妊娠11週目のある日、未沙はつわりで朝から気分がすぐれず、ベッドから起き上がる事が出来なかった。
「ごめんなさい…」
朝食の用意が出来ない事を、布団の中から未沙が謝った。
「気にすんなよ。子供じゃないんだ、メシの用意ぐらい自分で出来る」
輝は顔色の悪い未沙の頭を軽く叩く様に撫でる。
「ちゃんと寝てろよ。帰りに買ってきて欲しいものあるか?」
「梅干」
「梅干?この間買って来た筈だけど…」
「もう全部食べちゃった」
「えぇ?!」
つわりが酷くなってきてから未沙はあまり食事らしい食事が出来ず、梅干しとトマトばかりを食べていた。
早番の任務も終わり、輝は梅干しを求めてスーパーに立ち寄る。
---梅干しばかりじゃ身体に悪いよなぁ…。
とはいえ、匂いに反応する未沙に何を食べさせたら良いのかよくわからない。
輝の頭には【栄養=肉】の図式しか思い浮かばない。
「でも肉の匂いもダメだって言ってたしなぁ…」
そのおかげでここしばらくハンバーグもお預けにされている。
さてどうしたものか、と肉売り場でうなっていると「中佐」と呼ぶ声が聞こえた。
振り向くとそこにはタイミング良く(?)木村医師の姿があった。
「ああ、やっぱり中佐でした。こんばんは」
「先生、いつもお世話になってます」
輝は軽く頭を下げた。
「いえいえ、こちらこそ。あ、梅干し。艦長のリクエストですね?」
「はい…普通の食事は匂いがダメだって食べられないみたいなんですよ」
「そうですか。じゃあ冷たい食べ物とか作ってみるといいですよ。塩分の摂り過ぎは妊娠中毒症を引き起こしかねないので梅干しはなるべく抑えるようにしてください」
「はぁ…」
「量より質、そう、たんぱく質とカルシウムを中心にビタミンB1とEもなるべく多く摂るよう艦長にお伝えください」
ニコニコと笑いながらアドバイスしてくれて彼は自分の目的の商品を探しにその場を後にした。
頼りなげに見えてもやはり医者なのだな、と輝は思った。
「たんぱく質とカルシウムか…」
牛乳やチーズでいいのかな?と、乳製品売り場へ行こうとした時、缶詰の山が思い切り床に崩れ落ちる音が店内に響いた。
その音源の方へ視線を向けるとそこには木村医師の姿が…。
「先生、大丈夫ですか?」
「ああ、すみません。缶詰の山にカゴをぶつけてしまいまして…」
しりもちをついたような格好で頭を掻きながら照れ笑いをする。
---ホントに大丈夫なのか?この先生…。
輝は缶詰を戻すのを手伝いながら一抹の不安を覚えた。
スーパーの他にもう一軒、輝はとある店に立ち寄る。
「え~と、すみません。バースディケーキなんですけど…」
カフェも併設している洋菓子店。
スカル部隊の女性隊員や甘党の男性隊員にリサーチした結果、ここなら間違いない!という意見を多く聞き、もうすぐ来る未沙の誕生日のケーキを予約しに来た。
「え、と…プレートには”Thank you”って書いてください」
「なんで”Thank you”なの?」
突然後ろから声を掛けられて、輝は心臓が飛び出るかのように驚いた。
「え?!あの?!」
振り向くとキャップを被り、細いフレームのメガネ、ジップアップパーカーにストレートジーンズといったラフな服装の女性が立っていた。
「えと、あの…」
誰だかわからなくてきょとんとしている輝に、メガネをずらしながら近寄った。
「ア・タ・シ、よ。輝」
「ミン…」
名前を呼ぼうとした輝を止めるように、ミンメイは人差指を自分の唇に当てた。
芸能人であるミンメイがいると分かれば騒ぎになる可能性が大きいからだ。
「今、リハーサルの休憩中で差し入れ買いに来たとこなのよ」
そういって彼女はパンプキンパイを1ホール注文した。
「ここのパンプキンパイ、美味しいのよ」
時間があるならお茶していかない?とカフェに誘われたが、輝は断った。
「未沙がつわりで寝込んでいるから、早く帰ってあげたいんだ。ごめん」
「そっかぁ。もうすぐ4ヶ月だっけ。じゃ、ちょっと待ってて。途中まで一緒に帰りましょ」
ミンメイはパンプキンパイを2ピース追加して、それを輝の前に差し出した。
「これ、未沙さんにお土産」
「え?悪いよ、そんな…」
「いいのよ。つわりで食べられないかもしれないけど、かぼちゃって栄養あるから食べて欲しいの」
「栄養か…医者にも言われたよ。ちゃんと栄養摂るようにって…」
「ならば好都合だわ」
ミンメイはニッコリと笑った。
それから二人は並んで歩く。
「そういえばバースディケーキになんで”Thank you”なの?」
ミンメイは先程の注文を思い出し、もう一度訊ねた。
「え、あ、ああ、その…俺さ、自分の誕生日、すっげぇ嫌だったんだ」
輝はぽつり、ぽつり、と話し始めた。
自分が生まれた時に母親が他界したこと。
去年の誕生日に未沙が”Thank you”のケーキを用意してくれたこと。
「だから、今度は俺が”Thank you”って言う番だと思ってさ…」
照れくさそうに鼻の頭を掻く輝を見て、ミンメイは泣きたくなるのを必死に我慢した。
一度俯き、唇をきゅ、と噛締めて輝へと向き直る。
「あーあ、ごちそうさま!相変わらずラッブラブなのねぇ~アツイ、アツイ!」
「あ、あんまり茶化すなよっ!」
輝は顔を真っ赤にした。
「どーせ私のライヴが明日だって事も忘れてんでしょ」
「え?!あ、明日だっけ」
「ふふ。いーわよ。どうせ来られないんでしょうし。でもこのライヴ、ビデオ収録するの。4月に出る予定だから買って、ね」
おねだりをするように甘えた声を出した。
「ちゃっかりしてるなぁ」
まっすぐな笑顔をミンメイに見せ、二人はそれぞれ帰るべき所へと手を振って別れた。
嘘だけ連ねる口
横顔はママ似で美人?!
