多摩ニュータウン開発に伴い,遺跡の発掘が行われていた。何をやっているのだろうと,少年だったぼくは当然
見に行く。丘の上で地面が掘り返され,区画が区切られていた。発掘ってこうやるんだ。
その発掘以前,土器を拾って遊んでいた。丘の下に小さな清水が流れていて,その中に小さな土器が散らばって
いたのだ。
その価値を知らなかったぼくは,枝バットの「石打ち」の材料にしていたのだ。バットを肩の上で横に構えていた大
洋ホエールズの近藤選手がお気に入り。近藤選手のマネをして,その土器を打っていた。
ぼくは右ききだが,近藤選手は左打ちだ。だから,右手で土器を持って投げ上げてから打つのだ。
ところで大洋ホエールズって,クジラ!今の横浜DeNAベイスターズ。
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今回の音楽は,ドビュッシーの「美しい夕暮れ」。題名と撮影時刻は大幅に違うが,静かな多摩丘陵にピッタリだ。
フリー音楽素材サイト「クラシック名曲サウンドライブラリー」の解説はこうだ。
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「美しい夕暮れ」は1880年、ドビュッシーが18歳の時の作品です。
ポール・シェルジェの夕暮れを歌った詩に作曲したもので、
フランス歌曲としてはフォーレの「月の光」などと共に、代表的な作品のひとつです。
夕暮れどきの美しい情景や、それに対する心情を描きながらも、
人生の無常や儚さを感じさせる詩を、ドビュッシーらしい音楽で彩っています。
とても18歳の作品とは思えない早熟ぶりです。
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18歳かぁ…。
「自然教育園の生い立ちは,今から400年から500年前の豪族の館からはじまります。
江戸時代は,高松藩主松平瀬重の下屋敷となり,明治時代は陸・海軍の火薬庫,大正
時代には白金御料地と歴史を重ねてきました。この間は,一般の人々が立ち入ることが
できなかったため,この地に豊かな自然が残されました。昭和24年(1949年)に天然記
念物および史跡に指定され,一般に公開されるようになりました。」
と,パンフレットに記載されていた。
JR目黒駅東口から徒歩9分と近く,標識があるのでスマホをもたないぼくでも,迷わなかった。
フクジュソウやカタクリなど早春の植物を見ることができるので,2月から桜の時期はきっと
混雑するだろう。
気になったのはカラスの鳴き声。入口近くでは他の鳥の声も聞こえたが,高い木々の場所
ではカラスの声が大きく響いていた。カラスの繁殖は3~7月らしいが,都会のカラスもそう
なのだろうか。
水生植物園の近くに電動らしい作業車があり,園の方が独りで黙々と手入れをしていた。
ヤマアイ(山藍・トウダイグサ科)
山に生える藍,という意味で,万葉の時代から染料として使われていたそうだ。
公園の日陰にたくさん育っていた。もうじき花が咲きそうだ。
オドリコソウ(踊り子草・シソ科)
シソ科の特徴である四角い茎をとりまくように花がついている。その花の1つ1つが笠を
かぶって踊っている人に似ているから名付けられたそうだ。
これも,「なるほどなぁ」の命名だ。昔の人は,よく考えるものだ。日本の固有種だそうだ。
イカリソウ(碇草・メギ科)
花を船の碇(いかり)に見立てた命名だそうだ。図鑑で横からの花を見たら,これもなる
ほどの命名。花の形を横から撮りたかった。
ところで,「いかり」は碇と錨の2つの漢字があったが,碇は石の重さで船を固定した時
代の「いかり」で,錨は金属製ということだった。命名されたころは当然石の碇だったろう。
ムサシアブミ(武蔵鐙・サトイモ科)
花(仏炎苞・ぶつえんほう)の形が,昔の武蔵の国で作られていた鐙(あぶみ・馬に乗る
時に足を踏みかける馬具)に似ているから命名されたそうだ。武蔵の国で作っていたこの
馬具はなかなかのすぐれものだったようだ。
苞(ほう)は植物用語の一つで、花や花序の基部にあって,つぼみを包んでいた葉の
ことで,仏像の後ろにある仏炎に似ているから仏炎苞というそうだ。
ウラシマソウ(浦島草・サトイモ科)
花から糸状に長く伸びて垂れ下がった形を,釣り糸をたれた浦島太郎に見立てて
名付けられ,地下茎には毒があるそうだ。これも日本の固有種。
劇などで浦島太郎が登場する場面は,必ずといっていいほど釣りざおを肩に載せて
いるが,この名前からも固有種というのがうなづける。
以上 東高根森林公園 2018.04.17
ヒトリシズカ(一人静・センリョウ科)
可憐な姿から,源義経をしたう静御前を連想して名付けられたそうだ。
2018.04.16 八王子市
フタリシズカ(二人静・センリョウ科)
静御前の亡霊2人の舞姿にたとえたそうだ。
昔の人の命名方法はおもしろい。花序は1~5個だそうだ。
ラショウモンカズラ(羅生門蔓・シソ科)
花の形が,京都の羅生門で渡辺綱が切り落としたという鬼の腕を思わせることから
名付けられたそうだ。そういうことを思いついたことにおどろく。名前を付けるのに
苦労したのか楽しんでいたのか?
