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ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩するのか?

はじめにお読みください

健保連大阪中央病院に勤務するラパロスコピスト(腹腔鏡術者)のブログです。婦人科腹腔鏡下手術、子宮内膜症、慢性骨盤痛等の治療を専門としています。

このブログでは腹腔鏡下手術、子宮内膜症、子宮筋腫に関する基本的な事柄については解説していません。まず、下記のウェブサイトをご覧になることをお勧めします。
日本子宮内膜症協会
子宮筋腫・内膜症体験者の会 たんぽぽ

手術を希望される方はこちらをご覧ください。

医療相談、ご質問にはお答えしませんのでご了承ください。

おすすめの本はこちら?ブックス・ラパロスコピスト

─ 2層縫合できちんと合わせる ─ TLHへの私のこだわり7

2025-01-22 | 腹腔鏡

前回に引き続き、TLHにおける腟断端縫合の技術について、くわしく解説します。

2層縫合
腟断端を「きちんと合わせる」ということを真剣に考えた結果、私は2層縫合に行きつきました。1層目で腟粘膜を、2層目で腟壁~筋膜を合わせることで、いわゆるlayer to layer縫合をしています。実は、Dr.Kohの手術を見学しにMilwaukeeまで行った際に、彼も2層縫合を行っていたのには驚きました。(ちなみに、Dr.KohはAlbert-Lembert縫合を採用。)



左手を効果的に使う
2層縫合を行う際、私は左手を上手く使って、創部を幅広く縫合し、組織をしっかりと寄せるようにしています。手術で左手を有効に使うのは意外にも難しいのか、ビデオクリニックでは左手が全く動かず右手だけで手術をしている人が多いです。左手をそれなりに使えるようになるまでに数年はかかるようですね。

Two stage pass
腟断端の縫合時に、浅い運針しかできない場合があります。そのような場合には、無理に一度でかけようとせず、Two stage passを採用します。これは、前壁と後壁を二度に分けて運針する方法です。一度で運針した方が早く済み、一見するとカッコよく見えるかもしれません。しかし、浅い運針では、層がきれいに合わず、腟断端離開のリスクが高まる可能性があります。そこで、Two stage passを採用することで、深くしっかりと運針し、創部をしっかりと寄せることができるようにしています。

膀胱の剥離
腟前側をしっかりと縫合するためには、膀胱~膀胱脚の剥離が重要です。剥離が不十分だと、縫いしろがなくなり浅い運針しかできないので腟断端離開のリスクが高まります。

今回は、腟断端縫合の技術について、私のこだわりを概観しました。次回以降、これらのテクニックについて、さらに詳しく解説していきます。
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創を合わせる ーTLHへの私のこだわり6ー

2025-01-21 | 腹腔鏡
前回は、TLHにおける腟断端縫合の重要性についてお話しました。今回は、腟断端がきれいに治癒するための私の推奨していることを解説していきます。

腟断端縫合の3つのポイント
腟断端が十分な強度をもって治癒するためには、以下の3つのポイントが重要です。
  1. 腟粘膜と腟粘膜をきちんと合わせる
  2. 腟筋膜と腟筋膜をきちんと合わせる
  3. 創部と創部をきちんと合わせる


これらのポイントを満たしていれば、どのような縫合法を用いても問題ありません。しかし、実際にそのようにやってみようとすると意外と難しいです。

ですから、ビデオクリニックや技術認定ビデオを観察すると、これらのポイントがきちんと守られていないケースが多いのが現状です。特に、腟断端を一層で縫合する人に多いのですが、膣壁をうまく全層で縫えず、粘膜面を拾いすぎているために粘膜面が腹腔内に内反している場合があります。(他にも、う〜ん、という縫合はあります)



粘膜面は縫合しても創部ほどはしっかりと接着しにくいので、後で傷が開いてしまうリスクが高くなるかもしれません。また、粘膜面を大きく拾いすぎると、腟が短くなってしまう可能性もあります。縫合自体は一層でも二層でも構いませんが、創部をきちんと合わせることが、腟断端縫合の基本だと思っています。

私は、きれいに縫合された腟断端を見るのが好きです。それは、手術が無事終了した証とも言えるからです。

(注:腟断端縫合については、いろんな意見の方もいらっしゃいます。今回の内容は、あくまで私の推奨している方法ですが、自分のこだわりには自信があります。)
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腟断端縫合  ─TLHへの私のこだわり5ー

