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「土壌-植物系における放射性セシウムの挙動とその変動要因 」より抜粋:農環研報31,75-129(2012)

2012-12-05 20:39:19 | 日記
山口紀子・高田裕介・林健太郎・石川 覚・倉俣正人・江口定夫・吉川省子・
坂口 敦・朝田 景・和穎朗太・牧野知之・赤羽幾子・平舘俊太郎

東京電力福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性核種は、広く環境中に拡散し、日本の農業にも大きな打撃を与えた。

今後も長期にわたり半減期の長い放射性セシウム(134Cs, 2.06年、137Cs, 30.2年)による影響が懸念される。

土壌に沈着した放射性Csはまず土壌に吸着する。そして土壌溶液に再分配されることで植物の根から吸収され可食部まで移行する。

一度土壌に吸着した放射性Csが土壌溶液に再分配される割合は非常にわずかである。
このことが農作物の汚染を最小限に抑えている一方で、除染を難しいものにする一因ともなっている。

森林生態系では放射性Csは比較的動きやすい形態を保存したままで循環しているため、農地への流入を含め、放射性Csのダイナミックな挙動を流域レベルで考慮する必要があ
る。

本総説では、土壌‐植物系あるいは農業生態系における放射性Csの挙動の特徴とその支配要因について解説した。

さらに、農地から放射性物質を除去する手法についてとりまとめ、わが国におけるこれらの手法の有効性について議論した。(平成24年2月13日受理)

I はじめに

II 土壌中のCsの挙動と福島の土壌汚染状況
 1 はじめに
 2 土壌中におけるCsの存在形態
 3 土壌中の負電荷に対するCsの吸着メカニズム
 4 Csの吸着に関わる主な土壌構成成分
 5 Csの吸着に関わる土壌構成成分の分布
 6  福島県の土壌の特性および農地土壌中の放射性Cs濃度分布
  (1) 福島県の土壌の特性
  (2) 福島県の農地土壌の放射能汚染状況

III 土壌固相-液相間におけるCsの分配に関わる要因
 1 はじめに
2 土壌中におけるNH4+の動態
  (1)大気‐植物‐土壌‐土壌微生物系におけるN循環
  (2)土壌中におけるNH4+の生成および消費
1) 無機化によるNH4+ の生成および有機化によるNH4+ の消費
2) 硝化によるNH4+の消費
  (3)土壌中におけるNH4+の挙動
 3  土壌中におけるK+ の動態および土壌のCs+吸着に対するK+ の影響

IV 植物のCs吸収メカニズム、植物種・品種間差
 1 はじめに
 2 Cs吸収に関わる生理メカニズム
3 Cs吸収に関わる分子メカニズム
 4 Csの体内挙動と分布
 5 Cs吸収・集積における植物間差、品種間差

V 土壌‐地下水‐流域における放射性Csの輸送過程
 1 はじめに
 2 土壌中における137Csの輸送
  (1)土壌の137Cs鉛直分布に基づく移動速度
  (2)溶存態137Csの輸送過程:移流分散式の適用
  (3)コロイド担体輸送による137Cs輸送
 3 地下水中の137Cs輸送
 4 流域内での面的137Cs輸送
  (1)大気から地表面への不均一な137Cs供給
  (2)水食と137Cs輸送
  (3)風食と137Cs輸送
 5 今後の課題など

VI 森林生態系における放射性Csの動態
 1 はじめに
 2 森林生態系への放射性Csのインプットと循環
 3 森林土壌表層における放射性Csの挙動
 4 森林土壌から樹木などへの放射性Csの移行
 5 森林生態系におけるCsの長期動態を規定する要因
 6 森林生態系におけるKの循環

VII 農地における放射性Csの除染対策
 1 はじめに
 2 各対策方法について
  (1)物理的手法
  (2)化学的手法(肥料・資材の施用)
  (3)ファイトレメディエーション
  (4)土壌洗浄
  (5)電気修復法
引用文献
Summary