エビネ(海老根・ラン科)
地下茎の曲がった形をエビの形に見立てて命名。掘るわけにはいかないので,
地下茎の形は分からない。今では野生のものはあまり見られないそうだ。
カサスゲ(笠菅・カヤツリグサ科,ミノスゲともいう)
丈夫で長い葉を笠や蓑を作るのに利用したことからこの名がついたそうだ。実用的な
命名だ。北海道から九州に分布し,湿地や池の浅いところに生育するそうだ。
カヤツリグサ科は区別がむずかしい。
オヘビイチゴ(雄蛇苺・バラ科)
ヘビイチゴより大きいので「雄」がついたそうだ。安易な名づけ方だと思ったが,実用的な
植物ではなかったからだろう。ヘビイチゴと違い,イチゴ型の果実をつくらないそうだ。
チョウジソウ(丁字草・キョウチクトウ科)
以上 港区 国立科学博物館付属 自然教育園 2018.04.19
ツボスミレ(坪菫・スミレ科)
坪は庭という意味で,庭のようにどこにでもあるスミレ,ということらしい。
ハンノキ(榛の木・カバノキ科)
開墾の意の古語「墾(はり)」がもとで、榛の木(ハリノキ)→ハンノキとなったようだ。
クヌギ(櫟,椚,橡など・ブナ科)
カブトムシやクワガタが集まる木がこれだった。低学年のころ,アシナガバチがいたので
じゃまだとばかりに虫網でおっぱらったら,追いかけてきた。必死に走って逃げたが,
頭のてっぺんを刺された・・・。あの時,伏せていたら刺されなかったのだろうか?
日本書紀の伝承説話からきた国木(くにき),ドングリが食べられることから食之木(くのき),
栗の木に似ていることからクリニギ(栗似木),といったいくつかの説があるらしい。
ドングリや樹皮など,縄文時代から様々に利用されたことが,遺跡から分かるそうだ。
ケキツネノボタン(毛狐の牡丹・キンポウゲ科)
キンポウゲ科の植物には毒があるが,これはその中でも強い毒をもっているそうだ。
若い根生葉が花の美しい牡丹(ぼたん)に似ていて違うので,だまされたという意味で
「キツネ」となり,「ケ」は「毛」が多いの意味だそうだ。
セリバヒエンソウ(芹葉飛燕草・キンポウゲ科)
これまたキンポウゲ科なので,強い毒があるそうだ。葉が「セリ」に似ているので「セリバ」,
花の形が「飛翔するツバメ」にみたてて「飛燕(ひえん)」だそうだ。なかなかの名づけ方
だ。
ジュウニヒトエ(十二単・シソ科)
花が幾重にも重なって咲く様子を,昔の女官の衣装に見立てたそうだ。これもなかなかの
命名だ。日本の固有種だそうだ。
キンラン(金蘭・ラン科)
公園内の笹を取り払った後に出てきたようだ。逆光で撮ると輝き,背景から飛び出して
くる。もう少しアップで撮りたかった。
以上 八王子市 長池公園 2018.04.16
後日,オドリコソウの名前の由来を調べたら,「なるほど」と感心してしまった。
昔の人たちは,よく観察していた。
川崎市 東高根森林公園 http://www.kanagawaparks.com/higasitakane/