2025-01-20 | 腹腔鏡
子宮全摘術において、手術の終盤に行う腟断端縫合は非常に重要な手技です。なぜなら、この縫合が不十分だと、術後に腟壁が開いてしまう「腟断端離開」という合併症が起こる可能性があるからです。

従来の開腹手術や膣式手術では、腟断端離開の発生率は1/500~1/1000程度と低いものでした。しかし、腹腔鏡下手術では、腟断端離開の発生率が1/100~1/300程度と報告されている施設が多く、 開腹手術や腟式手術に比べて高い傾向にあります。これは、腹腔鏡下手術では、縫合などの鉗子操作が容易ではなく創部が適切に縫合されない場合があること、エネルギーデバイスの過度な使用による腟断端の熱損傷、腟切開や剥離の不適切などが原因として考えられます。

子宮全摘術は機能温存手術
子宮全摘術は、子宮を摘出する手術ですが、実は性機能を温存するという側面も持ち合わせています。腟断端離開の多くは、性行為や強い腹圧をかけた際に発生します。そのため、腟断端をしっかりと縫合することで、患者さんが安心して性行為を行ったり、お腹に力を入れたりできるようにすることが重要です。
当院では、4000例の子宮全摘術において、腟断端離開の症例はわずか1例のみでした。(なお、このケースでは、緊急で腹腔鏡下手術を施行し腟断端を再縫合することで無事治療することができました。)それも特殊なケースであったため、通常であれば膣断端離開を心配する必要はほとんどありません。これは、創部と創部をきちんと合わせるという、基本的なことを忠実に実行している成果だと考えています。



次回は、腟断端縫合の具体的な方法について、さらに詳しく解説していきます。

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袋に入れる!TLHへの私のこだわり4

2025-01-17 | 腹腔鏡
TLH(腹腔鏡下子宮全摘術)において、子宮を取り出すのは主に腟からです。全身麻酔をかけている状態では腟はある程度伸びますので、子宮筋腫などの大きな腫瘍を摘出する時でも経腟的に回収できることが多いです。腟が狭い場合や子宮筋腫が特別に大きい場合は、お腹の傷を若干広げて(1.5~2cm程度に)電動モルセレーターと呼ばれる器具を用いて腫瘍を細切して取り出すことがあります。

しかし、術前診断で良性と思われていた腫瘍が、実際には悪性腫瘍(肉腫など)であるケースが稀にあります。その確率は0.1%程度と低いものの、腹腔内で腫瘍をそのまま細切すると、悪性腫瘍だった場合に、腹腔内に悪性細胞を播種してしまうリスクがあります。これは、手術部位以外にがん細胞が散らばってしまうことで、再発や転移のリスクを高める可能性があります。

そこで、当院では、経腟的であっても経腹的であっても、ほぼ全例でin-bag morcellationという方法を採用しています。これは、腹腔内で腫瘍を袋に入れた状態で細切する方法です。
1.5kgの巨大子宮筋腫のIn-bag morcellation(この症例は経腟的に細切除去)

こうすることで、万が一、悪性腫瘍だった場合でも、悪性細胞が腹腔内に散らばるのを防ぎ、がんの播種リスクを最小限に抑えることができます。このin-bag morcellationは、手術時間を少し延長してしまう可能性がありますが、患者さんの安全を第一に考えた結果、当院ではこの方法を標準的に採用しています。

他の施設では、袋に入れずに腹腔内で直接細切しているところが多いようです。また、電動モルセレーターを使わず、お腹の傷を3cm程度に切開して、直接細切除去している施設もあります。しかし、お腹の傷を大きくすると、術後の痛みが強くなったり、傷跡が目立ちやすくなったりする可能性があります。

私は、患者さんの術後のQOLを向上させるためには、創部の痛みや傷跡を最小限に抑えることが重要だと考えています。そのため、in-bag morcellationを採用することで、お腹の傷を小さくし、患者さんの負担を軽減することにこだわっています。