可愛い子ぶりぶり
下品にウインク
私は?
帰れないから ズドン!
輝が家に帰るとミンメイの歌声が聞こえた。
「おかえりなさい」
「未沙、大丈夫なのか?寝てろって言っただろ」
「大丈夫よ。それより見て見て、カーディガン編みあがったの」
未沙は嬉々としてソファから立ち上がり、出来たばかりのカーディガンを広げて見せた。
買い物袋とパンプキンパイの箱をダイニングテーブルに置いて輝はカーディガンを手に取る。
「うわぁ、ちっちぇーなぁ」
「当たり前でしょ、赤ちゃんのだもの」
「そっか、そりゃそうだな。男の子かな、女の子かな。早く着せてあげたいな、これ」
春になる前から冬支度を始める赤ん坊に期待を膨らませ、二人は幸せな家族を頭に描いて幸せを噛締めあう。
Minmay's song:「歌姫」
「ごめんなさい…」
朝食の用意が出来ない事を、布団の中から未沙が謝った。
「気にすんなよ。子供じゃないんだ、メシの用意ぐらい自分で出来る」
輝は顔色の悪い未沙の頭を軽く叩く様に撫でる。
「ちゃんと寝てろよ。帰りに買ってきて欲しいものあるか?」
「梅干」
「梅干?この間買って来た筈だけど…」
「もう全部食べちゃった」
「えぇ?!」
つわりが酷くなってきてから未沙はあまり食事らしい食事が出来ず、梅干しとトマトばかりを食べていた。
早番の任務も終わり、輝は梅干しを求めてスーパーに立ち寄る。
---梅干しばかりじゃ身体に悪いよなぁ…。
とはいえ、匂いに反応する未沙に何を食べさせたら良いのかよくわからない。
輝の頭には【栄養=肉】の図式しか思い浮かばない。
「でも肉の匂いもダメだって言ってたしなぁ…」
そのおかげでここしばらくハンバーグもお預けにされている。
さてどうしたものか、と肉売り場でうなっていると「中佐」と呼ぶ声が聞こえた。
振り向くとそこにはタイミング良く(?)木村医師の姿があった。
「ああ、やっぱり中佐でした。こんばんは」
「先生、いつもお世話になってます」
輝は軽く頭を下げた。
「いえいえ、こちらこそ。あ、梅干し。艦長のリクエストですね?」
「はい…普通の食事は匂いがダメだって食べられないみたいなんですよ」
「そうですか。じゃあ冷たい食べ物とか作ってみるといいですよ。塩分の摂り過ぎは妊娠中毒症を引き起こしかねないので梅干しはなるべく抑えるようにしてください」
「はぁ…」
「量より質、そう、たんぱく質とカルシウムを中心にビタミンB1とEもなるべく多く摂るよう艦長にお伝えください」
ニコニコと笑いながらアドバイスしてくれて彼は自分の目的の商品を探しにその場を後にした。
頼りなげに見えてもやはり医者なのだな、と輝は思った。
「たんぱく質とカルシウムか…」
牛乳やチーズでいいのかな?と、乳製品売り場へ行こうとした時、缶詰の山が思い切り床に崩れ落ちる音が店内に響いた。
その音源の方へ視線を向けるとそこには木村医師の姿が…。
「先生、大丈夫ですか?」
「ああ、すみません。缶詰の山にカゴをぶつけてしまいまして…」
しりもちをついたような格好で頭を掻きながら照れ笑いをする。
---ホントに大丈夫なのか?この先生…。
輝は缶詰を戻すのを手伝いながら一抹の不安を覚えた。
スーパーの他にもう一軒、輝はとある店に立ち寄る。
「え~と、すみません。バースディケーキなんですけど…」
カフェも併設している洋菓子店。
スカル部隊の女性隊員や甘党の男性隊員にリサーチした結果、ここなら間違いない!という意見を多く聞き、もうすぐ来る未沙の誕生日のケーキを予約しに来た。
「え、と…プレートには”Thank you”って書いてください」
「なんで”Thank you”なの?」
突然後ろから声を掛けられて、輝は心臓が飛び出るかのように驚いた。
「え?!あの?!」
