航空部隊本部内をとぼとぼと歩く。
輝に会いたいような、会いたくないような…複雑な思いが足を重くさせる。
想いが届くまでは彼の視線を欲した。
想いが届いてからは彼の心を欲している。
いや、心だけではなく、身体も、過去も、未来も。
果て無き独占欲。
一人の人間にそれが働く事が恋なのか?
苦い顔をしながら歩いていると、少し開いたドアの向こうから男達の話し声が聞こえた。
「あんな程度で部隊長なら俺は本部長 . . . 本文を読む
---ゴォッ!
爆音と共にライトニングが空を駆ける。
「高度30000ft到達。速度コンマ07上昇…」
特別管制室でオペレーターが状況を報告する。
VF-4Aライトニング3の大気圏内機動チェック。
「ライトニング、テストコンバットスタートします。準備はよろしいですか?」
『いつでもどうぞ』
「では追尾ミサイル発射から始めます」
Go!の掛け声と同時に敵機に扮するVF-1カメリア小隊からいっせいにミ . . . 本文を読む
青く、蒼い、空。
星間戦争で汚れてしまった空気も浄化され、深い青空が戻ってきた。
3年前まではこの空をただひたすら飛んでいるだけだった。
輝は空を見上げる。
だけど見つめているのは、違う空。
It seems to be a thing taking all with at time.
But why do you forget loneliness?
Is it abandoned feeli . . . 本文を読む
覇気の無い調整飛行が終わり、整備班の待つエプロンにライトニングを停める。
「…やっぱり大気圏だと少し重いな」
キャノピーを上げてつぶやく。
「でもこいつが飛ぶのは本領発揮できる宇宙空間ですからね」
「………」
「?大尉?どうしました?何か不具合でも?」
「いや。なんでもない…う~ん」
なんでもないと言いながら唸られると心配になってしまうではないか。
「大尉!何か意見がありましたなら遠慮なく言ってく . . . 本文を読む
快晴の空の下。VF-4の機体が映える。
「俺のライトニング~♪会いたかったよ~」
とるものもとりあえず、早速パイロットスーツに着替えて出迎えた輝は飛行機バカよろしく到着したばかりのVF-4Aライトニング3に擦り寄っていた。
「あーあ。がっついてんじゃないわよ。ガキ」
後ろから声を掛けるのは、やはりキャシー。
「がっつく男は嫌われるよ、坊や」
「坊やって言うな…」
低い声でキャシーを睨む。
それでも . . . 本文を読む
輝とキャシーについては誤解だという事はわかった。
父親のチームメンバーだったという事は聞いてはいたが、年齢は聞いていなかったのだ。
やきもきしていた自分に疲れを感じながら、未沙は食材の入った袋を持って輝の家へと向かう。
『今日は非番だって言っていたから家にいるわよね』
一緒に夕食を摂るのも久しぶりだ。
この事をクローディアに話すと『明日は午後からの視察まで何も無いんだから、泊まってきたら?』とから . . . 本文を読む
翌日、非番で遅く起きた輝はコーヒーを飲みながらぼーっとしていた。
クローディアとキャシーの二人に坊や扱いされ、更には駄目出し。
『ボディランゲージほど愛を感じる瞬間は無いのよ、坊や』
未沙の髪、肌、唇…あの士官室での事が脳裏に甦る。
あれから輝は毎朝と言っていい程、下着だけは洗濯を忘れずに家を留守にした。
以前はランニングだろうがトランクスだろうがポイポイ脱ぎ捨てては未沙に洗濯してもらっていたが、 . . . 本文を読む
「そろそろ打ち合わせも終わる頃ね」と、クローディアは休憩室を後にした。
キャシーは「どうなってるの?!」と、まだ輝に詰め寄っていた。
「早瀬少佐の噂は耳にはしているわ。『鬼より怖い』って言われてる人でしょ?アンタ、マゾ?!しかも年上じゃない!」
「最後の一言は余計だ!」
輝が強く反発する。
「おお。庇ったな。いい度胸だ。どーいういきさつがあったか、お姉さんに洗いざらい白状してもらおうか」
「黙秘権 . . . 本文を読む
その日、グローバル総司令に伴って、クローディアは航空隊本部に来ていた。
彼女は総司令の秘書のような役職になっている。
グローバルは本部長との打ち合わせの為会議室へ入り、クローディアは待機休憩室でお茶を飲んでいた。
そこへ久しぶりに亡き恋人の後輩・一条輝が顔を見せにやってきた。
「お久しぶりね、坊や。あら?筋肉ついてたくましくなったわねー」
「そうでしょうか?そうだといいんですが…」
と、溜息交じり . . . 本文を読む
美人訓練教官の話題が航空部隊本部中に広まった。
ゆるいカールがかかった、肩まで伸びたプラチナブロンド。
少しキツメに見える切れ長の瞳。
透き通るような白い肌。
鍛えてはいるが、メリハリのあるボディライン。
身長は180cmを越えている為、迫力はその辺の男にも引けを取らない。
指導も親切・丁寧で好評を得ている。
しかし、そんな彼女が、メガロード護衛航空隊長と、いい仲である。
という噂も広まった。
. . . 本文を読む
輝は落ち込んでいた。
とぼとぼと格納庫へと向かい、ロッカールームでパイロットスーツに着替える間にも何度か溜息をこぼす。
『未沙の隣にふさわしい男になろうって決意したのに』
性衝動を抑えられなかった自分が情けない。
よろよろとした足取りでヘルメットを手に取り、愛機のVF-1Sへと歩いていく。
「計器オールグリーンです」
整備員がコックピットから降りながら告げた。
しかし輝は聞いていないようで、無反応 . . . 本文を読む
航空部隊本部玄関から外へ飛び出した。
突然の出来事でまだ頭の中が整理出来ていない。
エントランス・ロータリーで立ち止まり、呼吸を整える。
冷たい空気がよりいっそう冷たく感じる。
頬が熱い。でも背中がぞくぞくする。
訳のわからない感覚を感じながら本部を後にした。
しかし、それからまたしばらく、輝とはすれ違いの日々が続いた。
そんなある日、会議と会議の間、少し時間が多めに取れそうなのでクローディアを . . . 本文を読む