もう10年以上、この方法にこだわり続けています。In-bag morcellationのW杯が開催されたら、メダルが取れるかもしれない😆 私の気持ちとしても、この方法が安心で気分もスッキリなんだよな。性分なのかな?😊
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子宮頸部周囲の処理 TLHへの私のこだわり3

2025-01-16 | 腹腔鏡
子宮全摘術において、子宮頸部周囲は解剖学的に複雑な構造をしているため、尿管損傷や出血が起こりやすい部位です。近年、子宮頸部周囲の処理方法の発展に伴い、腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)が普及し、困難症例に挑戦する施設も増えています。しかし、この部位の処理は依然として重要な課題であり、細心の注意が必要です。私は以下の3つが重要だと考えています。

1. 子宮頸部右後方の処理
左側に立つ術者にとって、子宮頸部右後方へのアプローチは容易ではありません。そのため、右の広間膜後葉〜仙骨子宮靭帯の処理が不十分になりがちです。しかし、この部分をおろそかにすると、腟切開時の出血や尿管損傷のリスクが高まります。私は、たとえ時間がかかっても、この部分を含めて全ての手順を確実に行うようにしています。

2.ショートカットはしない
ビデオクリニックなどで見られるTLHの動画の中には、手術時間を短縮するために、いくつかの手順を省略しているものがあります。確かに、ショートカットすることで手術時間を短縮することはできますが、安全性を犠牲にする可能性も高まります。難易度の低い症例ならそれも問題ないかもしれませんが、少し難易度が上がっただけで太刀打ちできなくなってしまいます。ですから、比較的容易な症例こそ、手順を守るということが大事だと思います。

3.術野展開
TLHでもっとも重要視されるのは、術野展開だと思います。前述のとおり「基本に忠実な手術操作」だけではなく、術野展開が重要です。TLHの術野の展開は一人で行うものではなく、子宮マニピュレーターや助手の鉗子でも行うことになるので三人の共同作業であり、これをリードするのは術者です。術者は自分の手術操作をするだけではなく、同時に二人の助手を指示しなければなりません。

子宮頸部右後方の処理(巨大子宮頸部筋腫に対する腹腔鏡下子宮全摘術):この手技は常に定型化して行なっておかないと、いざという時に右後方の処理はできなくなります。

TLHの序盤の手術操作はすべて子宮頸部~腟周囲の処理のためにあると言っても過言ではありません。私は少し時間をかけても「ちゃんと」やりたいのです。イチロー選手も言ってたの知ってますか?「ちゃんとやってよ」って。

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尿管に優しい手術 TLHへの私のこだわり2

2025-01-15 | 腹腔鏡
前回は「尿管損傷ゼロ」を目指したTLHへのこだわりについてお話しました。 今回は、尿管に優しい手術という観点から、さらに掘り下げていきたいと思います。 

術野を大きく展開する 
TLHにおいて、私は術野を大きく展開することを心がけています。具体的には、子宮を周囲の組織から十分に剥離し可動性を高めるようにしています。これにより、以下のメリットがあります。 
・子宮と他臓器の間にトラクションをかけやすくなるため、解剖学的な位置関係が把握しやすくなる。 
・膀胱や尿管と子宮・腟との間隙がはっきりするため、尿管損傷のリスクを低減できる。
体に優しい手術をするためには、大きく展開することが大事ですが、無駄な切開剥離をしないこと・無駄な出血をさせないことも重要です。


巨大子宮筋腫のTLHの序盤における術野展開(ドライな術野を保つことが大事)

尿管や膀胱周囲の結合織を大事にする 
尿管や膀胱を丸裸にするが如く剥離操作をする術者もいますが、私はこの方法を避けています。なぜなら、尿管や膀胱周囲の結合織を過度に剥離すると、泌尿器側の血管を損傷するリスクが高まるからです。TLHは子宮を摘出する手術であり、泌尿器系への侵襲は最小限に抑えるべきだと考えています。尿管や膀胱周囲の結合織を可能な限り温存することで、泌尿器系の機能を保護し、合併症のリスクを低減することができます。 

尿管側に入る場合も、それを最小限にする 
子宮内膜症などで強固な癒着がある場合は、尿管側に侵入する手術操作が必要となることがあります。しかし、その場合でも、尿管表面を剥離する部位は最小限に抑え、効率的な剥離操作を行うように心がけています。尿管への負担を最小限にすることで、術後の合併症リスクを低減し、患者さんのQOL向上に貢献できると考えています。幸いにも今のところ、私は子宮頸部周囲の処理で尿管損傷をしたことがありません。 