振り向くとキャップを被り、細いフレームのメガネ、ジップアップパーカーにストレートジーンズといったラフな服装の女性が立っていた。
「えと、あの…」
誰だかわからなくてきょとんとしている輝に、メガネをずらしながら近寄った。
「ア・タ・シ、よ。輝」
「ミン…」
名前を呼ぼうとした輝を止めるように、ミンメイは人差指を自分の唇に当てた。
芸能人であるミンメイがいると分かれば騒ぎになる可能性が大きいからだ。
「今、リハーサルの休憩中で差し入れ買いに来たとこなのよ」
そういって彼女はパンプキンパイを1ホール注文した。
「ここのパンプキンパイ、美味しいのよ」
時間があるならお茶していかない?とカフェに誘われたが、輝は断った。
「未沙がつわりで寝込んでいるから、早く帰ってあげたいんだ。ごめん」
「そっかぁ。もうすぐ4ヶ月だっけ。じゃ、ちょっと待ってて。途中まで一緒に帰りましょ」
ミンメイはパンプキンパイを2ピース追加して、それを輝の前に差し出した。
「これ、未沙さんにお土産」
「え?悪いよ、そんな…」
「いいのよ。つわりで食べられないかもしれないけど、かぼちゃって栄養あるから食べて欲しいの」
「栄養か…医者にも言われたよ。ちゃんと栄養摂るようにって…」
「ならば好都合だわ」
ミンメイはニッコリと笑った。
それから二人は並んで歩く。
「そういえばバースディケーキになんで”Thank you”なの?」
ミンメイは先程の注文を思い出し、もう一度訊ねた。
「え、あ、ああ、その…俺さ、自分の誕生日、すっげぇ嫌だったんだ」
輝はぽつり、ぽつり、と話し始めた。
自分が生まれた時に母親が他界したこと。
去年の誕生日に未沙が”Thank you”のケーキを用意してくれたこと。
「だから、今度は俺が”Thank you”って言う番だと思ってさ…」
照れくさそうに鼻の頭を掻く輝を見て、ミンメイは泣きたくなるのを必死に我慢した。
一度俯き、唇をきゅ、と噛締めて輝へと向き直る。
「あーあ、ごちそうさま!相変わらずラッブラブなのねぇ~アツイ、アツイ!」
「あ、あんまり茶化すなよっ!」
輝は顔を真っ赤にした。
「どーせ私のライヴが明日だって事も忘れてんでしょ」
「え?!あ、明日だっけ」
「ふふ。いーわよ。どうせ来られないんでしょうし。でもこのライヴ、ビデオ収録するの。4月に出る予定だから買って、ね」
おねだりをするように甘えた声を出した。
「ちゃっかりしてるなぁ」
まっすぐな笑顔をミンメイに見せ、二人はそれぞれ帰るべき所へと手を振って別れた。
嘘だけ連ねる口
横顔はママ似で美人?!
可愛い子ぶりぶり
下品にウインク
私は?
帰れないから ズドン!
輝が家に帰るとミンメイの歌声が聞こえた。
「おかえりなさい」
「未沙、大丈夫なのか?寝てろって言っただろ」
「大丈夫よ。それより見て見て、カーディガン編みあがったの」
未沙は嬉々としてソファから立ち上がり、出来たばかりのカーディガンを広げて見せた。
買い物袋とパンプキンパイの箱をダイニングテーブルに置いて輝はカーディガンを手に取る。
「うわぁ、ちっちぇーなぁ」
「当たり前でしょ、赤ちゃんのだもの」
「そっか、そりゃそうだな。男の子かな、女の子かな。早く着せてあげたいな、これ」
春になる前から冬支度を始める赤ん坊に期待を膨らませ、二人は幸せな家族を頭に描いて幸せを噛締めあう。
Minmay's song:「歌姫」
私にゃ関係ないが…ふっ(トオイメ)
今までのおわびに輝にはお預け&ご奉仕ですね~
ミンメイなんか可哀そう・・・いっその事ベンジャミンとどうだろう?
いいなぁ。しばらく旅してないなぁ…。
知らな~いま~ちをぉ旅し~てみぃたぁいぃ♪
犬輝(お預け&ご奉仕)復活でございます
ミンメイにベンジャミンっすか?
そりゃまた尻に敷かれそうなカップリングですな。
ルーシーにベンジャミンでも天然最強カップルになりそうだ(笑)