(T_T)ゞビシッ!! . . . 本文を読む
息苦しさで眼が覚めた。
照明はついていないのに、部屋の中がほのかに明るい。
月明かりが窓から入ってきているせいだ。
---俺はまた、ひとりだ…。
諦めが再び孤独の海へ導こうとした瞬間、「輝」と呼び止められた。
「大丈夫?」
顔を横に向けると、そこには心配そうに覗き込む未沙がいた。
驚きのあまりに声も出せずにいる。
「嫌な夢でも見たの?」
まだ夢の中にいるんじゃないかと思い、未沙へと手を伸ばす。
し . . . 本文を読む
瞼は閉じているが完全に眠ってはいない。
輝は浅い眠りの中にいる。
現実と幻が入り混じっている。
『フォッカーさん!ボクに飛行機の操縦を教えて!ボク、父さんを喜ばせたいんだ!』
まだ十代だったが、輝の頭を撫でるロイ=フォッカーの手はたくましく、暖かかった。
『いいぞ!じゃあ、これからはオレの事「先輩」と呼べ!』
あの屈託の無い笑顔は、もう還らない。
『隊長!いい店が出来たんですよ!どうです?これから . . . 本文を読む
『相手が生きてるだけいいじゃない』
かつて親友が口にした言葉を思い出し、未沙は冷静さを取り戻しつつあった。
苦しむのは生きている証拠。
楽しい、嬉しいだけの人生は、無い。
---また、逃げるの?未沙。
ライバーを失った絶望から軍務遂行という形で逃げ、ミンメイから退役という形で逃げようとした。
そして今度は自分が傷つくのが怖くて輝から逃げようとしている。
---でも、輝を失う事の方が怖い…。
比べた . . . 本文を読む
夕方になり、薬も切れて眼が覚めた。
それでもまだ頭はぼうっとした状態である。
軽い睡眠導入剤とは言え、多少なりの筋肉弛緩剤も配合されているから、頭だけではなく体中がだるい。
「眼が覚めた?」
半開きの眼を声の聞こえた方向へ向けるとキャシーがデスクチェアに座っていた。
「アタシがわかる?」
「…キャシー」
キャシーはふう、とひとつ溜息をこぼす。しかしそれは安堵の溜息ではない。
「…お腹空いてない?何 . . . 本文を読む
輝を落ち着かせ、眠ったのを確認してからキャシーは一旦外に出た。
公衆電話で本部に連絡をし、マックスを呼び出してもらい、とりあえず「高熱で動けない状態だが、心配はない」とだけ伝えた。
そして再び寝室に戻り、薬で眠っている輝の枕元に腰を降ろす。
キャシーは右親指の爪を噛む。
少しは二人の恋人事情が進展すると思って未沙を挑発したのに、全くの逆効果だった。
『これだから頭でっかちの女ってのは…』
13年前 . . . 本文を読む
それでも朝はやってくる。時計の針は止まらない。
これからどうすればいいんだろう?
顔を洗って歯を磨き、朝食を摂るなどの習慣さえ考え付かない。
自分は産まれてはいけなかった。
母親を殺したのは、息子の自分。
母さん。どうして俺を産んだ?
父さん。母さんを殺して、ごめんなさい。
心の中で繰り返す疑問と謝罪。
未沙。君に嫌われて当然だ…。
どうして自分は生きている?
誰も救えない。誰も救われない。
何の . . . 本文を読む
輝の所為じゃない。誰の所為でもない。
不安の海に溺れているようだ。すがる藁が必要だった。
ライバーだけを愛してれば良かった。(死んだ人の心は永遠に変わらない)
恋なんてしなければ良かった。(そうすれば傷つく事も無い)
立派な軍人になっていつか父を超える士官になる。
それだけを目標に生きていた。
だからひとりでも平気だった。
鬼と言われてもなんともなかった。
なのに…。
「貴方と会わなければ…こんな . . . 本文を読む
確かなものが欲しい。
言葉だけじゃ足りない。
それだけじゃ切ない。
すがりつける何かが…。
「ここでもういいよ。キャシー。少し歩いて帰る」
輝は家までもう少しという所で車を停めてもらった。
「欲しいものを欲しい、と駄々こねられるのは子供の特権よ。無理に背伸びして、我慢するなんて勿体無いわ」
ましてや、「それ」は目の前にあって手に入らないものでは無いのだから。
「…おやすみ」
車のドアを閉め、キャ . . . 本文を読む
大気圏演習を終えた輝はその後、各隊長と会議室でこれからの訓練のスケジュールを立てていた。
「アポロでの訓練は4月から入れるよう、大変だろうけどよろしく頼む」
「わかりました」
「では、解散」
「お疲れ様です!」
隊長達が一斉に立ち上がり輝に敬礼を捧げる。
遅れて輝が立ち上がり敬礼を静かに返して会議室を後にする。
4月から7月いっぱいは月にあるアポロ基地での訓練になる事が決定した。
宇宙を航行するメ . . . 本文を読む
航空部隊本部内をとぼとぼと歩く。
輝に会いたいような、会いたくないような…複雑な思いが足を重くさせる。
想いが届くまでは彼の視線を欲した。
想いが届いてからは彼の心を欲している。
いや、心だけではなく、身体も、過去も、未来も。
果て無き独占欲。
一人の人間にそれが働く事が恋なのか?
苦い顔をしながら歩いていると、少し開いたドアの向こうから男達の話し声が聞こえた。
「あんな程度で部隊長なら俺は本部長 . . . 本文を読む
---ゴォッ!
爆音と共にライトニングが空を駆ける。
「高度30000ft到達。速度コンマ07上昇…」
特別管制室でオペレーターが状況を報告する。
VF-4Aライトニング3の大気圏内機動チェック。
「ライトニング、テストコンバットスタートします。準備はよろしいですか?」
『いつでもどうぞ』
「では追尾ミサイル発射から始めます」
Go!の掛け声と同時に敵機に扮するVF-1カメリア小隊からいっせいにミ . . . 本文を読む
青く、蒼い、空。
星間戦争で汚れてしまった空気も浄化され、深い青空が戻ってきた。
3年前まではこの空をただひたすら飛んでいるだけだった。
輝は空を見上げる。
だけど見つめているのは、違う空。
It seems to be a thing taking all with at time.
But why do you forget loneliness?
Is it abandoned feeli . . . 本文を読む
覇気の無い調整飛行が終わり、整備班の待つエプロンにライトニングを停める。
「…やっぱり大気圏だと少し重いな」
キャノピーを上げてつぶやく。
「でもこいつが飛ぶのは本領発揮できる宇宙空間ですからね」
「………」
「?大尉?どうしました?何か不具合でも?」
「いや。なんでもない…う~ん」
なんでもないと言いながら唸られると心配になってしまうではないか。
「大尉!何か意見がありましたなら遠慮なく言ってく . . . 本文を読む