところが可愛かったです。
・凜奈√
最初は意地を張っていたけど根は素直でいいやつで、仲良くなってからもそれでいて些細なところから張り合って喧嘩しあうところが良かったです。なんだかんだ仲がいいところが微笑ましい。
・沙衣里√
沙衣ちゃんは最年長でありながらも、女子校育ちのバカで怠け者で酔っぱらいなところが可愛かったです。そして寮生を守るために一生懸命になるところはかっこよかったです。まぁ沙衣ちゃん自身が原因なんですけどね。
・静√
静は寮に引き取られる前、色々あって多くは語られないのですが、あまりいい家庭環境じゃなかったようで、わたるとの肉体関係によりどうも二次性徴が始まって最後には少し大人になった美少女の静を拝めることができます。
・奈緒子√
奈緒子の脳でh色んな狡猾な打算が渦巻いているように見えて実は一途だったりします。
・海己√
さすが幼馴染。本ルートだけでなく、その他全てのルートにおいてうまい具合にお膳立てをしてヒロインを説得する手伝いをしたりしてくれます。そんなとても近い存在でありながらももう一歩は踏み込めない理由があります。彼女の長所は持ち前の頑固さだと思います。
・茜√
相変わらずのマシンガントークではありましたが、それでも航を気遣ってにぎやかせようとしているところが良いと思いました。茜ちゃんなんだかんだいって可愛かったので、もうちょっとシナリオあっても良かったと思います。

感想※ここからネタバレ多め
 
 丸戸先生の作品はホワイト・アルバム2、パルフェとやってきましたが個人的にこの作品が一番おもしろかったです。他の作品同様丸戸節の聞いたウィットに富んだ台詞に加え、この島の雰囲気というのがどうも最高でありました。学園シュミレーションゲームの王道と言いますか、この作品には只々清々しい青春を思わせるような雰囲気がありました。偏にこの作品の登場人物たちは寮において遠慮ない、容赦なくそして自由で個性的だったがためにこれほどまで居心地のいい空間だったのだと思います。仲間内だけ腹の黒さを顕にするリーダー的存在である生徒会長の奈緒子だったり、そんな彼女に遠慮なく言い返す宮だったり、酒飲みで役立たずのさえちゃん、ぼーっとしてるように見えてスペックが高い静に、謝ってばかりだけど根はひたすら頑固な海己がいて、そして入寮当初散々周りを困らせた凜奈もいる。だからといってこのメンバー協調性がないわけではなくて、皆寮が大好きで罵倒しながらも他の寮生のことを大切に思い、学園長たちが企む取り壊し計画に対して一丸になって抵抗します。そしてこの寮での日常というのがとても楽しいもので、あの凜奈ですら、この寮の居心地の良さに当てられ、一悶着あった末、当たり前のように馴染んでいるのでした。
 
 この作品の面白さは、まぁ丸戸作品全般に言えることですが、主人公とヒロインだけでなくて、その周りの人間だったり他のヒロインたちが主人公たちを慮ったり、気持ちを忖度したりどのルートにいってもどのキャラもそのキャラらしく何らかの行動をしているところにあります。普段馬鹿げて会話しているキャラクターたちがまるでホントの人間のように難しく悩んだりしている姿や上手くいかない展開を見るのがこの作品の楽しみ方の一つであったりします。善意で宮を遠ざけて失敗してしまう航だったり、凜奈と航の合わせ石の相手が違っていたり、奈緒子との過去の関係からこじらせていたり、そんな状況でもそれでも上手くやっていくところがとても好きです。

 最後の『約束の日』で案の定なきました。だって今まで楽しく暮らししてきた思い出の詰まったつぐみ寮が壊されてなくなるなんて泣くしかないじゃないですか。そんな取り壊しが原因で今まで馬鹿やってきた7人がそれぞれの道を歩き出して――自分たちの学園時代の居場所とともに、一緒に生活してきた仲間も離れていってどうしようもなく悲しかったです。
 
 この作品、相当昔の作品なんですが、そんなことは思わせないくらいシステムが良かったです。次の選択肢までスキップできるのでルート選択に不自由しませんでしたし、タイトル画面が凝っていたと思います。昼、夕、夜とプレイを開始する時間帯に合わせてタイトル画面の明るさが変わります。個人的に虫の鳴き声が聞こえてくる夜の画面を気に入っております。そしてこれだけかと思いきや、作中でお祭りがある日、つまり7月26日なんですが、この時間帯の夕方とか、夜にプレイしてみたところあのお祭りの音が聞こえてすげぇってなりました。あとクリアしていくと合わせ石が現れてきて、最後のおまけルートである茜ルートをクリアすると合わせ石が完成します。航の昔の合わせ石の相手は茜ちゃんだったわけですね。まぁそんなこんなで色んなものが詰まったのがこの作品なんだと思います。