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尿管損傷ゼロ!TLHへの私のこだわり1

2025-01-14 | 腹腔鏡
TLH(腹腔鏡下子宮全摘術)は、低侵襲で患者さんの負担が少ない手術として広く行われていますが、合併症をゼロにすることは、残念ながらできません。TLHで起こりうる合併症には、例えば、他の臓器を傷つけてしまったり、手術中や手術後に大量に出血してしまったり、術後に縫合した腟壁が離開してしまったり、術後に感染を起こしてしまったり…といったものが挙げられます。 

とはいえ、私は「合併症は限りなくゼロに近づけることが可能だ」と考えています。そのために大事なのは、これまで述べてきた「正確で精細」「分かりやすい手術」「一手間かける」「ゆっくり動く」などを、手術中にきちんと実行することです。そして、昨年、私が執筆した「よくわかるTLH」に書いた基本的なことを理解しておけば、合併症リスクは最小限になるだろうと考えています。 

TLHにおける合併症の中で、特に深刻なのが尿管損傷です。 
その発生率は、一般的に0.3~1%と言われていますが、私は4000例のTLHにおいて、尿管損傷をわずか4例(0.1%)に抑えることができています。当院には、多くの難症例が集まってきますので、そのような状況下でのこの発生率は誇れるものだと自負しています。 (わずか4例とはいえ、納得はしてはいないのですが)

しかし、合併症症例を後から検討すると、その手術操作において何らかの問題があったことは否定できません。ひとたび、合併症が起こってしまうと、患者さんだけでなく、私自身も非常に辛い思いをします。実は、「よくわかるTLH」も、合併症の経験を反省し、手術そのものの戦略や解剖の捉え方を再検討した結果、生まれたものなんです。

プロ野球の野村克也監督は、「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。」と述べています。これは、松浦静山の言葉を引用したものであり、負ける時には負けにつながる必然的な要因があるが、セオリーどおり、教科書どおりにやっていれば、なぜ勝ったのかどうにも思い当たらない不思議な勝ち🏅があるという意味のようです。 

教科書どおりに手術をすれば、まあ、なんとかできた、ということはあるでしょう。しかし、手術や臨床解剖学の教科書や理論に完全なものはなく、教科書どおりにやっていても合併症につながる要因はどこかにあるものです。それは、不思議な勝ちを繰り返しているときに、突然悪魔のようにやってくるものかもしれません。

そういう意味では、『不思議の勝ちの中に、負けの種あり』と言えるのではないでしょうか?だからこそ、上手くいった手術動画もきちんと見なおして、負けの種を探していく作業が大事なのです。
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ゆっくり動くということ

2025-01-10 | 腹腔鏡
手術が上手い人は、手捌きが早いと思われているのではないでしょうか?もちろん、無駄な動きをなくし、手術時間を短縮することは重要です。しかし、私は「ゆっくり動く」ことにも大きなメリットがあると考えています。今回は、「ゆっくり動く」ことによって得られる3つのメリットについてお話します。

メリット1:助手との協調性
あまり早く動くと、助手が慌ててしまうことがあります。慣れていない助手であれば、なおさらです。以前は助手を急かしてしまったこともありました。術者と助手が協調しない手術では、スムーズな手術進行は難しく、合併症のリスクも高まります。良い手術とは、術者と助手のリズムがシンクロしている手術です。助手のリズムに合わせて、ゆっくり動ける術者こそ、優秀な術者と言えるでしょう。

メリット2:立体感の把握
私たちは、腹腔鏡の二次元の画像を見ながら、臓器の三次元の構造を把握しなければなりません。これは容易なことではありません。しかし、ゆっくりとした動きを見ることで、三次元を感じやすくなるというメリットがあります。

メリット3:優しい手術操作
早く動こうとすると、鉗子の動きが直線的になりがちです。これは、手先だけで手術操作をしている状態です。患者さんの体に合わせて、曲線的な鉗子運動をすることで、より優しい手術ができます。そのためには、術者は手や腕だけではなく、自分の体のすべての関節を使って動いていく必要があります。そうすることで、体全体で立体感を感じながら、繊細な手術操作を行うことができるようになります。

