狭い寝台の上。
音もなく落ち続ける点滴の向こうに、秋晴れの空が見える。
小窓から入ってくる風は肌寒ささえ感じさせる。
季節が動いている。
明日、予定通り退院できそうだ。
だが不安が解消されたわけではない。
吸収する以上に排泄される水分。
それをどう薬で調整するか。
3種類の薬の量を調整しながらの試行錯誤。
その完璧な答えの出ぬままの退院である。
だが答えのない問いはない。
それが半年前に学んだ人生訓。
人は大抵のことに慣れてしまう。
それもまた同時に学んだこと。
もう少し秋が深まる頃には、新たな厄災を腹に抱えながらも「これからの季節はやっぱり熱燗だねえ」などとうそぶいていることだろう。
人間は存外逞しい。
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