「ゆっくり動く」ことは、一見すると非効率に思えるかもしれません。しかし、助手との協調性、立体感の把握、優しい手術操作など、多くのメリットをもたらします。

『ゆっくり動いているのに何故か早く終わる手術』これが手術の理想だと思います。
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手術時間へのこだわり

2025-01-09 | 腹腔鏡
手術時間については、いろいろと考えさせられることがあります。
私の手術は、比較的早い方だと思います。ですが、世の中には私よりもはるかに早い手術をする人がたくさんいます。「手術が早い=良い手術」というわけではありませんが、やはり手術時間は短い方が、患者さんの体への負担も少なく、医療費の削減・病院の経費節減にもつながります。

では、どうすれば手術時間を短縮できるのでしょうか?
もちろん、闇雲にスピードを上げるだけではいけません。一つ一つの手術操作を丁寧に行いながらも、無駄を省き、効率的に手術を進めることが重要です。

私は、たとえ一手間かかっても、より安全で確実な方法を選択するようにしています。例えば、止血する際でも気になるところは糸針で縫合するようにしています。これは、一見すると時間がかかるように思えるかもしれません。しかし、この一手間をかけることで止血操作をスムーズに終えることで実際には時間が短縮しますし、術後の出血リスクを大幅に減らすことができます。

また、私は手術中の無駄な動きを極力減らすように心がけています。要領の悪い無駄な手術操作は、時間の無駄につながるだけでなく、手術室のランニングコストを増大させてしまいます。

私は、手術室のランニングコストは1分間で2000~3000円程度と算出しています。無駄な時間を10分間削減できれば、2万~3万円のコスト削減になるわけです。これは、決して無視できる金額ではありません。技術認定医であっても無駄を省いていける人は少ないように思います。

手術時間に対する私の考え方をまとめると、以下のようになります。
  • 手術は、早ければ良いというわけではない。
  • 患者さんの安全を第一に考え、丁寧な手術を心がける。
  • 無駄な手術操作を避け、効率的に手術を進める。
  • 手術時間短縮は病院の経済的負担を減らし良質な医療の提供に寄与しています。
手術が早ければ、その分早く家に帰れるし超過勤務手当も削減できて病院経営にも好影響です。(もちろん安全第一ですよ😊
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分かりやすい手術

2025-01-08 | 腹腔鏡
手術を成功させるためには、様々な要素が重要となりますが、私が特に重要視しているのは「分かりやすさ」です。分かりやすい手術とは、一体どのような手術でしょうか?
私は、以下の3つのポイントが重要だと考えています。

1. 画面が明るく分かりやすい
無駄な出血をすると、術野が血液で覆われてしまい、解剖学的な構造が見えにくくなります。また、狭い術野では、手術操作が制限され、周囲の組織を傷つけてしまうリスクも高まります。ドライで広い術野を展開することで、手術は格段に分かりやすくなります。Dr.Kohも、「Visualizationが最も重要」とおっしゃっていたように、術野をクリアに保つことは、手術の成功に不可欠です。

2. 解剖が分かりやすい
適切な意図を持って、目的の部位に適切なトラクションをかけ、正確で精細な切開や剥離を行うことで、解剖学的な構造が明瞭になります。逆に、闇雲に組織を切開したり、剥離したりすると、解剖学的な構造が分かりにくくなり、誤った操作をしてしまうリスクも高まります。

3. 術者の意図が分かりやすい
術野の展開や助手との協調がうまくいっている場合、術者が何をしたいのか、次にどのような操作を行うのかが、周囲のスタッフにも容易に理解できます。術者の意図が分かりやすい手術は、スムーズに進みやすく、スタッフも安心して手術に集中することができます。そのためには、術者には言葉や動作だけではなく、空気感でも、相手に自分の意図を伝えることが重要になります。
(ちなみに、私の手術は分かりやすいらしい… 😊)

3つの「分かりやすさ」を追求していくことで、
  • 手術の安全性向上
  • 手術時間の短縮
  • スタッフのストレス軽減
など、様々なメリットが期待できます。

分かりやすいオペやってるのが疲れないんだよな、、、😊 
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